【最終話】 人誑し同士で、共依存になってた実話③
こんにちは、学生B子です。
こちらnoteは、前のnoteの続きのお話になりますので、あなたがまだ前のお話を聞いていなかったら、下のリンクからご覧ください。
忙しくてそんな時間ない!読むのが面倒!というあなたは、分身の術を使用し、もう一人のあなたに読んでもらってください。
…冗談です、リンクの下にに軽く前回のあらすじを載せておりますので、そちらをどうぞ。
前回の話
初回の話
前回のあらすじ
高校一年生の秋、学生B子は、自分が通う通信制高校の人しか入れないサーバーで、ネットの友達欲しさに、自分がホストのグループチャットを作った。
その後、そこで出会ったネットの友人「R」とのDMで、心から救われる。
自分を救ってくれたRのためなら、友人として何でもしようと誓ったが…
登場人物
・R……後に全てを破壊する悪魔です。身体的性別は女性でしたが、性自認は男性だったので彼としています。名前は本人のイニシャルから。
・学生B子……私のことですね。周りからはB子呼びです。私自身が巻き込まれた実話なので、私を登場させています。
・さらちゃん……Rの彼女で、純粋で繊細な優しい子です。Rと付き合ったのはつい最近。
せっかくあなたが来てくれたのに、待たせるのはいけないと思うので、早速本編に移ります。
それでは、本編へどうぞ。
私のことを救ってくれた「R」のためならば、自分ができることは、友人として何でもやろう。
そう誓ってからの一ヶ月間、私は……
…私は、Rの奴隷のような日々を過ごしていました。
突然の急展開に驚かれたかもしれません。
しかし、本当にその日から、何でもやると誓った日から、私はRの奴隷になったのです。
主にしていたことは、Rが傷つけた人間の、アフターケアの手伝い。
これはもう、Rのためならできることを全てやろうと思った次の日から始まっていましたね。
Rは「お互いに傷つけ合えば、お互いの痛みが少しわかるようになるから、あえて傷つけて、己も傷ついているんだ」と私に言っていました。
そう言いながら、私がホストをやっているグループチャットの子の心を、次々破壊していました。
今思えばとんでもねぇと思いますし、勝手にやってろバカがと思うのでしょうが、もうこの時すでに学生B子は完全に洗脳されていたので、Rのことを全く疑わずに信じていたんです。
別に、彼が私に「これをやってくれ」とか、直接的に頼んできたわけではないんですよ。
私が勝手に行動しただけです。彼がこうしたら喜ぶだろうということを、私自ら進んでやりました。
RとのDMで「今日、この子傷つけちゃったんだよね」のような報告があったら、すぐにその子と通話をし、Rを庇いつつ相手の子のメンタルを戻していた、という感じです。
実際にリアルでRとあったりもしました。渋谷でグッズやお菓子を買ったり、カフェでお茶をした記憶があります。
当時は私にも彼氏がおり、その彼氏も学生B子の作ったグループチャットのメンバーだったので、「いつかダブルデートできたらいいね」なんて話しておりました。
本当にRにはカリスマ性があり、Rから発せられる言葉の全てが、当時は私にとって、極めて重要なものである気がしていましたね。
Rの奴隷になってから、約一ヶ月。
彼と恋仲である、さらちゃんから、真夜中にこんなDMが来ました。
「ねぇ、たすけて、どうしたらいいの」
この時は、Rがまた傷つけてしまったのかな、今回はさらちゃんか。
Rからの連絡はない、Rにしては珍しいな。傷つけちゃったって連絡する前に寝落ちしてしまったのかな。
友人に対しても恋人に対しても平等なRは素晴らしいな、さらちゃんも、一時間くらい通話すれば元通りになるだろう。
歪み切った思考回路で、そんなことを考えながら、私はさらちゃんに返信しました。
「何があったの?」
さらちゃんとは、洗脳されていたこの一ヶ月も、ガールズトークをたくさんしておりました。
もう最初に出会った時より、随分仲良しです。
そんな可愛いさらちゃんを、Rに選ばれた素敵なさらちゃんを、早く元通りにしなくちゃ。
私は、いつものように、そう思っていました。しかし今回は、前にメンタルを戻した時と、雰囲気が違う。
そんなことを考えていると、さらちゃんからメッセージが送られてきました。
「あのさ、B子ちゃん。」
「Rくん、わたしのこと、本当は好きじゃなかったんだって。」
「わたしたちのこと、いらなかったんだって。」
「B子ちゃんが手に入ったから、もういいんだって。」
私は、理解が追いつきませんでした。
さらちゃんのことが好きじゃなかったって、いらなかったって、B子が手に入ったって、どういうことだ?
