1人焼肉 郊外展開は成功するのか?

昨日の東洋経済オンラインに「焼肉ライク」と「幸楽苑」の郊外進出についての記事(※1)が掲載されていた。

「1人焼肉」は、日経トレンディ12月号で「2019年ヒット予測100」にもランクイン(※2)した、まさに今年のトレンドになりそうなキーワードである。そして、そのトレンドを牽引役が「焼肉ライク」である。

「焼肉ライク」は、牛角の創業者西山知義氏率いるダイニングイノベーション社による“焼肉ファストフード店”。2018年8月29日にオープンした新橋店はTVを含む多くのメディアに取り上げられて大盛況。その後11月29日には新宿店がオープン。各卓に注文用のタッチパネルとウォーターサーバーがつき、新橋店より進化した店舗になっている様だ。ちなみに、1号店のオープンは焼肉の日(8月29日)、2号店のオープンはいい肉の日(11月29日)だったので、3号店である渋谷店は肉の日(2月9日)オープンと予想していたが、、3号店のオープンは1月29日とのこと。

2016年の某調査では、1人で入店しづらい飲食店第2位だった焼肉屋が、2019年に「1人焼肉」としてトレンドワードになるとは、流れが大きく変わってきていると言えるだろう。

ハピ研 青山ハッピー研究所より(※3)


この「1人焼肉」を今後郊外へ展開するにあたって、「焼肉ライク」を展開するダイニングイノベーション社と、ラーメンチェーンの「幸楽苑」が提携。「焼肉ライク」とフランチャイズ契約をした「幸楽苑」が業態転換により郊外に「焼肉ライク」を出店するそうだ。提携発表翌日の2018年12月27日に幸楽苑ホールディングスの株価は年初来高値をつけ、この提携に対し市場は非常に好意的に見ている。

ただ、筆者は「1人焼肉」の郊外展開は一筋縄ではいかないと考えている。具体的には
・郊外店でターゲットになる顧客には、現在のメニュー構成や価格帯が合わないではないか?
・郊外で食事をする人の中に、“1人焼肉”のニーズは一定規模あるものの、“ファスト(fast)”を求めている人の割合は少ないのでは無いのではないか?特に、郊外店でまだまだ割合が多いファミリー層はファストと相反する顧客層ではないか?
・そうすると、高原価(42%くらい?)だが、回転率を高めることで利益を出す「焼肉ライク」のビジネスモデルは厳しいのではないか?
と考えている。実際、「いきなり!ステーキ」のロードサイド店は苦戦しているらしい(※4)

もちろん、素人の筆者が考えていることなんて、当のご本人達は考えているはずなので、
・「(「幸楽苑」がFC契約した「いきなり!ステーキ」について)客単価2000円のいきなり!ステーキは所得水準の高い都心部では強いが、郊外での展開においては力強さを欠く。従来、郊外で強みを発揮してきた幸楽苑ホールディングスは「良い立地があれば出店したい」とするものの、直近の3カ月で同社によるいきなり!ステーキの出店はなく、今後の出店計画もない。」
・「ダイニングイノベーションとしても、展開する地域のすみ分けができる。同社が運営する焼肉ライクは現在2店舗。今年4月までに、渋谷や横浜、秋葉原、五反田での直営の新規出店を予定するが、すべてが都心立地である。グループとしてロードサイドでの本格運営の経験が少ないため、今回郊外を中心に500店を持つ幸楽苑ホールディングスに郊外の展開を託す形となった。」(※1の「東洋経済オンライン」より抜粋)
・「郊外店に適したメニューやレイアウトは両社で検討を続けている」(※5)
という形になったのだろう。

ダイニングイノベーションにすれば、ノウハウが少ない(難易度が高いと考える?)郊外へ「焼肉ライク」を低リスク高スピードで出店できる。幸楽苑にしてみれば、らーめん事業の自社競合を減らせる店舗ポートフォリオを推進する業態を手にしたことが、今回の提携のメリットだろうか。

ちなみに、郊外型店舗での店舗ポートフォリオで、「すかいらーく」と並び筆者が思い浮かぶのが「物語コーポレーション」。東証一部に上場する同社は国内だけで14のブランドを抱え、その筆頭「焼肉きんぐ」は、「牛角」に次ぐ、焼肉業界2位の店舗数を誇る業態である。

この「焼肉きんぐ」は、食べ放題の専門業態。100分の食べ放題が2,680円・2,980円・3,980円。客単価はランチ含め2,600円とのこと(※6)。組単価は6,500円~9,000円くらいで、家族4人で食事をして1万円出しても、おつりがくるような価格帯と予想する。

郊外型焼肉店の成功形であろう「焼肉きんぐ」だが、4人家族でもお1人様でも1卓を100分間使用されるので、1人焼肉を積極的に受け入れることはできないだろう。

「焼肉きんぐ」が築いた現在の郊外型焼肉店の成功形に対して、「焼肉ライク」「幸楽苑」がどのような郊外型焼肉店を生み出すのか?千葉にオープンするという提携第1号店が楽しみだ(オープン日は3月29日で、やっぱり「肉の日」らしい)。

P.S.
テーブルごとに仕切りがついていて、「1人ラーメン」専門店とも言えるかもしれないラーメンチェーンの「一蘭」は、ロードサイド沿いに駐車場付き店舗があるそうだ。同店には、どの時間帯にどのようなお客様が来ているか?特に休日のランチとディナー帯にどのようなお客様がどのように食事をしているか?ぜひ、チェックしてみたい


※1
幸楽苑が「1人焼き肉」の郊外店を出すワケ
 https://toyokeizai.net/articles/-/259572
(東洋経済オンライン)

※2
1人焼き肉に熟成魚… 食品・外食の19年ヒット予測 : https://style.nikkei.com/article/DGXMZO37919670Z11C18A1000000?channel=DF160120183384
(NIKKEI STYLE)

※3
おひとりさま、外食はどこまで出来る?
https://www.asahigroup-holdings.com/company/research/hapiken/maian/201607/00601/
(ハピ研 青山ハッピー研究所|アサヒグループホールディングス)

※4
いきなり!ステーキ、急成長の陰に潜む誤算
https://toyokeizai.net/articles/-/257727
(東洋経済オンライン)

※5
幸楽苑が1人焼肉店FC契約
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20181227-337790.php
(福島民友)

※6
フランチャイズショー資料より
https://messe.nikkei.co.jp/fc/i/column/institution/113207.html





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外食マーケター
某外食チェーン店に勤務するマーケターです。記載内容は個人の見解であり、所属企業の見解とは異なります。