産業医科大学の医学生が産業医を目指すべき10の理由
私が学生さんからよく受ける質問は
・なぜ産業医を目指したのか
・産業医に将来性はあるか
・産業医にやりがいはあるのか
・産業医は楽しいのか?
・産業医は稼げるのか
といったものです。
これらに答える記事をこれまでにも作ってきたとは思うのの、少し回りくどかったなと反省しています。そこで、もう少し直球気味に、私の考えを記事にしたいと思います。
題して、
です。
なぜこの記事を作ったか
この記事は、現場実習に行く前にという記事に続いて、産業医科大学の医学生さん向けの記事です。悲しいかな、産業医科大学の医学生さんは、産業医科大学の学生であるにも関わらず、産業医にキャリアを相談できる環境にはあまりないようです(産業医に興味がない人も多いとも思いますが)。産業医に関する情報弱者のような人も多いようです。そして、解像度が低いままなんとなくキャリア選択をしている方もちらほらいるようです。コロナ禍があったり、部活のつながりが薄まったこともあって、先輩らと話す機会が減ったこともあるように思います。
それなら記事を作って発信してしまえ!ということでこの記事を作りました。
キャリア相談を受けても、時間的にも回答できることも限りもあるし、十分には伝わらないこともあるし、ちょっと回りくどい説明をしてしまっている気もしますしね。
なので、もうこれ読んでおいて!その上で、相談があればぜひきてください!
なお、本記事は、臨床医を否定していたり、ディスっているわけではありません。が、私はガチで産業医が最強で最高と思っているわけで、「産業医推し」をしまくっている結果として、少しだけ臨床医を下げてしまっている表現は含まれることはあるかもしれません。例えて言うとすれば、嵐というアイドルグループを推しまくってたら、いつのまにかBTSを下げていた、といったくらいの話です。わかるようなわからんような例えで恐縮ですが・・・
なおのなお、産業医科大学の医学部卒業生のうち毎年1-2割ほどしか、産業医コースには進みません。そのことについて私は強く危惧を抱いています。私はガチで産業医が最強で最高と思っており、もっと産業医コース志望を増やしたいという野望があります。なんなら、医学部卒業生全員が産業医コースに進めばいいのに、とすら思っています(目的別医科大学ですからね!)。
これらの前提を踏まえた上でお読みいただければ幸いです(なんの言い訳やねん!)。
1. 有利だから
最初から下駄がはけますので有利です。当たり前ですよね、産業医を養成する大学である産業医科大学の卒業生が産業医をやるのであれば、最初から圧倒的に有利です。医学生のうちから産業医学を勉強しているわけであり、卒後の産業医の修練コースまで用意されているわけですからね。同じ目的別医科大学の防衛医大卒業の軍医は有利でしょうし、自治医大卒業が地域医療(プライマリケア医)が有利なことと同じです。産業医になるだけで超絶有利です。消化器内科医科大学があったら、消化器内科医になる方が有利ですよね。他の医学部からすれば、ずりーよって話ですよね。そうなんです、ずるいんですよ。産業医科大学の卒業生は産業医になった場合に限ってチートコースなんです。タイパもコスパもいいんですよね。それこそが目的別医科大学の価値です。最初っから、チートレールに乗って有利にいきていこうぜ。
2. 臨床で他大学を争うのが大変だから
医師資格を取得した時点でヨーイドン!で始まるのが医師という職業です。が、残念ながら、実際には、医学部生時代から差はかなり広がっています。学生のうちにUSMLEを合格する人もいますし、留学する人もいますし、論文を出す人もいます。学生段階からすでに勉強量も段違いです。折尾村で部活や飲み会に明け暮れている場合じゃないんですよね(みんながみんなそうではないのでしょうが)。そして、医師になってからも、その差は広がるばかりです。産業医大生が入れなかった偏差値つよつよの旧帝大の医師たちと競うわけですから、それはもうエゲツないほどの努力が求められます。医師としての普通の努力が求められるのは当たり前として、それに加えて彼らと競うだけのエゲツないレベルの努力が必要です。そりゃあもう大変ですよ。もちろん、学力や卒業大学が医師としての能力と同じかと言えば違いますが、やはり相関はしてきますからね。ましてや臨床、研究分野だと容易には勝てないと思います。毎年9,000人の医師がつくられるわけで、医師資格を取ったから安泰ではなく、医師の中でも競争です。その中で、どれほど優位な立場でいるかはけっこう大事だと思います。優位に立って仕事ができること自体が、医師としてのやりがいや稼ぎにも直結してきますしね。産業医科大学の卒業生が、他大学と競っていても優位に立ちやすいのは圧倒的に産業医コースです。
