野球の神様①
ある平日の夕方、8歳の少年は彼の住んでいる家と思われるところの前にあるガレージでバットを振っていた。
おぉ、偉いのぉ。ちゃんと一球一球真剣にバットを振っておる。
野球の神様は、バット・ボール・グローブその他野球に関係する匂いを嗅ぎつけると、匂いのするところをまるで蜜を探す蜂のようにグルグルグルグルと駆け巡る習性を持っている。
どうやら今日は8歳の少年のバットの匂いを嗅ぎつけたらしい。
いい汗しとる。いい顔しとるわ。わしゃこういう人間が好きじゃ。
神様は笑顔で数分、少年の斜め左上の宙を浮かびながら立ち止まっている。
しばらくすると、
おぅおぅ、なんか向こうのほうでも良い香りがするぞ。おっと、彼のことを忘れないように「しるし」をつけとかなきゃな。
神様は8歳の少年の手のひらに「マメ」のしるしをつけて、次の目的地へ向けて飛んでいった。