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成長して壁の高さが分かった時、絶望から進めるか問われる「天の果てのフェニックスへ」イベスト感想【プロセカ】

 堂々と自らを未来のスターと称する天馬司、その自信はそのための努力を惜しまない姿勢と相まって彼の持ち味です。しかし、今回は努力を続け実力をつけてきたゆえに、憧れのトップスターが遥か遠くにいることを突き付けられます。

 フェニックスワンダーランド1の実力を持つフェニックスステージとの記念公演、司は準主役となる少年役に向けたオーディションで、主役の青龍院櫻子との実力差を痛感します。
 司は櫻子にどうすればそんな演技ができるのかと直球で尋ねます。この真っすぐさがいいですね。櫻子は役に対して理解を徹底的に深めて作り込んでいく自身の方法を伝えつつも、この方法は司には合わないと話し、司の普段のスタイルを聞いてから、自らを役に近づける手法を語ります。櫻子も自信家ですが、自信を裏付ける確かな実力と努力があり、他者の実力や努力に対する敬意もしっかり示す、良いキャラだなと思います。

難しい質問に答えるだけでなく、相手の力になれるよう対話で共に考えていく。自分が上手いだけではない、舞台を引っ張るリーダーとしての高い資質が見える。

 できることは全て試みるも、手ごたえを得られない司。「すべてのことはある程度熟達すると、成長が横ばいになる」類の言葉は私も実感します。
 成長は鈍化する上に、出来るようになる前はわからなかった出来る人の凄さを理解できるようになります。実力差を痛感することで自信は失われます。未熟な段階だと自信があることはダニング・クルーガー効果と言われ、実は元の論文にはないグラフもよく用いられますが、それだけ多くの人々が物事を理解して解像度が上がれば自信は失われ、壁を破った者だけが真の自信を得られることを実感していると言えます。

曲線が有名だが、土台となったダニング・クルーガー(1999)の論文には曲線はなく、文献によって曲線の具合もまちまちで根拠に乏しい。ただ、個人的には全く的外れではないように思える。(「馬鹿の山」など自己啓発本らしさある段階の名は、あまり良いとは思わないが)
近づけると思っていた憧れのスターは余りにも遠いことを思い知る司。

 成長は鈍化、自信は喪失、現実では他にも結果が出なければ周囲の期待も減り、身体的、環境面や経済面の困難なども大きくなり、多くの人は行動を続けられず「身の程をわきまえた」選択をします。1つの物事にこだわり続けるだけが生きていくことではありませんから、ある種真っ当な選択です。壁を破れる者は行動を続けるのは大前提として、早くから結果を出すなどで期待や環境を得たため困難が小さい者か、困難が大きくとも執念でもがき続けた者です。届かない現実から逃げず直視する司の姿に彼の強さを感じます。

第6話より。フェニックスの台詞だが、もがきながら努力する司に対する櫻子の心情とも重なるのではないだろうか。

 司は追っても追ってもフェニックスに届かない少年の思いと、憧れに届かない自身の思いを重ね、オーディション最終日に迫真の演技を披露します。2人の演ずる声が最高だった8話は必聴です。

画像出典:『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』イベントストーリー「天の果てのフェニックスへ」2023年、
SEGA・Colorful Palette・Crypton Future Media

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