3. あちこち活躍の場面が多いから
仕事というものは、社会から、企業から、人から求められるから楽しいんですよね。学会に、講演会に、書籍に、病院のポストなどなどありますが、出番があるから、活躍できる機会があるから人は頑張ろうと思えると思うんですよね。が、臨床の世界は、どこも出番が非常ーに少ないです。ぎゅーぎゅーです。東大と京大と阪大と慶應と、、、、そのほかの最強医学部卒の医師たちでかなりの大部分を占められています。そういうところは人もお金も知見もあります。自分が興味があって、やりたいことがあったとしても、その世界で芽が出ないのはそれなりに辛いと思いますよ。やる気だけの問題ではないんですよね。人は環境で左右されますからね。伸びる環境に行けば伸びるし、そうじゃないところはそうじゃないんですよね。その点、産業医の世界はまだまだ空席があり、活躍の場面があります。競争相手が少なく、あちらこちらからお呼びがかかります(常に引っ張りだこ、とまでは言いませんが)。悲しいかな、社会はネットワークでありコネクションが超絶重要であり、その領域の偉い人と繋がっているからこそお声がかかるんですよね。活躍できる場所があり、必要とされることが多いのは明らかに産業医でしょう。
4. ネットワークが豊富だから
産業医科大学の卒業生は産業医が非常に多くいます(当たり前ですが)。ネットワークが最初からあります。産推研という卒業生のコミュニティが構築されており、質問し放題です。産業保健に関わる人が900人くらい入っています。なので、頼る先がいくらでもあります(ちょっと大げさですが)。産業衛生学会という産業医の一番大きな学会は、もはや同窓会です。産業医科大学が、日本の産業保健をリードする立場にありますので、学会は産業医科大学の卒業生があちらこちらにいます。他の臨床学会ではありえない光景だと思います。産業医学・産業保健はとてもニッチな領域かもしれませんが、だからこそ、この領域では産業医科大学を卒業することに価値が出るんです。他の領域にいけばワンオブゼム(=大勢の中のひとり)ですが、この領域では唯一無二の大学なんですよね(目的別医科大学ですからね)。産業医になった瞬間に、そういう環境に恵まれているなんてめちゃくちゃずるいし、心強すぎますよね。
5. 普通に稼げるから
産業医のポストは全国的にまだまだ充足していません。東京のごく一部のエリアでは、産業医資格を持っている医師がかなり多くはなっているものの、まだまだ、少し地方に行けば産業医案件はごろごろあります。もちろん、産業医経験が全くない人や、実力がない人にとってはごろごろはないかもしれませんが、前述のような有利・優位な立場にあり、ネットワークが豊富は産業医科大学卒業生の産業医にとっては、普通にポストにつけます。なんなら産業医大に届いている求人も覗かせてもらいましょう(参照:ラマティーサイト)。普通に稼げますよ。医師余りで、世の中の医師の時給がどんどん下がっていますが、自由市場の産業医業界は、そんなことがありません。実力次第でどんどん稼げます。
6. 競争相手が少ないから
幸か不幸か、産業医はそれなりに人気があがってきたといっても、産業医が地方も含めて充足することはないでしょう。なぜなら、多くの医師にとって産業医は楽しくないからです。経験を積むのも大変で、ネットワークもなく、活躍の場面も少ないからです。結局のところ産業医ガチ勢は全然増えていないんですよね。ほとんどの産業医有資格者は臨床を同時並行でやっていて、非ガチ勢です。産業医資格を持っている人が10万人いても、毎年の産業医の専門医取得人数はたった30人で(そのうち20人が産業医科大学卒業生)、日本産業衛生学会の医師会員数はたったの5,000人です。最近は少しずつ東京・大阪圏ではガチ気味の人も増えてきましたが、それでも、増加傾向はほかの臨床の領域と比較すれば、微増レベルでしょう。ガチ勢側にくれば、全然競争に勝てます。私も産業医が競争過多の業界だったら産業医をやっていない可能性が強いです(いわゆるニッチ戦略)。レアだからこそ価値が発揮できると思います。競争相手となりうる産業医ガチ勢が今後増えるかについては、以下の記事(無料)で考察をしています。
