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藤島武二の『ハガキ文学』の表紙画

『ハガキ文学』表紙画《星の神》

 今回は、藤島武二の雑誌『ハガキ文学』第2巻第12号(1905年8月1日、日本葉書会)の表紙画を紹介しよう。

目次によると題は《星の神》、印刷は石版である。

『ハガキ文学』第2巻第12号(1905年8月1日、日本葉書会)表紙画 藤島武二

 石版は平面的な表現になりやすいので、塗り絵のように色分けして、配置や中間トーンによって、奥行きを出そうとしている。

 たとえば、草花は女性の前に位置し、背景の装飾的な夜空は一番奥にあるように描かれている。

ミュシャの影

 筆を持って書きものをする女性が描かれるが、誌名が彼女の筆によって書かれたという見立てもあるのだろう。
 背景の散りばめられた星や、女性の髪の先端のうねりにアルフォンス・ミュシャからの影響が感じとれる。

 表紙をくると、モノクロではあるが、ミュシャのサロン・デ・サンのポスターが口絵として使われている。

『ハガキ文学』第2巻第12号(1905年8月1日、日本葉書会)の口絵 アルフォンス・ミュシャ

 こちらは絵筆を持つ女性である。
 モノクロながら画像ははっきりしており、印刷は石版だと推定される。

 『ハガキ文学』の表紙画は、色調を変えて一定期間同じものが使われていた。

 第12巻第14号(明治38年9月1日)では草は緑、背景がオレンジ色になって、着物の色も変えられている。

『ハガキ文学』第2巻第14号(1905年9月1日、日本葉書会)表紙画 藤島武二
*目次では題名は《星の夜》と変更されている

 第2巻第12号の黒と赤のコントラストの方がいいとわたしは思うが、読者はいかがだろうか。

 女性の横顔は、油絵画家として大成する藤島の主要モティーフ(《芳蕙》1926年など)であったが、装飾デザインの初期にも使用していることがわかる。


 『ハガキ文学』の表紙画では、女性のなかば開いた口が幻想的な雰囲気を強めている。

 また、題簽だいせん、女性、草花の配置のバランスが見事で、計算されたような構図となっている。

 藤島は、この翌年、1906年に文部省留学生として欧州留学に旅立つ。

【編集履歴】
○2022年10月23日、誤記修正 
小見出し「『ハガキ文学』表紙画《星の夜》」→「『ハガキ文学』表紙画《星の神》」


ご一読くださりありがとうございました。


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