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周囲の人が困っているのに、本人だけが困ってない状況をどう打開すればよいのか

はじめに

産業保健の現場では、「周囲の人が困っているのに、本人だけが困ってない状況」が多く発生します。その原因として、健康の問題が絡んでいることもあるし、絡んでいないこともあります。

本人が困っていないけれど、周りの人たちが困っている状況の例

例えば次のような状況です。

Aさんは、出社時にいつもアルコールの臭いをさせ、朝は明らかに二日酔いの状態。仕事のパフォーマンスもあがっていない。上司が本人にそれを問いただしても、そんなことはないと否定する。同僚も上司も、人事担当者も困り果てているものの、本人は知らぬ顔。

本人が困っていないけれど、周りの人たちが困っている状況の例1

Bさんは、タバコ休憩が頻回にあり、一回にタバコ休憩も15分と長いことが多い。休憩に入ると、本人への電話も取次ぐ手間が発生するし、業務上の相談もできない。タバコ休憩が長いことを伝えても、本人は、自分の範囲では仕事がこなせていると言い張る始末で、一向になおそうとする気配はない。

本人が困っていないけれど、周りの人たちが困っている状況の例2

Cさんは、自分は発達障害だからと、仕事のミスをしても反省する気配もない。時折遅刻をしたり、連絡が漏れていたりしても、それを言われると、自分は病気なんだから仕方がない、合理的配慮を知らないのかと言い訳ばかり。周りがCさんの仕事のミスのカバーをしなければならず不満が溜まっている。

本人が困っていないけれど、周りの人たちが困っている状況の例3

このような状況で困っているのですが、どうしたらいいですか、という相談が産業医にはよく舞い込みます。この記事では、このような状況における解決の道筋である「本人を正しく困らせる」ことについて説明していきたいと思います。

なお、「本人を正しく困らせる」ことについては、堤多可弘先生が以下の記事で「逃げ道を塞ぐ」とも表現をしています(ほぼ同義だと捉えています)。ご興味があればそちらもどうぞ。「正しく困らせる」という言葉は、産業保健界隈では、よく使われている言葉だと思いますが、実際にはあまり使われていないようですし、ググっても出てこないんですよね。

この記事では、以下のように説明されています。

解決へのメソッドはこうだ。 まず、うまく回らない原因を探る。労働環境に起因するものなのか、個人の能力と業務のミスマッチかー。課題をはっきりさせ、会社側(管理職・人事部)、本人と共有する。そして解決策を見つける。医師を含めて、三者ともに根気が必要な作業となる。これは障害者に限らずすべてのビジネスパーソンに求められる過程だと堤医師は言う。
 「障害者本人には、逃げずに自分の課題に向き合ってもらうことが長期的には成長や適応につながります。例えば、注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断されていた男性がいました。彼は、前職では創造的な仕事がなく、ルーティーンだったからうまくいかなかったと言った。でもルーティーンワークは、どんな仕事にも必ずある。行き過ぎた配慮や甘やかしをしないように、正しく逃げ道はふさぎます」
 追い詰めるという意味ではなく、絶妙なさじ加減で体調やタイミングを見計らい、サポートしながら無理のない範囲で課題に向き合えるようにするという。本人を守りすぎて、課題から目をそらし続けると成長の機会をなくしてしまう。

上っ面上司の「過保護」がもたらす職場の停滞 産業医と考える「障害者雇用」


それでは、「正しく困らせる」ことについて、説明してきたいと思います。

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