「主任になって良かった!」と思って欲しい園長先生に、お伝えしたいこと
新年度のスタートから1月が経ち、新たな環境や役職にも少しずつ馴染んできた頃ではないでしょうか。
がじゅまる学習塾も4年目に入り、時とともに変化していく塾生の姿が面白くも、愛おしくも感じています。
さてさて。
本年度は、がじゅまる学習塾での経験をもとに
「主任保育士対象のマネジメント塾」を開塾することにいたしました。
今回は、開塾に至った背景についてお話ししていきます。
開塾の背景1:そもそも本人に、主任保育士になる想定がなかった
これまで私が出会ってきた主任保育士の多くは、主任保育士になることを想定することも、願うこともなく、「必要に迫られて」主任保育士の役職についています。
私自身が園長を務めていたころにずいぶんと助けてもらった主任保育士に始まり、その後に就任した4名の主任保育士(その後認定こども園に移行したため、現在は主幹保育教諭)も、就任の相談を持ちかけた際は「まさか自分が?」と、驚いた様子でした。
この反応は、彼女たちの謙虚で穏やかな人間性も無関係ではないと思います。
しかし、多くの保育士は、幼い頃の憧れや、"子どもと関わること"の楽しさやおもしろさ、そして適性を自覚して保育士になっていますし、養成校での経験からも、その事実は明らかです。
言い換えると、"働く人のサポート"や、"クレームや危機管理の対応"を動機として、さらにはその適性をもって、主任保育士を目指したわけではない…
現場にいる主任保育士の大半が、保育士としての丁寧な仕事ぶりや、職場での良好な関係を育んだ結果、任命されているのです。
つまり、「保育」としての専門性は十分にあっても、大人を指導・監督することについては、知識・スキル・心構えがないままに、人柄任せに仕事をせざる得ない
と言う現状が生まれています。
開塾の背景2:やってもやっても、自信も確信も持てない仕事
私はこれまで、主任保育士向けの研修会や、キャリアアップ研修のマネジメント分野などで、多くの主任保育士の方々と言葉を交わしてきました。
その中で、私が主任保育士に対して持った印象は「真面目で冷静な視点を持ちつつも、自分の仕事に対する不安が見え、正解というよりも"安心"を求めている」というものです。
なぜそのような印象をもったのか。
少し掘り下げてみましょう。
保育士としての仕事を評価された先に、園長への信頼や、仕事への責任感、保育園への愛着から、全く違う役割と業務を引き受けた。
しかし…子どもと大人の違い(成長過程、信頼関係の築き方、思考や感覚の多様性)に困惑している。
そして、これまで経験したことのない業務(時間管理や職員配置、書類のチェックや行事までのマネジメントなど)、いわゆる手応えと評価のない業務に追われている。来客への対応、関係機関との連携、保育士が足りないクラスや当番の補填もする。
さらに。
これでいいのか?他の園の主任保育士は、自分よりも有能なのではないか?
職員が辞めるのも、子どもが怪我をするのも、保護者からクレームが入るのも、自分の未熟さゆえのものではないか?と、とにかく悲観をしてしまう。
しかも、主任保育士の仕事のパターンは、園によってもさまざまで、クラス配置に近い状態もあれば、事務所仕事がメインの場合もある。
主任保育士の役割や業務は、園の方針によるため、どのタイプがいいとか、悪いとか言うことはありません。
ただ、自分自身の仕事や、園の保育を言語化することができないと、隣の芝生が青く見え、自分以外の主任保育士が極めて優秀に見えたりすることは、当然のことでしょう。(私自身、園長だった時が、まさにそうでした)
そんな、思考の悪循環に陥っている主任保育士の話を聞くたびに、居た堪れない気持ちになり「マネジメントの知識」や「大人を指導するスキル」さえ持てたら、随分と軽やかに仕事ができるのに。と思うようになりました。
開塾の背景3:これで大丈夫!の、安心が欲しい
そして、園に一人しかいない(認定こども園は2人)主任保育士が、同じ役職者同士で、部会や研修で意見交換をしたとしても、突破口を見つけられないまま、愚痴を言ってしまっているのではないかと自責するパターンも少なくありません。
キャリアコンサルタントとして、様々な業種や職種の人たちのお話を聞く機会にも恵まれてきた中で、私は「保育に関わる人たちは、優しすぎる」と実感しています。(時に、上昇志向や承認欲求を持った、自我の強さが全面に出ている保育士さんにも出会うことがありますが)
子どもだけでなく、関わる全ての人のことを心配し、自分の中に抱えてしまう。
見方を変えると、自分ではどうにもできないことに胸を痛め、他者の怒りや不満も引き受けてしまう。ということでもあります。
そして、問題や課題に対しても、感情で受け止める傾向が強く、表面的には「優しい」のですが、それは「我慢」や「言いなりになる」ことのリスクもはらんでいます。
職員や保護者の要求が強くなる原因にもなりかねません。
そもそも、人と人との距離感が近い仕事でもあるので、「他人との境界線を引くことのトレーニング」が必要なのです。(研修ではなく、トレーニング)
これは、子どもとの愛着関係や、保護者との信頼関係、職員間のチームワークや地域に根差した保育など、よく言われるテーマとも関連しています。
だからこそ、主任保育士が自己理解を深め、セルフマネジメントをしっかりと働かせたうえで、自身の役割を果たしていくことが必要です。
正解はありませんが、その時々の「最善策」は、見つけることができます。
最善策を探していくための「職員育成・チームマネジメント」は、主任保育士の大切な役割です。
そのためには、「主任保育士自身が安心して話せる、視野が広がる場」が必要だという考えに至りました。
ネガティブに感じることばかりを並べてしまいましたが、主任保育士の育成に関する好事例もたくさんあります。そして、仕事を通して人が成長していくプロセスには、共通性があります。(今回は割愛しますが、また別の機会で)
主任保育士になることは、保育士全てに与えられたチャンスではなく、その人の持つ人望・保育のスキル、そして何よりも「タイミング」によって、巡ってくるものです。
だからこそ「主任保育士になって良かった」と思ってもらいたい。その主任保育士の元には、たくさんの保育士、その向こう側には子どもたちがいる。
お母さんの不安を子どもが感じ取るように、主任保育士の不安は、保育士に大きく響きます。
ポジティブな感情も然り。です。
そこで。
今回、主任保育士向けのマネジメント塾では、以下の3つの点にポイントを置くことにしました。
主任保育士が身につけるスキルの明確化
主任保育士が身につけるべき知識を学ぶ、スキルを身につける
仕事の正当な評価や、適切な指導
また、現場にある課題を明確化するために、アンケートや打ち込み形式での報告も取り入れます。
<日程>
5/9(木)
オリエンテーション・カリキュラムの説明・ マネジメントの基本・主任保育士に必要なスキルの明確化
6/13(木)
人材育成のポイントと論理的思考
自己評価の重要性と文言の整理(ガイドラインの要約)
8/8(木)
保育所保育指針のポイント(園内での共通認識を図る)
自園の全体像の把握(資源と地域環境、歴史的視点)
10/10(木)
経験を知識化するためのテクニック
保育に求められる視点と、園長の仕事の理解
12/12(木)
事故・保護者からのクレーム・保育士の不満への予防と対応
福祉の視点・時代に沿った事業展開・海外の保育事例
2/13(木)
1年の振り返り
今後のスキルアップに向けた計画策定
いずれも、10:30〜12:00にオンラインにて開催。
定員になり次第、締切となります。
体系的に学ぶことで、これまでの経験を言語化していきましょう。
※ 参加できない場合は、アーカイブをお届けします。