ちなみに、自分も初期臨床研修時点では、まだ産業医になるかどうかは決めてなかったのですが、同期の研修医を見て、「あ、これは勝てないや」って思いましたもん。こりゃ勝てないし、存在価値を発揮できないし、別に自分じゃなくてもいいかなって思ったんですよね。産業医は足りてないし、存在価値を発揮できそうだなって思って、産業医コースを選んだという経緯があります。
ちなみに、大学案内の卒業生の勤務先を見ると、産業医科大学の卒業生がいない都道府県は岩手県、山形県、福島県、山梨県、鳥取県、島根県、愛媛県、徳島県です。
後半の住む地域の選択の議論とは少し矛盾があるかもしれませんが、自分という人材が最大限に生かされ、価値が発揮できる場所でこそ生きるという戦略もありえます。産業医不足の地域は、そう簡単にはそれが解消されることはありませんからね。あえてその地域に飛び込み、存在感を出す戦略もあり得るかもしれません。
7. やりがいがあるから
産業医はやりがい・働きがいがあります(臨床医と比べて分かりにくいとは思いますが)。産業医は社会からの要請によって業務がどんどん増えてきてます。健康経営やウェルビーイング経営、両立支援、労働者不足、女性人材活用などの社会背景も相まって、産業医の活躍の余地が大いにあります。
なお、他の人に当てはまるか分かりませんが、私個人のやりがいや醍醐味があるなと思うポイントは、以下の通りです。ふわっとしか書いていませんので、もし気になる方は直接質問してください。
8. 働きやすいから
産業医は、企業で働くことになりますので、当直やオンコールはありませんし、大幅な残業はありません。また、コロナ禍もあってテレワーク・在宅勤務も広く普及しています。オンラインによる会議出席は面談はざらにあります。myQOL的にいいと思います。この部分はあえて強調しすぎないようにしますが、産業医は普通に働きやすいです。
病院勤務というのは労働集約型産業(つまりは、働く人が現場にいなければならないタイプの産業)です。責任をとれる医者がそこにいて、医者が指示をして、医師が処置をして、医師が最後までいる必要があるんですよね。だから働きやすさを追求するとしても限界があるんですよね。オンライン診療が普及していく未来もありますが、すでに時給が数千円レベルまでどんどん下がっていますので、働きやすさと引き換えに稼ぎが減るだけのような気がしています。
9. 健康によい
誤解を恐れずにめちゃくちゃ雑な言い方をすれば臨床医よりも産業医の方が健康的な働き方だと思います。労働時間・勤務形態的な話だけではなく、労働者に健康を指導、助言する立場であるからこそ、自分自身の健康に気を付けるようになります。健康的に職業生活を過ごせるって大事だと思いませんか?もしくは、病院の産業医になって、臨床の先生方の健康を支えませんか?
10. 住む地域が選びやすいから
2024年度専攻医から、日本専門医機構の専門医取得の条件が厳しくなりました。具体的には、産業医科大学の不同意離脱(有体に言えば、修学資金の返済)は、日本専門医機構の専門医取得ができなくなりました。そのため、産業医科大学卒業生は、実質的に専門医取得を目指すのであれば、産業医科大学の臨床の医局に入ることになります。専門医が絶対に必要かどうかは議論があるところではありますが、医師が余ると予測されている医師業界の将来を前に「専門医なんていらない」と卒業時点で早々に決断するのはややリスキーだと個人的には思います。そのため、実質的に産業医科大学の医局に属することになり、北九州に住むことになります。乱暴に言い換えれば10年程度の北九州地域枠と同じです。だから産業医の方がいいよというのも、これまたかなり乱暴な結論ではありますが、自分で住む地域が選びたいのであれば、産業医の方がいいのではないかと思います(とは言っても産業医コースも、卒後4-5年目あたりは北九州にいることが求められますけどね。臨床研修終了後に直接産業医になる道もあるかもですが)。将来どこに住みたいか、というのは医師のキャリアにとって非常に重要な問題ですからね。だからこそ産業医でしょう(←暴論)。
おまけ 産業医の3K
ちなみに
3期生の浜口伝博先生は、産業医の3K+1Kを提唱していました。
K かっこいい
K 感動がある
K 感謝される
+
K 稼げる
おまけ 産業医には5Kが必要
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おまけ 専門医について
おまけ2
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