愛犬が死んだ日
2023年4月30日 日曜日。
「春に三日の晴れなし」という言葉があるように、外は昨日と打って変わって叩きつけるような雨風が吹きつけている。
今日は休日であったが、一本の電話を受けてから即座に準備して、母とある場所へ車を走らせる。
数十分して到着したのは母の実家。今は祖父母と従姉弟家族が住んでいる。挨拶を済ませて急いで外の畑へ走る。
いつもは私の姿を見ると、小走りで駆け寄ってきてその愛らしい目で見上げてくる。
シュッとした見た目とは裏腹に、舌をいっぱいに伸ばして、取れそうなくらい尻尾をぶんぶんと振っていた。
でも今日はしてくれなかった。
十年も前に祖父が作った小屋の外で横たわり、祖母が掛けてくれたであろう毛布にくるまったままぴくりとも動かない。雨に濡れないよう、薄水色の傘も立て掛けてある。
「ココちゃん」
いつものように呼んでも振り返る様子がない。
「ココちゃん」
いつものようにお腹を撫でろと仰向けになってくれない。
「ココちゃん」
いつものように前足を触っても怒って吠えたりしない。
実感がなくて何度も名前を呼びかけた。死というものにいつまでも慣れない。
従姉弟がまだ小さかったココをもらってきたのが15年前。私は遊びに行くたびに散歩したり、写真を撮ったり、一緒に住んでこそいないが、自分の家族のように愛してきた。
人間でいうと90歳。昨年の予防接種の際、先生に「来年は受けにこれるかな。」と言われたらしい。その頃からだんだんと散歩の距離が短くなり、走り回る元気もなくなり、食事量も減った。
懸命に世話をしていた祖父母もすっかり沈んでしまって、見ているのもつらかった。
帰宅してから過去の写真を見返す。
少しずつ成長していく姿。
少しずつ老いていく姿。
ありきたりな言葉しか出ないけど、どんな姿も大好きで、可愛くて、かけがえのない存在。
ありがとう。お疲れ様。どうか天国でもアホ可愛い顔で走り回っててくれ。
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