混乱している私のスマホには、続けてメッセージが送られてきました。
他の人からもメッセージが送られてきていましたが、その時は冷静ではなかったので、さらちゃんからのメッセージしか確認できませんでした。
「わたし、おかしいの。どうしようもないの。」
「Rくんに騙されたのに、Rくんのことがまだ好きなんだ、わたし。」
「悪いのはRくんのはずなのに、なぜかB子ちゃんに対していいなと思ってる、モヤモヤしてる、おかしいよね。」
「だから、もう生きるのやめる。」
私は最後の一文を見て、すぐにさらちゃんに通話をかけました。
幸いにもさらちゃんはすぐに通話に出て、ゆっくりと話すことができました。
そこで事情も聞き、さらちゃんも一旦落ち着きました。
しかし、さらちゃんが話してくれた内容は、とても信じられないような話ばかりでした。
どうしてもRに確かめたい話ばかりだったため、夜遅かったのですが、私は急遽Rに通話をかけました。
Rとの通話で、ようやく私は、Rの本性を知ることになるのです。
Rが私のグループチャットに入ってきた理由は、なんと私を…この学生B子を手に入れるためだったのです。
もうすでに最初から、騙されていたんですよ。宣伝からグループチャットに来て、入る前にそのチャットの会話を一目見て、使えると確信して、学生B子を手に入れるために来たらしいのです。
もちろん恋人としてではなく、道具として。自分が傷つけた人間に最適な言葉を与える、カウンセラーもどきとして利用するためでした。
さらちゃんと付き合ったのも、一番繊細で傷つきやすかったからという理由でした。
普通の人が気にしないような軽い言葉で傷つけられれば、側から見たときに、自分の非が少なくて済むからだそうです。
恋人なら毎日話しても自然だし、度々傷つけても問題がないと思ったと、彼は言っていました。
そして、周りのみんなを傷つけていたのは、学生B子の能力を確認するためでした。
私が、傷ついた人間のメンタルを回復させることができるかどうかを確かめていたのです。
私は泣きそうになりました。裏切られた気分になりました。
信じていたのに、救われたと思ったのに、最高の友達だと思っていたのに。
この人間は頭がおかしいと思った私は、大声でRに言いました。
「なんでこんなことしたの」
本当に分かりませんでした。彼がなぜ、こんなことをしたのか、しているのかが。
私を道具として手に入れた後、彼は何をするつもりだったのかが分からなかったのです。
彼は、不思議そうに、私のその疑問に答えました。
「お友達が欲しいからだよ?」
まるで、こちらが間違っているかのような気さえするほど、Rは当たり前のことであるかのように言いました。
彼は続けます。
「だってさB子。人に好かれるためには、まず傷つけた後に、救わないといけないでしょ?
