図解談義ダイジェスト|1見開き目
2019年11月7日、旅の本屋のまどさんで行われた図解談義のダイジェスト版をお送りしていきます。
そもそもこの絵本は
屋上まで続く迷路のようなスロープ車路、スケルトンのエレベーター、クレーンが吊られた現在進行形の増築基地としての屋上工場、一つとして同じ間取りがない住戸。まるで絵本から飛び出したような建築・沢田マンション。形態のインパクトだけでなく、すべては沢田夫婦が手作りでつくりあげた驚異の巨大DIY建築で今なお現役でまちの暮らしを支えています。そんな“沢マン”の、増築に増築を重ねたプロセスを立体的なドラマと捉え、ものづくりの面白さや建築の仕組み、ダイナミックな生活空間、夫婦二人だけの建設行為のクリエイティビティを魅せる一冊
を目指しています。15見開きで構成。A4変型判(220×297㎜)というわりかし大きな本です。
図解談義はその15見開きを一つずつ議論していくスタイルで開催しました。青山先生の手元を照らすミニライトを動画で映し出し、紙面にリアルタイムで朱入れしていく、という形式で進めていきました。こんな感じ。
その1見開き目がこちら。
最初はまっさらな敷地だったわけですが、なぜ沢田夫妻がこの地を選んだのかですが、端的に言うと、北に山・東に川が流れる家相的にベストだったのだそう。のどかな山端の敷地上に、突如大きな矢印がどでんっと示されているのは、そんな夫妻のこだわりを表現してみたもの。矢印、どんなふうに表現すべきでしょうね。そして公開打合せで入った朱入れがこちら。
矢印はさておいて、まずは森との境界部にぽこぽこと生えてきている小さなブロックみたいなものが書き足されています。
実はここ、お墓です。しかもなんと、この山には高知では知る人ぞ知る江戸時代末期~明治にかけての浮世絵師・弘瀬金蔵(通称:絵金/えきん)、江戸時代末期の土佐藩郷士・岡田以蔵(通称:人斬り以蔵、司馬遼太郎も小説の題材にした幕末の四代人斬り)のお墓もあるのだとか。昔から見晴らしの良かった山裾にあったみたいですね。
どうやら沢田マンションとセットで見学する人もいるみたいです。その墓地との間には「たしか細い通り道があったような」と加賀谷さん。たしかに、視察旅行のときにも、草藪をかき分けてうっすらと残っていたけもの道みたいな崖沿いを伝って、足をぷるぷるさせながら沢田マンションを裏側から眺めたような。敷地の境目がどうなっていたかなんてわかるはずもなく、想像でしかないのですが、とにかく敷地の周縁も描き切らないといけません。ひとまず道とお墓を書き足すことにしました。
あと、敷地手前角には「嘉農さん愛用のオート三輪があった!」という加賀谷先生の証言によりオート三輪を書き足しました。こういった小物、一気に時代の空気がよみがえる感じがいいですね。写真もかわいかったです。
まっさらでだだっ広い敷地に沢田夫妻と小さいオート三輪がぽつねんと佇んでいる様子がなんともわくわくします。
そして右側の吹き出しに描かれているのはなんと、
夢の10階建て。
実は沢田マンション、嘉農さんの頭の中では、当初10階建てのマンションとして構想されていたんです!
お読みになった方はご存じの通り、加賀谷先生の『沢田マンション超一級資料―世界最強のセルフビルド建築探訪』にはなんとその構想段階の図面が載っているんですね。立面図を見てみると、なにやらもう少しシュッとしてましたね、構想図面ではかなりモダンでミニマムな佇まいだったようす。ということで、嘉農さんの頭の中の絵も、シンプルな矩形に変更。今のような有機的建造物の面影はみじんも感じられないのが面白いです。
・・・と、一見開き目はこんな感じで朱入れされていきました。こんなふうに全15見開きが少しずつ完成形に近づいていくのかもしれませんし、もしかしたら全然違う絵になっているかも。次のページでも、まだまだ謎ときは続きます。
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