見出し画像

095.『直感で理解する!建築デザイナーのための構造技術の基本』山浦晋弘 著

“構造設計に唯一の正解はありません。構造設計者が百人いれば百通りの解が得られるものです。そういう意味では、本書もその解のひとつを示したに過ぎません。経験しないことは書けませんし、ほかを探せばもっと良い解が見つかると思います。ただ、建築はいずれも特殊解です。だからこそ、構造的な着想や課題解決のプロセス、構造技術の使いどころを自分のものとして吸収し、今後の建築設計に活かしてほしいと願っています。“

☞書籍詳細

難しい数式は必要最小限!「いい建築デザイン」はどんな構造技術に支えられているのかを文章と手描きイラストで解説する「直感」シリーズ第三弾。建築デザインの選択肢を増やし、幅を広げるための考え方や、細部にこだわる時の注意点など、建築デザイナーとの打合せの際に構造設計者が考えていることをわかりやすく紹介。

●はじめに

建築物の設計において、住宅、病院、庁舎、オフィス、商業、教育、工場、スポーツなど、個々の施設の専門知識や設計のノウハウを必要とするようになり、特定の建築物に精通した意匠設計者(以下、建築デザイナー)が生まれています。一方、構造や設備の設計者はどちらかと言えば、住宅からスタジアムまで何でも設計できるスキルが求められているように思います。このように専門家としての様相が異なるものの、設計の分業化はどんどん加速しています。

ところが、意匠、構造、設備は互いに独立したものではなく、便宜的に分類しているだけのような気がします。できあがる建築物は一つです。どの設計担当者も「自分のやるべきことはやった。あとは任せた」では、整合のとれた建築物にはなりません。もう少しだけ、お互いの領域に関心をもって足を踏み入れても良いのではないかと考えます。専門的なことはともかく、計画初期の段階で構造に関する基本知識を知っていると、建築デザイナーのデザインの選択肢がもっと広がるように思います。もちろん、これは構造設計者にも当てはまることで、建築計画や設備計画の基本を知って相互理解が深まれば、建築の質もいっそう向上するのではないでしょうか。

本書は、『直感で理解する! 構造設計の基本』『直感で理解する! 構造力学の基本』に続く直感シリーズの第3 冊目となる本です。前2 冊と同様、構造力学の専門書に出てくるような難しい数式を使わず、直感に訴えかけるよう、平易な文章と手描きのイラストで解説しました。本書は、主として建築デザイナーに向けて執筆したものですが、若手の構造設計者にも十分参考になるものと考えています。第1 章では構造設計の根幹を、第2 章、第3章ではそれぞれ構造技術とディテールについて解説しています。また、第4 章は、実際のプロジェクトで構造設計者としてどういうことを考えていたか、頭の中を覗いていろいろな着想のヒントにしてもらおうと執筆しました。

構造設計に唯一の正解はありません。構造設計者が百人いれば百通りの解が得られるものです。そういう意味では、本書もその解のひとつを示したに過ぎません。経験しないことは書けませんし、ほかを探せばもっと良い解が見つかると思います。ただ、建築はいずれも特殊解です。だからこそ、構造的な着想や課題解決のプロセス、構造技術の使いどころを自分のものとして吸収し、今後の建築設計に活かしてほしいと願っています。

2021 年7 月吉日
山浦晋弘

●書籍目次

まえがき

第1章 建築デザインの前に共有したいこと

1.  本と建築の類似性
2.  自然現象と自然災害
3.  力を流す経路をどうデザインするか?
4.  耐震設計をイメージする
5.  建築物に必要な鈍感さ

COLUMN / 地震より厄介なもの

第2章 建築デザインの幅を広げる構造技術と発想

1.  躯体のローコスト化を図る
2.  異種材料を組み合わせる
3.  静定構造ですっきり見せる
4.  地盤に浮かべる
5.  建物と建物をつなぐ
6.  柱をランダムに置く
7.  建物を跳ね出す
8.  ヨコに伸ばす
9.  タテに積む
10. 折って強くする
11. 空間を架け渡す

COLUMN / 壁は強い

第3章 細部のカタチにこだわるための構造的解決法

1.  柱を細く
2.  柱を丸く
3.  部材を傾ける
4.  大ばりをなくす
5.  小ばりをなくす
6.  はりせいを抑える
7.  リブを見せる
8.  バリアフリー化する
9.  庇を薄く
10. アールをつける
11. 階段を浮かす
12. カタチを変えない

COLUMN / 鈍感と敏感のあいだ

第4章 構造設計者の頭の中を覗く

1.  ブラウン管TVをそのまま形に
2.  倒れないドミノ
3.  屋根のフォルムを活かす
4.  柱を抜いてウチソトを連続させる
5.  要素の繰り返しで構成する
6.  建築デザインに自由度を与える
7.  積み木細工のようにつくる
8.  茶碗を置く
9.  木組みのイメージを現代の技術で表現
10. 17.4mを跳ね出す

COLUMN / マニュアル撮影のすすめ

あとがき
参考文献


☟本書の詳細はこちら
『直感で理解する!建築デザイナーのための構造技術の基本』山浦晋弘 著

体 裁 A5・216頁・定価 本体2500円+税
ISBN  978-4-7615-2785-3
発行日 2021-08-15
装 丁 Iyo Yamaura

いいなと思ったら応援しよう!

学芸出版社
いただいたサポートは、当社の出版活動のために大切に使わせていただきます。