山本楽志

小説、エッセイなど主に文章を書いております 行雲流酔

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マガジン

  • 大洗文学全集

    大洗が舞台として登場する本を紹介していきます。

最近の記事

ピーナッツ畑から体育館裏へ

 世界的に有名なビーグル犬スヌーピーとその飼い主の丸頭の男の子チャーリー・ブラウンたちがコミカルかつシニカル、時々シュールな掛け合いを繰り広げる新聞コミックスは、『ピーナッツ Peanuts』というタイトルで連載されていました。  チャールズ・M・シュルツの手により、1950年10月2日から2000年2月13日までの約半世紀にわたり、ほぼ休まず掲載され続けたこの作品は、アメリカのみならず世界各国の人々を魅了してきました。  私もスヌーピーたちのかわいくも時折非常に風刺的な言動

    • 新作の小説をアップしました!

       今回はストレートに告知です。  小説投稿サイト「カクヨム」にて、私も時折小説をアップさせていただいております。  それで新作が出来上がりましたので、こちらでもリンク張らせていただきます。  サムネイルですと、雑誌の新聞広告みたいにしか見えないかもしれませんが、小説です!  架空の落語家さんによる、架空のマクラの書き起こしという体にて、モノローグで自分の体験を語っています。  だから「チケットのとれない噺家さん」ということで。  冒頭ちょっと書いておりますが、実在の落語

      • 江戸アケミの声を探して

         最近は『ぼっち・ざ・ろっく!』などのロックバンドをテーマにしたマンガやアニメの人気から、日本のロックに再び注目が集まる機会も増え、思いもかけなかった名前を久しぶりに聞いてうれしくなってしまうなんてことが多くなりました。  そんななかで、私が個人的に話題に上がると無条件で喜んでしまうのは、JAGATARAとそのボーカルでフロントマンだった江戸アケミです。  私みたいな出不精の運動不足人間でさえ突き動かす圧倒的なリズムに、江戸アケミのどうしようもないからこそがむしゃらにポジテ

        • 昭和6年の女性型ロボットを追うために

           こんな本がほしかった!  井上晴樹『日本ロボット創世記 1920~1938』(NTT出版、1993)!  1920年にロボットという単語が誕生してから、いつ日本に到着し、どのように定着、変遷していったかを、新聞、雑誌、単行本に掲載された記事や広告、小説、詩、童謡などなどの当時の実物を紹介しつつ、第二次世界大戦勃発直前の1938年までを編年体形式で詳細に追っていく執念の力作です。  掲載される図版は300種類以上、しかも要所要所でカラーを含むという大変読みごたえ見ごたえの

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        • 大洗文学全集
          7本

        記事

          リソースとしての戦陣訓との接し方

           星新一といいますと、軽妙洒脱なショートショートや『声の網』などの鋭い時代批判精神による今なお古びない未来視をもった作品で、小松左京や筒井康隆とならぶ日本の黎明期SFに大きな貢献を残した巨人として現在もその名前を不動のものとしていますが、その眼差しと発想はエッセイにも活かされて多くの著作を刊行しています。 『きまぐれ学問所』(角川文庫、1989)もその一冊です。  章ごとにテーマを決め、それに沿った本を読んで感想を書くという、星新一流書評集、ブックガイドとなっています。  

          リソースとしての戦陣訓との接し方

          お江戸食肉事情

           食欲の秋!  いまだに真夏日が続くなかではありますが、暦の上での季節を優先させていただきます。  江戸末期の黒船来航を機に鎖国をとりやめた日本は、そこからアメリカをはじめとした諸国との外交を開始し、様々な西洋文化を輸入、そこには肉食も含まれており、明治初期には牛鍋が大ブームを巻き起こして食生活が一変した。  というのが教科書的な説明で、一般的にも広く浸透している考え方だと思われます。  仏教伝来以来、肉を食べる習慣を日本人は放棄していたが、外国からの影響で千年ぶりに口

          お江戸食肉事情

          台風が台風になるまで

           台風はいつ台風になったんだろう?  ウェブサイトや新聞、テレビニュースなどに掲示される天気図を見て、この夏から秋にかけて非常に特徴的な、目玉の妖怪のようないびつな同心円の塊がドンと鎮座していると、そこに台風がいて、進路次第によっては日本にやって来るということを、昔からの季節の風物詩のようにごく当たり前のように思っていました。  でも、考えてみたら、これって昔からのものでもないし、当たり前のことでも全然ないんですよね。  そもそも台風のあの形を知るには天気図が必要で、その

          台風が台風になるまで

          それでどうしてデッドプールとウルヴァリンなんだろう

           映画『デッドプール&ウルヴァリン』が公開から一か月ほど経ちまして、いまだに反響大きくにぎわっておりますね。  ただ私はMCUについてはあんまり知識の持ち合わせがないので、そういうのは詳しい方におまかせするといたしまして、多少は知っているコミックスの方のデッドプールとウルヴァリンについてをざっと書かせていただきたいと思います。  そもそもどうしてデッドプールとウルヴァリンなのか。  ごく当たり前のようにデッドプールとウルヴァリンが並んでいて、なんとなくコンビのような感じに

