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産地とは何か?市場・仲卸から考える - 農業・新規就農(2/3)

まず、簡単にまとめる。

バイヤーの仕事は担当作物の必要量を品質の良い物で揃えることにある。

通常、バイヤーは複数作物を掛け持ちしているので、安心できる取引先を一つでも多く欲しがっている。
安心とはすなわちクレームが少なく、量が安定していて、年間の長い期間をカバーできる取引先のこと。
言い換えれば【安定した品質】【多くの生産量】【長い出荷期間】を兼ね備えた生産地のことである。

では、解説に入ります。



バイヤーは忙しく、効率の良い取引先を探している

市場・仲卸にとっての産地を知るには、彼らがおかれている環境から考える必要がある。

市場も仲卸も利益を追求する資本主義の組織だ。野菜を取り扱うバイヤーもこの組織の一員で利益のための効率の良い仕事を求められている。

効率を重視するために、品目にはある一定の役割がある。
消費量が多いことから、とにかく量を安定してそろえるのが定番品目。目新しさやブランド力が必要な品目であれば、競争力のある品を探し出し、他より先に取り寄せるといった具合だ。

ここで話題にしているのは定番野菜だから、必要量そろえることだが第一だ。数ある野菜に対して人員は限られているから、当然、複数品目の掛け持ちになる。複数の必要量をくまなくそろえる。
これがバイヤーの一般的な仕事だ。

そうなると管理の都合上、どうしても安定した取引先が欲しくなる。
一か所の取引先で必要量をそろえたいし、その取引先で出来るだけ長い期間品目をそろえたい。そこに品質がついてくるならば言うことなしで、その取引先を大切にして、他の掛け持ち品目に力を注ぎたいと思うだろう。

その安定からくる安心を実現できるところ。
それが市場・仲卸にとっての産地である。

ちなみに、大抵のスーパーの野菜の品ぞろえは一品目に対して一種類のことが多い。これも仕入れの効率化を目的としている。


クレームが市場・仲卸の不安材料である

全てのクレームは、まず消費者から上がってくる。
しかし、その対応の最前線はおそらく市場・仲卸である。
もちろん、小売店や生産者もクレーム対応に関わっている。しかし、クレームによって通常業務以外の対応が最も増えるのは、市場・仲卸ではないかと思う。

ちなみに、いち生産者が消費者からのクレームと向き合うことはほとんどない。
そもそも生産者に情報がスムーズに届く仕組みがないことが多いし、届いたとしても当事者としての実感を持ちづらい。おおよそクレームの原因というのは生産者の中でも一部の人に特化していることが多いし、そういった人は情報に対する関心も低い。

ともあれ、クレームが発生すると市場・仲卸は検品を行うことになる。
検品の結果に問題があれば、その問題が解決するまで検品を続けることになる。これはスムーズに業務が進んでいれば必要のない作業だ。
クレームは対応している人の利益を損なう。
生産者はこのことを意識する必要がある。

もし、クレームの多い産地と少ない産地があったらどうだろう。
当然だが、クレームの少ない産地は信頼を獲得し、そうでない場合は、信頼を失うことになるだろう。


信頼とは積み重ねた実績である

【安定した品質】【多くの生産量】【長い出荷期間】この積み重ねが全てで、これを兼ね備えているのが良い産地である。さらに言えば将来性も、現状を考えれば大きな要素になる。

ともあれ、信頼とは実績である。
既に長い取引が続いており、その積み重ねが先行している以上、これが第一である。

現状ではGAPなどの認定制度ではこれは補えない。
GAPを取得している農業生産者の方がクレームが少ないという実態はない。バイヤーが産地に求めている要素は認定では埋められないのである。

法による規制がない限り、認定はあくまで自身に全く実績のない場合や、相手にそれが伝わらない場合に必要とするもので、履歴書の資格に近いものだ。
農業に関わらず会社員でも、入社してしまえば求められるのは資格ではなく結果である。



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