“ファシリテーション”が、対立を力に変える|ぶつかり合い、学び成長できる職場へ
「結論は出たはずなのに、実行されず、また議論」
そんな会議運営に、問題意識を感じている人も多いのではないでしょうか?
綜合印刷出版株式会社・代表の田村 仁美さんもその一人。鳥取県の中小企業経営者団体の理事もつとめている。月次の会議で「すぐに結論を出そうとし、段階を経ないので、なかなか決まらない上に、何かを決めても、人によって決まったことになっていない」ことに課題を感じていたといいます。
そこで会議を始めとした話し合いの組み立て方を学ぶ、全2回のファシリテーション研修を企画・実施。中小企業家同友会の研修として実施し、各社の経営者や管理職の方が参加しました。田村さんに、研修内容やその後の変化についてお聞きしました。
よりよい結論が生まれ、行動につながる会議に
ー「ファシリテーション研修」の実施を決めた理由はなんでしたか?
実は以前、私自身が壁にぶつかっていた時期があったんです。会議は人間力でまとめなくちゃいけないとか、はやく結論を出すには根回しが必要だとばかり思っていて。だけど、人間力なんてすぐには上がらないし、根回しはすごく時間がかかるし、結局本筋で合意がとれていないと、決まった後上手くいかないし。会議の度に、ものすごくストレスを感じていました。
けれど何年か前にファシリテーションの考え方に出会ってから、すごく楽になったんですよ。多様な人がいるからこそ、自分の考えが及ばないところからの意見をもらうことができる。違う意見が出たとしても、合意形成できる。しかも、ほとんどストレスなく、根回しの必要もなく。そんなことを他の人にも学んで欲しいと思ったんです。
綜合印刷出版株式会社・代表の田村 仁美さん
それから経営者団体の勉強会では、意見はたくさん出るんですが、合意形成まではしない事が多いんです。本来は合意形成のときに譲れないものが生まれて、一番摩擦が起こると思うんですが、「じゃあ、何にする?」という結論までは出さないんですね。だから、普段の勉強会の延長線上では、よりよい結論が生まれ、行動につながる会議にならないと思ったことも、ファシリテーション講座実施を決めた理由です。
「違いを楽しむ」という、ファシリテーターのあり方
ー受講をしてみて印象に残っていることはありますか?
一番印象に残っているのは、「違いを楽しむ」ことです。日本人は特に、同調圧力を感じやすいため、人と同じように行動したがる傾向があります。けれど、それぞれ意見が違うからこそよりよい結論が出るはずです。だからこそ、意見の違いをあえて楽しむことが、よりよい会議を作り上げるポイントになる、というお話でした。
それから、「その場で起こったことを楽しむ」という会議に臨むスタンスについても、忘れられない出来事がありました。研修当日、大雪の影響で停電してしまい、会議室ホストのネット回線が落ちちゃったんですよ。全員が強制退室されてしまって。
普通なら、「ちゃんと準備しておいてよ」と怒る人がいてもおかしくありませんが、「起こったことを楽しむ」の前触れがあってか、怒ったり、イライラする人は誰もいませんでした(笑)
研修の場で共有された「話し合いで大切にしたいこと」
この出来事から学んだのは、予期せぬ事態が起こっても、「その場で起こったことを楽しむ」というファシリテーターのあり方によって、冷静に話し合うことが可能になるんだ、ということです。
奇しくも、研修で学んだことがすぐに体感できたことは、私にとって非常にいい経験になりました(笑)。本当に、リアルの世界は予期せぬことの連続なので。
話し合いの新しいルールが、対立を力に変える
ー企画・受講して、変化したことはありますか?
私自身が改めて気づいたのは、「一番理にかなっているのは何か?」が大事だということです。
例えば会議で意見が分かれた場合、新人の意見であろうと、ベテランの意見であろうと、いつもミスする人の意見であろうと、テーマに対して最も理にかなっている意見を取り入れることが大切です。当たり前のことなんですが、人の顔色を伺っていると、声の大きい人や、目上の人への気遣いで本末転倒な結論になる...なんてことも少なくないですよね。
でも、その状態は理にかなってない。短期的にみると、波風立たずすんなり物事が決まって、一件落着なんだけど、その実誰かが心の中で、舌を出している。後になって、「あんな会議ならしない方がマシだった」とか「井戸端会議の方が有意義だ」とか「俺はやんねーよ」なんてことになりがちです。
たしかに、矛盾や摩擦はめんどくさいものです。けれど、物事を多面的に見て、要素を分解し、重みづけと優先順位をつけたら、理にかなった結論に至れます。そしてこれは、1人ではなかなかできないものなんです。
ではどうしたら良いか。ファシリテーションの考え方を取り入れ、目的・目標・役割分担・ルール設定をした上で会議することで解決できる、ということがわかりました。
目的がないから、なんのために集まったのかわからない。
目標がないから、話が横にそれた時、元に戻せない。
役割分担がないから、優秀な人たちが烏合の衆になる。
ルール設定がないから、日頃のしがらみから抜け出せない、感情がもつれる...のだと。
同友会の理事会では、会議前に、「目的・目標と結論の出し方を決める」という認識が進行役の中に生まれました。会議を行う意味を捉えやすくなったため、そこで決まった内容への納得感をメンバーも感じられるようになったように思います。
ぶつかり合いながら、学び成長できる組織へ
ーこれからに向けてやりたいこと、楽しみにしていることはなんですか?
新入社員にも、当たり前のようにファシリテーションの技術を身に着けてもらえるようにしていきたいですね。社員同士で対立しても、「じゃあ話し合おう」となれば悶々と悩むことが無くなり、仕事も前に進みやすくなると思います。
また、自分の中に迷いや相反する考えが生じても、自分の中のAさんとBさんを相手にファシリテーションをすれば、これまで留まっていたことも実行しやすくなるんじゃないでしょうか。
心地いいチームが強いチームかといったらそうではないし、心地いいだけの人生が本当にいい人生かといったら、多分そうじゃない。
だから、優しく居心地のいい職場を作るのではなくて、お互いにぶつかり合いながらも、学び成長できる職場にしていきたいですね。
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この記事は、「仕事がめぐる、前へすすむ。」をコンセプトに運営するYELL FORのプロジェクトメンバーが一部制作をしています。
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