          それでどうしてデッドプールとウルヴァリンなんだろう

          戦中日記を読もう

           今年も終戦の日を迎えました。  昭和20年8月15日から数えて79回目。当時を知る人は少なくなりつつあり、だからこそ記録や記憶の確実な継承が望まれます。  いったい当時の人たちは戦争をどのように見て、戦局の移り変わりをどうとらえていたのか。  そこで戦中日記は、まさに記録であり記憶の集積であり、かつ多数が刊行されているので大切に読み継がれてゆく必要があります。  ただ、その刊行点数が多いことがどれから読むべきかを迷わせ、さらに日記というはじまりも終わりもない形式自体が手に取

          戦中日記を読もう

          椎名誠化する解説とSFと

           文庫本の好きなところは、値段やサイズの手頃なのはもちろんなのですが、解説が充実しているというのも大きいです。  作者以外によるその書籍についての短文ですね。  執筆や掲載状況の説明など成立に関する説明も嬉しいですし、本文でわかりにくい個所の補足、そこからの展望などは参考になります。単純に作者と仲の良い裏話でもすごくお得な気分になれます。  電車の乗り換えのちょっとした合間とか、待ち合わせで少し空いてしまった時間とか、本文を読んでいるときりが悪そうって時に読むにもちょうどよく

          椎名誠化する解説とSFと

          ゲゲゲの鬼太郎の訳者の見た幽霊

           日本のマンガが海外に翻訳されるようになって久しく、現在では「週刊少年ジャンプ」の人気作品なら日本の発表とほぼタイムラグなく英語版が発信されています。  こうした翻訳の波は、なにも現代の人気作に限ったことではなく、過去の名作にも精力的に及んでいます。  ザック・デイヴィソン Zack Davisson はそうした日本のマンガの英語への翻訳家の一人で、これまで手掛けたタイトルは松本零士『宇宙海賊キャプテンハーロック』永井豪『デビルマン』から近年の田辺剛によるラヴクラフト作品の

          ゲゲゲの鬼太郎の訳者の見た幽霊

          巨人ガルガンチュワがぺったらこを聴く日

           ガルガンチュワはヨーロッパにおける伝説的な巨人ですが、息子のパンタグリュエルともども、16世紀のルネサンス当時の風俗や世相を風刺した長編小説「ガルガンチュワ=パンタグリュエル物語」の主役にも抜擢されています。  その全5巻からなる長編小説の『第一之書 ガルガンチュワ物語』第19章に次のような個所があります。  パリを訪ねた幼少期のガルガンチュワが、ちょっとした思いつきからノートルダム寺院の鐘をひょいと持ち出してしまい、その返却を求めてやってきた人物による説得の一節ですが

          巨人ガルガンチュワがぺったらこを聴く日

          アメコミとは「ウマ娘 プリティーダービー」である

           最近アプリが2100万ダウンロードを達成し、劇場版『ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉』も公開中で、相変わらず快調のコンテンツのウマ娘ですが、今回はその内容について何かを語ろうというのではありません。そうではなく、  アメコミの読み方ってゲームアプリの「ウマ娘 プリティーダービー」を喩えにしたらわかりやすくなるんじゃないか?  という、ウマ娘をご存知のこと前提の乗っかかり記事となります。  MCUやバットマン(ジョーカー)といった映画作品の成功もあり、ここ十年ほど

          アメコミとは「ウマ娘 プリティーダービー」である

          椎名誠、北海道の朝靄の彼方にテキサスを見る

           前回少し触れた椎名誠の『あやしい探検隊 北海道乱入』(旧書名『あやしい探検隊 北海道物乞い旅』)に関連した延長戦を。 「あやしい探検隊」は、1980年に刊行された『わしらは怪しい探検隊』の好評を受けて、以来断続的に執筆の続けられている椎名誠の代表的シリーズです。  本作『北海道乱入』は21世紀に入ってから大きなメンバーチェンジを経て編成された第3期あやしい探検隊の活動を描いたものです。  基本的にはこの第3期探検隊は、掲載雑誌の関係から魚釣りをメインとしていて「雑魚釣り隊

          椎名誠、北海道の朝靄の彼方にテキサスを見る

          大洗枝道案内 大洗文学全集 第4巻おまけ

           某ガールズ&パンツァーファンの御多分にもれず、私も大洗観光がすっかり癖になってしまっていますが、あいにくそうそう気軽に足を伸ばすということもできず、じゃあせめてということで、エッセイや小説に大洗が登場するものを読んで高ぶる欲求を抑えようとしています。  ただ読むたびに、うらやましいうらやましいうらやましいねたましいうらやましいと感情が渦巻きまして、「もしかして逆効果なんじゃないの?」と思うこともままありますが、それはそれといたしまして、再訪がかなった際には、文章で読んだ個所

          大洗枝道案内 大洗文学全集 第4巻おまけ

          青馬の色は黒か白か

           問題です。青馬の色は次のうちどちらでしょう?  最近のウマ娘ブームで、現実の競走馬やレースの歴史などに興味を持つ人も増えてきているという話ですね。かくいうこれを書いている私なんかもその一人です。  実際に競走馬の駆けるレースの圧倒的な迫力はもちろん、そこにまつわる一頭一頭異なる出自来歴を持つ馬たちとそれを取り巻く人々の織りなすドラマ、奥深い話題が汲めども尽きせずに現れてきて調べる手が止まりません。  それは競走馬を離れて馬一般のことについても同様で、特にこれまで馬に触れた

          青馬の色は黒か白か