大洗枝道案内 大洗文学全集 第4巻おまけ
某ガールズ&パンツァーファンの御多分にもれず、私も大洗観光がすっかり癖になってしまっていますが、あいにくそうそう気軽に足を伸ばすということもできず、じゃあせめてということで、エッセイや小説に大洗が登場するものを読んで高ぶる欲求を抑えようとしています。
ただ読むたびに、うらやましいうらやましいうらやましいねたましいうらやましいと感情が渦巻きまして、「もしかして逆効果なんじゃないの?」と思うこともままありますが、それはそれといたしまして、再訪がかなった際には、文章で読んだ個所がどういうところなのか、足を運んでみるのも楽しみのひとつになっています。
そんな感じで、実際に大洗を舞台とするミステリと作中描写の場面を以前に紹介させていただきましたが、
その際には書ききれない、というよりは「大洗が登場します」と公言するのもどうかなあと思えたために割愛したものがありました。
とはいえ、他にいい機会もないでしょうから、以前の「大洗迷宮案内」のオマケとして今回改めて書き出させていただきます。
もちろん、あくまで大洗が大きく扱われていないというだけの話ですから、作品自体の内容や評価とはまったく無関係ですので、そのあたり念のため。
愛川晶「芝浜もう半分」
「大洗の名前が出てくるものの……」のうち一つ目は、愛川晶の「芝浜もう半分」です。
昭和50年代を舞台に、名人八代目林家正蔵が探偵役となり、落語の演目をなぞるような事件を解決に導いていく「高座のホームズ」シリーズ。その中編連作『芝浜の天女』に収録されている1編となります。
娯楽のひとつとして落語が知名度と注目を持っていた時代を扱い、ミステリと落語を組み合わせてあたかも新たな噺を展開させるようなシリーズと聞けば、両方とも大好物な私としましてはたまらないところに、そこにさらに大洗が登場すると聞いては、もうワクワクが止まりませんよ!
結果としましては、登場人物の一人が大洗で働いていた経験があるという設定のみで、特に舞台として登場することはありませんでした……
まあ、これは教えてもらったことを話半分に聞いて、よく調べもせずに読みはじめた私が悪いんですけど。
西村京太郎『十津川警部 鹿島臨海鉄道殺人ルート』
ご存知十津川警部シリーズです。
渡瀬恒彦ですね。
鉄道あるところに十津川警部ありという印象通り、しっかりと鹿島臨海鉄道も取り扱われていました。
タイトルも直球ですし、これは水戸から鹿島神宮までの路線を濃厚に扱ったトラベルミステリに決まってるじゃないですか!
まさかメインがほぼ東京とは思わないですよね……
大洗は何度か本文中にも登場していますし、十津川警部も訪れています。
ただ、
冒頭のこの場面が最も描写に文字数を割いているのですが、大洗行かれた方はご存知だとは思うのですけど、大洗駅からフェリーターミナルまでって結構距離あるんですよね。のんびり歩いたら半時間はかかるくらい。
その間の描写がすっぱり抜けてるんです。で、特に海やフェリーを見ての感慨もなく、ついでに言うとこの寄り道が別に後の物語展開にもつながるわけでもなかったり……
例えば、以前に別のオマケ回で紹介した椎名誠の『あやしい探検隊 北海道乱入』みたいに、北海道へ渡るフェリー利用するために大洗まで車で来たっていうのなら、フェリー港しか描写なくてもわかるんですが。
でもやっぱり、せめてマリンタワーくらい書いていてほしかった……
その後、十津川警部にいたっては、大洗駅に隣接している鹿島臨海鉄道の本社を訪れるだけですので、駅から外へ出ることすらありません。
さすがにこれで大洗舞台にしているとするのは憚られる。
そう判断したのも、そんなに無理のある話じゃなかったと思うんですよね。
そんなわけで、前の大洗を舞台とするミステリ紹介に、どうしてこの2作を組み込むことができなかったのか、ご理解いただけたのではないでしょうか。