だけどそれをやると、たまに死んじゃう時があるから。もうお友達に死んでほしくなかったんだ俺。」
もう、どこから突っ込めばいいのか分かりませんでした。
この生き物は、本当に人間なのかと疑いたくなるほどに、悪魔的でした。
私はおそるおそる、彼に聞きました。
「死んじゃう時ってどういうこと?」
彼はさらっと、答えました。
「わかるでしょ、自分で死を選んじゃうってことだよ」…と。
しかもその後も、よく話を聞けば、おそらく全員「Rのことを大事に思っていたから、Rの為に死んだ」ようなものだったのです。
Rに死んでくれと言われたから死んだも同然の人が、教えてもらっただけでも五人はいました。
彼は一通り語り終えた後、私に聞きました。
「というか、さらからしか話聞いてないの?他の子は?」
私は彼の言葉を聞いて、スマホを耳から離し、通話の画面を最小化して、DMの通知を確認しました。
おびただしい数のDMが、グループチャットのメンバーたちから届いていました。
さらちゃんだけではなく、私の当時の彼氏や、他の友人もSOSを出していたのです。
増え続ける通知に焦りながらも、どうすればいいか分からず無言で眺めていたら、Rが話しかけてきました。
「流石に学校内で人何人も死んだら、俺やばいよねぇ、退学かな?w
今までのは同じ学校じゃなかったから上手くやれてたけど」
この男は悪魔だと、私はようやく理解しました。
それと同時に、彼のことを天才だとも思いました。今までずっとこの生き方を続けて、誰からも止められることなく生きてこれるのは、間違いなく才能です。
私は、どうしてこの才能を良い方向に使わないのだろうと思いながら、私は震えた声で言いました。
「なんでRはそんなに平気そうなの?みんなが死んじゃうかもしれないのに…!」
私がそういった瞬間に、Rは明るい声で言いました。
「B子がなんとかしてくれるって信じてるからだよ!」
私はこの時、その言葉に一瞬、喜びを感じてしまいました。
馬鹿だと思います、いや馬鹿です。間違いなく馬鹿。愚かとしか言いようがありません。
でも、思ってしまったんです。彼のカリスマ性がそうさせたのかは分かりませんが、その時の私が嬉しいと思う言葉だったんです。
この天才は、私を手に入れるためにこの計画を実行した。
Rは、私のことを価値があるものとして扱ってくれる。信じてくれている。
私は、ずっと何者かになりたいと思っていました。
才能が欲しかったのです。なんでもいいから、人より秀でているものが欲しくてたまらなかった。
今もそうです。SNSでかなり評価されたのに、まだ足りない、まだ足りないと、私の中のバケモノは才能と評価を求め続けています。
Rはまごうことなき天才でした。カリスマでした。
倫理観はありませんでしたが、結果的に計画はここまで失敗せずに進めてきたのです。
これから彼がどんな世界を作り上げるのか、彼がどんな才能の輝きを見せてくれるのか。私は、それが見たくてたまらなくなりました。
しかし、もし私がこのまま、メンバーたちのメッセージを放置して、メンバーに何かあれば、Rのその先は見ることができない。
そんなことはあってはいけない、私しかなんとかできる人間はいない。私がやらなきゃ、彼の才能は終わる。
メンバーたちを止めなくては!そうしないとRの作る世界は見れない!
私はRの才能が創り出す世界を見るんだ!そしてRに必要とされ続けるんだ!
一番近くで彼の世界を、才能を浴びるんだ!!道具として彼のそばに居続けてみせる!!!
あぁ、私幸せだ!!!!!!この天才の計画の、最後のピースに、組み込んでもらえたんだ!!!!!!!
そう思った私は、一瞬でRとの通話を切り、ひたすらにメンバー達のメンタルをケアしました。
幸いにも、命を落とした人はいませんでした。本当に良かったです。
全員を自分が救ったのだという思い込みによる幸福感と、自分が天才から必要とされている喜びを噛み締めて、その日は寝ました。
翌朝のこと。
さらちゃんから、こんなメッセージが届いていました。
「ごめんね、昨日は、Rくんが全部悪いのに、B子ちゃんに対してモヤモヤして。」
私はそれを見て、即座に返信しました。
Rという理解されない天才についての誤解は、訂正しなければと思ったのです。
「全然いいよ、さらちゃんもRも悪くない。悪いのは、みんなを救いきれていない私だから。」
そのメッセージを送って、しばらくした後のことです。
さらちゃんから、更にメッセージが届きました。
「B子ちゃんは悪くないよ、Rくんに利用されてただけだもん。
わたしね、昨日は『Rくんとられたくない』って思ってたけど、今は『B子ちゃんとられたくない』って思ってるの。
苦しい方に行かないで、Rくんのほうに行かないで。」
私は既読をつけないようにそのメッセージを見ながら、何を言っているんだと思っていました。
