【外苑前野球ジム】動作解析プランから紐解く投球動作~インステップによる影響~
小学生年代や中学生年代の投手に「インステップ」して投げている投手がよくみられます。
今回はこの「インステップ」に着目して見ていきたいと思います。
インステップとは、、、
軸脚とホームプレートを結んだ線より右投手なら右バッターコース側へステップ脚を接地すること
このインステップは、未熟投球動作で最もみられる動作パターンの一つと言われています。¹⁾
ではどのような人がインステップしやすいのでしょうか。
大きく分けると2つです。
1.股関節の可動域が狭い人
⇒ステップ脚は股関節外旋をして接地します。しかし、股関節を十分に外旋できない人(股関節外旋可動域が狭い人)は外旋しなくても接地できてしまうインステップの位置に接地してしまいます
2.軸脚の使い方が不適切な人
⇒並進移動の際に軸脚のハムストリングス(大腿後面筋群)でなく大腿四頭筋(大腿前面筋群)有意な使い方をしてしまう人は、地面反力を適切に投球方向へ向けることが乏しく、インステップの方向へ体重移動してしまいます。
インステップによる影響
腰部の回旋角速度、上腕の角速度が増加(※角速度=回転する速さ)²⁾
⇒このようにしなくては、右投手であればボールを右バッターボックスの方へ投球してしまうからです。
肩関節外転角度は小さいが、最大外旋角度は増加することにより肩関節への負担が大きくなる可能性³⁾
ジャイロ角度が大きく、回転効率が低い傾向(弊ジムのお客様を見ていての個人的感想)
⇒腰部の回旋や上腕の角速度などが適応できず、手関節や手指で投球方向を修正している可能性?
まとめると、、、
腰から上でインステップした分を修正しようとするため、肩関節への負担が増大する恐れがあり、回転効率の低い投球になってしまう可能性がある
これらのことを踏まえてお客様のデータを見ていきたいと思います。
Before
このお客様は、軸脚の足関節、膝関節屈曲が大きく、伸展が乏しいまま並進運動を行っていました。
その結果、ステップ脚着地位置は 30㎝ 三塁側にあり、インステップしている状態でした。
そのため、ステップ脚を最も高く上げている時点(MKH)からステップ脚を着地した時点(SFC)で比較すると身体重心の位置が 10㎝ 三塁側へ移動していました。
投球の結果を見てみると、ジャイロ角度が非常に大きく、回転効率が60%を下回っている状態でした。
アセスメント内容
このお客様に実施したトレーニングは3つです。
RDL(Romanian Deadlift)
まず初めに浅い角度でのRDLを実施することで殿筋群、ハムストリングスといった大腿後面の筋群に刺激を与え股関節の屈曲動作を促します。
スクワット
スクワットを行うことで、RDLで獲得した股関節屈曲動作と足関節、膝関節の動きを協調します。
サイドランジ
スクワットで獲得した下肢三関節の協調運動を片足で行うこと、力を横方向に加え身体移動を行う動作を獲得することを目指します。
以上3点のトレーニング介入により、軸脚の力発揮方向を投球方向に向けることでインステップ動作の改善を目指しました。
After
アセスメント後の投球では、並進運動の際に足関節、膝関節が大きく屈曲することなく、投球方向に向かって身体重心を移動させることができるようになっています。
アセスメント後の投球では、ステップ脚着地位置がほぼ正面へと改善されました。
その結果、ステップ脚が着地した時点での身体重心の位置は 約5㎝ 一塁側となっており、インステップが改善されました。
ラプソードによる投球結果を見ると、
ジャイロ角度 : 53.4° ⇒ 33.3°
回転効率 : 59.6% ⇒ 83.6%
縦の変化量 : 16.4㎝ ⇒ 36.2㎝
ジャイロ角度が減少したことにより、回転効率が向上し、縦の変化量が増加しました。
皆さんもぜひ、ステップ位置を気にしてみてください!
参考文献
齋藤健治,宮崎光次,新井野洋一(2015)投球動作非熟練競技者の投動作から見えること,日本野球科学研究会第3回大会報告集
.齋藤健治, & 佐藤菜穂子. (2016). 野球の投動作における踏み出し脚のステップ方向の影響について. In シンポジウム: スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス講演論文集 2016 (pp. B-9). 一般社団法人 日本機械学会.
.五百川威, 飯田晋, 相田将宏, 古賀良生, 山本智章, 田中正栄, ... & 塩崎浩之. (2006). 成長期少年野球選手における In step, Out step の投球動作への影響. In 理学療法学 Supplement Vol. 33 Suppl. No. 2 (第 41 回日本理学療法学術大会 抄録集) (pp. A0747-A0747). 日本理学療法士協会 (現 一般社団法人日本理学療法学会連合).
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