自首の様子を生配信。大麻所持のYouTuber 初公判。
東京地裁 -刑事事件-
(初公判)
2021年7月14日(水曜) 11:00~12:00 529号法廷
事件番号:令和3年特(わ)第1088号
罪名:大麻取締法違反
被告:A (保釈中)
<事件の概要>
被告人は、大麻推進家を名乗り、YouTuber「ゆうせい荘」として活動し、犯行当時は、登録者が4万人いた。チャンネル上では、薬物が合法のオランダで、実際に大麻を吸った感想や、大麻の法規制についての持論も発信していた。
ところが2020年2月以降、動画を削除し始め、6月には全ての動画を削除。YouTube上からほぼ姿を消した。
2021年5月に入り、突如活動を再開し「小説家になることにしました」と宣言すると共に過去動画の一部を公開し、反響を呼んだ。
ところが突如5月8日深夜、「警察に自首しにいくライブ配信」を実行し、逮捕された。
<10:53 被告人入廷>
被告人は、スーツ姿であり清楚だった。一見して、官僚に見え、自身は検察官と間違えた程だ。目を強くつぶったり、キョロキョロと視点が定まらず、緊張している事が窺えた。
<11:01 開廷>
・人定質問 (生年月日・本籍地・現在の仕事)
裁判官- 本件時の仕事は?
被告人- 無職です。
・起訴状読み上げ
被告人は、令和3年5月8日に、東京都目黒区の自由が丘駅前正面改札付近の路上で、0.31gの大麻片を所持した。
裁判官- 事実に間違えは?
被告人- ありません。(中くらいの声で、ハキハキと)
・証拠調べ手続き
検察官- 被告人は、大学卒業後、システムエンジニアに従事していた。単身で、前科はない。平成29年から大麻を使用する様になり、犯行当時は毎日使用していた。自ら、大麻推進家を名乗り、動画配信をしていた。
自宅の捜索差押では、テーブルの上に無造作に、水パイプが置かれていた。調書では、逮捕時の大麻は、4月中旬に1g5000円で4g分購入した。
(検察官が、押収した大麻を、被告人の前に提示して)
検察官- もういりませんね?
被告人- (一呼吸おいて) ハイ。
<11:12 スタート>
・証人尋問(父親)弁護側の情状証人
弁護人- 被告人が大麻を吸っていた事は知っていた?
証人- ハイ。2年前にアメリカに行って、吸引していた動画を視聴した。日本では、吸っていないと思っていた。
弁護人- ストレスから、使用したと述べていたが、被告人は疲弊してた?
証人- 帰国した今年1月中旬に、精神的に憔悴しきっており、2か月間は実家で生活していた。
弁護人- 被告人は仕事は?
証人- 塾講師をしていた。それと、喫茶店でも働いていた。
弁護人- 今後、どうやって被告人を監督する?
証人- 薬物専門医に通院させる。保釈後すぐは、毎週月曜日に通院していた。
弁護人- 今の被告人の生活は?
証人- 朝から夕方まで、図書館に行って、土日は喫茶店やジムに通っている。
<11:22 スタート>
・弁護人から、被告人質問
弁護人- 大麻はいつから?
被告人- 6年前から。最初は、ほとんど使用していなかったが、最終的にはバイトのストレスで毎日した。
弁護人- 売人はどうやって見つけた?
被告人- 治安の悪そうなところで、悪そうな人に沢山声を掛けて購入した。
弁護人- また買おうとは思わないの?
被告人- もうありません。
弁護人- なぜストレスと感じたの?
被告人- バイト先の飲食店では、僕が最年長だったから。帰国後、突然入ってきたと思われて、ストレスに。塾講師では、子どもが勉強したくないのに、無理やり教える事に。
弁護人- 自首した理由は?
被告人- YouTubeをしていた時に、「日本では大麻を吸わない」と言っていたのに、視聴者を裏切ってしまったから。罪を償おうと。
弁護人- 配信したのは、なぜ?
被告人- 視聴者に対して・・・・・(小さな声で、数秒沈黙) もう、日本では活動が無理だと分かり、辞めたくなったから最後に。
弁護人- 誰に迷惑を掛けた?
被告人- 知り合い、親族、視聴者全てに迷惑を掛けた。申し訳ない。
弁護人- 今後の対処は?
被告人- 医者から処方された薬で。
<11:36 スタート>
・検察官から、被告人質問
検察官- あなたが警察に声を掛けた理由は?
被告人- 自首しようと。
検察官- なぜ自撮りをしていた?
被告人- 活動をして行く中で、こんなにも僕に応援してくれる人がいて、今後の活動を楽しみにしてくれていた。それにも関わらず、期待に応えられなかったから。ただ、何事もなく消えるのは、失礼だと思った。視聴者に納得して貰えると思い、実行した。
検察官- 客観的に見て、自身の行動はどう思う?
被告人- 犯罪行為は良くなかったと。自首は、これまで自首出来なかった人達に、自首を促す意味で行った。
検察官- 自撮りをして、反省の念は生まれたの?
被告人- ・・・・・・(検察官の質問には、呂律が回ってないのか、言葉に詰まったり、言葉があやふやに)
検察官- (白熱してきて)自首が真に反省しているならば、自撮りはしない。本当に反省していた?
被告人- すみません。分かりません。
検察官- 議論をしたい訳ではないが、なぜ大麻は合法にすべきかと? (公判廷で!!まさかの質問。)
被告人- 全体的に利益になると思って。(薄っす。。)
<11:42 スタート>
・裁判官から、被告人質問
裁判官- 自身は、依存しているか、していないか、納得している?
被告人- 依存という意味がいまいち。(認めたくないのか。。)
裁判官- 弁護人や医師から、聞いてない?
被告人- 言葉という意味が分からないが。。生活??(呂律が回ってない?)
(以後、裁判官が「依存」を自覚させ様と、5分程質問。)
裁判官- 現代では、大麻の使用の罪も導入するかの議論がなされているが、どう思う?
被告人- 特に問題はないかと。(薄っす!!)
裁判官- もう、YouTubeは引退した?
被告人- チャンネルは削除しました。(今後については、言及せず)
<11:54 検察官論告>
被告人は、平成29年から使用しており、常習性は顕著である。自宅内のテーブルには、直接吸引器具が置かれており、親和性は明らか。出頭した点については、自首がし得るものの、真摯な反省はなく、減刑には認められない。
『求刑:懲役6か月』
<11:56 弁護人弁論>
犯罪行為については、真摯に認め、反省している。自己使用目的の所持であり、かつ0.31gと少ない。犯情も悪質ではなく、自ら出頭し、自首が成立しており、減刑がなされるべきである。父親の監督が制約されており、再犯の可能性もない。よって、執行猶予を求める。
<11:59 被告人最終陳述>
裁判官- 何か最後に述べておきたい事は?
被告人- ・・・・・ありません。(しっかりした声で)
<12:01 閉廷>
・私見
今回の裁判は、傍聴マニアでは注目の裁判であった。一時は、「大麻肯定派」の一員として、社会に声を発信していたものの、限界を感じたが後に引けず生配信をした。度々、様々なYouTubeの公判を傍聴してきたが、いずれもプライドから、我を大きく見せていた。私自身も、実際に配信を観ており、被告人のいわゆるチャラさを感じ取っていた。だが、法廷では、憔悴しきっているのか、静かな好青年であった。傍聴マニアも、動画内の様な横暴さを楽しみにしていた面もあり、拍子抜けしてしまった。大麻の依存性も理解したのか、借りてきた猫の様だ。
何時でも、声を発信できる、IT社会の悪い側面も改めて垣間見れた。