利用されていて構わない、私はRという天才の作る世界を見たい、Rという天才の才能に触れたいだけなのに。
それが苦しい方なんて、ありえない、さらちゃんは何が言いたいんだ?本気でそう思っていたのです。
さらちゃんからのDMは続きました。
「もう一回通話できない?Rくんのお話がしたいの。」
私は、Rの素晴らしさを教えるチャンスだと思い、返信もせずにいきなり通話をかけました。
さらちゃんは驚いた様子でしたが、洗脳されきった学生B子の話を、優しく聞いてくれました。
そして、Rがどんな人かについてのお話を私が語り尽くした後、さらちゃんも、Rのことをお話ししてくれたんです。
「Rくん、炭酸みたいな人だった、たぶん。」
そのさらちゃんの言葉に対して、私はどういうことか尋ねました。
すると、さらちゃんは柔らかい笑顔を浮かべているような、ふんわりした声で答えました。
「Rくんは、甘くて、でも辛くてピリッとしてて、すごく刺激的で、楽しかった。」
「だけどさ、わたし、Rくんといて、すごく苦しくなっちゃったの
まだ子供みたいなもんなのにさ、一気に飲んだから。」
「Rくんも、自分の炭酸みたいなところを、一気に飲んで欲しかったんだと思う
そう思ったから、わたしも一気に飲んだけど、それが苦しくなっちゃった
Rくんは、たぶん、それを、一気に飲んでくれる人が好きだったんだよね。」
「だから、きっと、それは、私じゃなかったんだよね!」
最初は明るく幸せそうだった、さらちゃんが、泣き出してしまいました。
私はどうしたらいいか分からず、何も言えないままです。
「ごめんね、B子ちゃんが、一番悲しいはずなのに。」
私はさらちゃんのことを心配していながらも、全く悲しくはなかったんですよね。
なので、それを否定するために、言いました。
「私は悲しくないよ?なんで?」
学生B子が、本当に本心で疑問に思っていることが伝わったのか、この時のさらちゃんは、さらに泣いてしまいました。
そして、泣きながら震えた声で、私に言いました。
「だって、B子ちゃん。Rくんやみんなと、お友達になりたかったんでしょ!?
それなのに、Rくんに、友達を生かしておくただの道具としか、思われてなかったんだよ!?
友達を救うために、辛いことばかり、苦しいことばかりやって、もうB子ちゃんは十分頑張ったよ!」
私は、この言葉でようやく、大分正気に戻りました。
私はRのことを、友達だと思っていたのに、向こうはそうではなかったことを、やっと認識したのです。
それどころか、さらちゃんや自分の彼氏をはじめとする、親しい人たちをたくさん傷つけられました。
それも全て、最初からそうしようと思ってやったことです。
人の心があるとは思えません。
Rと縁を切ろう、そう思って、Rと再び通話をし、縁を切ろうと伝えました。
(もしやばいやつと縁を切りたくなった時は、突然のほうがいいです…付け入る隙が生まれてしまうので…)
するとRは泣き出して、私に色々言ってきました。正直聞き流していたので曖昧です。
しかし、彼に「お互いに、お互いが必要なんじゃないの?」と言われたことは、記憶に残っていますね。
確かに私は彼に依存していました、ただ、彼も私を必要としていたのです。
友達を失わずに済む道具としてでしょうが、明確に共依存になっていました。
彼も人誑しでしたが、私もまた、ある種の人誑しだったのです。
彼が相手の思考を奪って、理想だと錯覚させるバケモノであったと同時に、私も、相手の理想の人間になりきれてしまうバケモノだったのです。
またRと共依存になってしまうのはまずいと思った学生B子は、それから一ヶ月ほどかけて、なんとかRと縁を切ることができました。
さらちゃんも、私と一緒にRと縁を切りました。それを聞いて、他のメンバー数人もRと縁を切りました。
しかし、私の当時の彼氏を含む、一部のメンバーは、まだRに洗脳されてしまっていたので、手がつけられず、彼氏ともそのまま別れました。
見捨てた形になってしまったのは少し悔やまれますが、当時の私達があのまま全員を洗脳から脱却させようとしても、いい結果にはならなかったのではないかと思います。
これが、人誑し同士で、共依存になっていた実話です。
これを通して、あなたに何か感じてもらえたら、私としてはとても嬉しいです。
明るい自分だけでなく、暗い面も活かすことができたら、少し過去の後悔も薄れる気がするんですよね。
なので、「見たよの証」として、「スキ」や「フォロー」をいただければ嬉しいです。
私の方からでは、あなたがこのお話を聞いてくれたかどうかが分からないので、それを、学生B子に教える気持ちで押していただけたら嬉しいです。
この話を、最後まであなたに聞いていただけて嬉しかったです、ありがとございました。
今日のお話は以上です。
あなたに聞いていただけて嬉しかったです、ありがとうございます。また来てくださいね。