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ユーザー体験シナリオ作りのための、優れたストーリーラインの映画選

みなさんは、サービスやプロダクトの開発のなかで、構造化シナリオなどを使ってユーザー体験のシナリオを描くことがありますか?
自分もクライアント企業とのプロジェクトにおいて現実(As-Is)と理想(To-Be)のどちらもストーリーとして描くことがあります。
そのなかにある課題として文章化が難しいという課題がいつもあります。
この記事では文章化をするために優れたストーリーラインを知るという角度から映画を紹介する記事です!

シナリオを描く難しさ

そもそもシナリオ(文章化)するメリットは、文章を描く過程のなかで文間のつながりや整合性を吟味するため、資料としての精度が高くなるということや、キーワードの間の行間を解釈して読む箇条書きと違い、誰が読んでも同じ情報を提供できるという点があります。

文章と文章を接続するなかで感じる難しさは綺麗になりすぎて現実味がない表現になってしまうことがあると思います。インタビューやヒアリングを通して見えてきた言葉をそのまま使い表現しても、読み手の頭の中にシーンが思い浮かべづらいものになってしまうことです。それを乗り越えるために私小説のようなニュアンスをいれることで文間のつながりを自然に落とし込めるのではないでしょうか。以前自分が体験設計を学んだ時に、このニュアンスを「雑味」と表現している方がいました。これは透き通った状態ではなく文のなかにノイズにはならない濁りをいれることを意味しているのだと思います。

一方でこれを取り入れるためにたくさんの小説を読み表現の引き出しを増やすことも手段ではあるかと思いますが、全体性としてのストーリーの流れを作るために「映画」は参考になるではないかと思います。

ストーリーラインを知ること

映画のストーリーライン(物語の流れ)を知ることがなぜ重要なのか紹介します。

感情の流れを理解する:映画は感情的な流れとともに物語が展開します。UXデザインでは、ユーザーが製品やサービスを使用する際に感じる感情の流れに共感し理解することが重要です。映画のストーリーラインから、感情の起伏を自身に取り入れ、より感情的なつながりを生み出すことができると思います。

物語の構造を理解する:映画は一般的に、導入、展開、クライマックス、結末という明確な構造を持っています。UXデザインにおいても、ユーザーの旅(ユーザージャーニー)をこのような構造で考えることで、ユーザーにとって自然で理解しやすい体験を作り出すことができます。

キャラクターの深みを理解する:映画ではキャラクターの背景、動機、感情が深く掘り下げられます。ペルソナを作成する際、このような深みのあるキャラクター作りのアプローチを取り入れることで、よりリアルで共感を呼ぶ人物背景を書くことができると思います。

視覚的表現のインプット:映画は色彩、照明、構図などを通じて物語を語ります。視覚的テクニックをデザインに応用することで、より魅力的で直感的なストーリーボードや絵コンテを作り上げることができるのではないかと思います。

三幕構成(Three-act structure)

ここで映画の物語を構成する手法の一つ「三幕構成(Three-act structure)」について紹介します。
これは物語の流れ3つのパートで捉える見方で多くのハリウッド映画はこの構成を取ることが多いです。

  • Set up(物語の設定):物語の背景の設定を導入するパートです。キャラクターの紹介や文脈が共有されこの幕の最後に物語が動き出します。プロットポイントと呼ばれる物語は動き出す部分(図の最初の坂の始まり)は映画の冒頭20分で起こると、どこかの本で読んだことがあります。

  • Confrontation(対立):物語が動き出し、主人公の目的を達成するための障害に立ち向かうパートです。映画によっては順調に進みながら解決に向かっていくなかで、さらに大きな挫折を味わったり、全く別の方向から新しい課題が出てくるというような展開があったりします。後者は「A big twist」(どんでん返し)と言われたりしますね。

  • Resolution(解決):そして障害に解決にむけて最後の盛り上がりを見せるクライマックスに入るのが第三幕(解決)です。登場人物はこの大きな障害を乗り越えてエンディングへと向かいます。

さてここからは実際の映画に当てはめて見ましょう。
まずはみなさんが知っている物語「シンデレラ」

「シンデレラ」の例

第一幕ではシンデレラの生活が描かれます。ここではシンデレラと一緒に生活する継母とその連れ子である姉たちが紹介され、日々いじめられている様子が描かれます。そしてこの第一幕の終わりで城で舞踏会が開催されることを知り、自分はいけないことを嘆きます。

第二幕では魔法使いと出会い、彼女の魔法によってドレスや馬車などを授けられるが、魔法は午前0時に解けることが告げられます(第二幕のどんでん返しの伏線)
シンデレラは王子に見初められ一緒にダンスを行うが、午前0時を過ぎ焦って帰る途中でガラスの靴を落としてしまう。

第三幕、もとの生活にもどってしまったシンデレラだったが、王子はガラスの靴の持ち主を探し出します。
そして町中探しても靴のサイズに合う人が見つからないなか、シンデレラに尋ねるとぴったりあうことがわかる。王子に見出され、妃として迎えられるエンディングへと向かうという流れになります。

このように第三幕の構成とストーリーの起伏を表現するとジャーニーマップの図のように表現ができたります。
さてここまでシンデレラを例に挙げて見ましたが、他の映画にも適応しながらどのような物語が展開されているのかを理解し、ときにはストーリーのつながりを整理しながら知ることで先のシナリオを描くことに活用できると思います。

ここからはこのダイアグラムをはてはめてみながら、個人的に優れたストーリーラインと思う映画を紹介したいと思います。(重要なネタバレは伏せ字にしたいと思うので、ぜひ鑑賞して確かめてください。)

『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』 Star Wars: Episode IV – A New Hope

オペラ的王道の展開のストーリーラインをもつスターウォーズを挙げてみました。

『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』 The Nightmare Before Christmas

少しひねった世界観をもつクリスマス映画として紹介します。

『インターステラー』 Interstellar

2014年公開のクリストファー・ノーラン監督のSF映画で、同時に複数のストーリーが進行する複雑な構成が特徴ですが、プロットごとの関係性が大きなストーリーを組み立てるよい例だと思いました。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』Everything Everywhere All at Once


2023年のアカデミー賞作品賞・脚本賞など多くの主要部門を受賞した作品です。マルチバースという複雑なSF構造をアメリカに住むアジア系の家族をテーマを扱いながら展開するコメディ/アクション/ドラマです。

『スティーブ・ジョブズ』 Steve Jobs

最後にデザイナーならだれでも知っている方の映画について紹介します。
3部構成のすべてがアイコニックな発表会の直前の舞台裏の様子を写したストーリー(発表会自体は描かれないのがまた面白いです)ですが、その背景にはスティーブの自身の厳格な性格や娘との歪んだ関係性が、発表前のゴタゴタのなかの緊迫した状態で描かれていて、伝記映画ながらとても見入ってしまう演出になっています。



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