【短編】特殊能力選手権 その3
森永雪見はブラウスのボタンをゆっくりと上から順番に外し出す。
ボタンを全部外したところで、次にブラジャーを外す。フロントホックだ。
見事な形をした二つの大きな乳房が現れる。
会場は響めいた。
おっさん連中は競うように、最前列に移動してくる。
色白で木目の細かな乳房の真ん中に、まるでスカートとコーディネートしているかのような淡いピンクの乳輪がハッキリと見える。
雪見はトリスに向かって両手で乳房を揉む。
ピューッ!ピューッ!と母乳が飛んだ。
母乳はトリスの左腕をかすめた。
ブラウスがカッターで切ったように裂け、一瞬の間をおき、腕から血が滲み出る。
「このままではいけない! とにかく三分間耐えなければ......」そういうと、トリスは広場内を逃げ回る。
雪見は胸を出したまま、トリスを追いかける。
走る足から伝わる振動に共鳴するかのように、乳房が揺れる。そうかと思えば、不意に足から伝わる振動に反発するかのように、乳房がダダンッと揺れる時がある。
筆者はこの瞬間が堪らなく好きだ。
妄想機関車をレールに戻そう。
雪見は追いかけながらトリスを狙うが、母乳はなかなか当たらない。
「よし! 三分経ったわ」そう云うと、トリスは口を閉じたまま鼻を摘み、息を吐き、目からピーっと音を出した。
その刹那、トリスは雪見の背後に立っていた。時空を超えて移動したことで、完全に元の場所には戻れない。これがパラレルワールドだ。
雪見はまだブラウスの第二ボタンを外すところだった。
トリスは雪見の背中に軽くタッチした。
「勝者、トリス!」と言った後、
「ちっ」と、マスターがトリスの右手を挙げた。
ゴングが鳴ってすぐの出来事に、会場の男性陣たちはつまらなそうに元の席に戻っていく。
雪見の胸を人前に曝け出すことなく試合が終わり、ほっと胸を撫で下ろしたのは、姫野一であった。
〈準決勝 第一試合 六助VSパイタン〉
カーンとゴングが鳴る。
「とにかく身体にタッチさえすれば、僕の勝ちだ」そう云うと六助は、果敢にパイタンに向かって突進する。
「ケッカイ!」パイタンは両手を挙げる。
ビリビリビリー!
六助の出した手は結界のバリアで止まり、その電流は己に流れた。
六助はバタリと倒れる。
パイタンは倒れた六助の背中にそっと手を置いた。
「勝者、パイタン!」マスターがパイタンの手を挙げた。
余りにもあっけない幕切れだった。それにしても、馬をも倒す強電流だ。果たして六助は大丈夫なのか。
六助は白眼のまま呟いた。
「草陰に 野糞漂う 紙ひとつ」
うん、大丈夫そうだ。
(つづく)
BGM 浜田省吾 Money
その4で決勝戦までいく予定です。
今週はこんなん、いただきました!
皆さま、ありがとうございます🙏
毎週これを載せているのは自慢じゃなくて、コメント苦手な人も「おめでとう」からなら入りやすいかな、と云う想いもあります🙏
また今度!
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えっ!ホントに😲 ありがとうございます!🤗