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逃げた所の元同僚に面と向かう勇気 ~過去を越えて尊重できるか~「ほどかれた糸のその先に」イベスト感想【プロセカ】
強い。逃げた所の元同僚、陰湿な扱いで追い詰めてきた当事者たちと堂々と向き合い、過去の相手の気持ちを考えて謝罪の言葉を伝える。相手が謝る素振りを一つも見せていないにも関わらず。中々できることではありません。
関係がうまくいかず残念な形で集団を去る、これは珍しいことではありません。イベストはアイドル業界の話ですが、様々な職場はもちろん、学校の部活でも、大学院の研究室でもあります。冷たく扱ったり誹謗中傷したりは酷い場合ですが、そうでなくても集団と方針が合わない・説明が足りない・話を聞いてくれない不信感・理不尽な態度や叱責など、去るに至る理由は様々です。
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そして、再会するのは心理的負担が掛かります。これは相手を嫌ったり恨んだりしてなくても、過去してくれたことに感謝の気持ちがあってもです。相手がまた同じような態度を取ってくる恐怖に加え、逃げ去ったことを攻撃してくる恐怖もあります。
多くの人が極力会わない選択をするでしょう。いつか会う必要性があったとしても、出来るだけ先延ばしにする・会ってもあっさり済ませたいものです。しかし、今回の雫はトーク番組で面と向かう選択をしました。
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関係がうまくいかず離れた人同士でも、過去を越えて尊重し合える可能性はあります。理由は、置かれた環境が当時と違うからです。関係が壊れる要因は人間性に限らず、仕事の実力が足りなかったり、追い詰められて余裕がなかったり、余計な第三者の悪影響があったりと様々です。当時のチアフルデイズのプロデューサーは酷すぎます。今、雫が向き合えたのはモモジャンのみんながいたから、というのは大きいです。過去を全て水に流すことはできなくても、安心や自信、過去の経験などによって過去の状況を冷静に捉え、今の相手を尊重することはできます。
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最悪のプロデューサーです。こうした軋轢が生まれるという想像が及ばないのでしょう。
できればチアフルデイズの元同僚たちも、雫を尊重できればよかったのですが。ここで性格悪いというのは簡単なんですが、彼女たちが当時雫を支える役回りで割を食っていると不公平感を抱いたこと、その攻撃対象がプロデューサーなど大人でなく雫個人に向くようにしたことは、大人に声を上げられないような組織になっており、生き残るためそれに適応した結果とも言えるので、犠牲者の側面もあるのかもしれません。でも、今嫌味を言う必要は全くないですね。今回のイベストで愛莉と同じ表情を何度もした人は多いと思います。
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もう1つ、過去どう語るか、どう意味づけたと言葉にするかが素晴らしかったです。卒業じゃなくて脱退、キャラ変わって過去のファンが幻滅したんじゃないか、という厳しい言葉に対して、過去の自分を「事務所の方針に流されて演じていた」ではなく「完璧な人間に憧れて演じていた」と主体的な形で意味づけて語ります。事務所が操り人形にしていたと話せば、今のチアフルデイズの信用を下げかねませんし、過去の自分のファンを傷つけかねません。「完璧な人間への憧れ」も嘘ではないでしょう。複数の感情や事実の中で、今後を考えて何を語るかを選ぶというのは大切です。もちろん、語る目的が違えば、例えば業界の悪しき習慣を変えて苦しむ子を救うとかになると、事務所の話を語ることになると思います。相手を悪く語る事全てがダメという話ではなく、語り方・意味づけ方によって聞いた人が抱く印象や今後の関係性が変わってくるという話です。
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「チアフルデイズの自分も今の自分も、同じ私」雫が過去と正面から向き合って得た強さを感じるイベストでした。
画像出典:『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』イベントストーリー「ほどかれた糸のその先に」2023年、
SEGA・Colorful Palette・Crypton Future Media
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