2024.7.13 黒風白雨
すっかり夏。店を閉めて、駅まで歩くとき、イヤホンで音楽を聴いていたが、イヤホンの隙間から入り込むジーーーーという声に負け、イヤホンを外して蝉の声を聴きながら帰った。
東京は連日、最高気温が34℃だとかで、来年もこんな感じならば夏は2ヶ月くらい店を休むようなスタイルにした方がいいのかも、とすら思う。こんな暑さでも立ち寄ってくださる方がいて、ありがたい。平日は、下校途中の小学生たちが「水筒の水が無くなっちゃって、喉カラカラなのでお水ください」と入って来て、ちょっと涼んでいったりすることもある。この熱帯化した東京では、学校に行って帰る、というのも大変なことなってしまっている。
ある日、夕方から雷がごろごろ鳴って、猫又坂が川となったかのように激しく雨が降りはじめ風も強かったので、さすがにこれはもう、いつもの方々もきっといらっしゃらないなと思い、普段は選ばないようなジャズをかけた。珈琲豆のハンドピックも終わっていたので、来週のパフェの仕込みもやってしまおうか、と桃のコンポートの仕込みをしつつ、リズムにのりながら作業をしていた。本当にものすごい勢いの雨で、外を歩いている人もほとんどいなかったので、店の中の様子なんて誰も見ていないだろう、と思っていたのだが、常連さんが車で店の前を通った際に偶然その様子を目撃したらしく、後日「この前のすごい雨の日、なんかノリノリでしたね。雨、好きなんですか。」と言われてしまった。3枚の窓越しに、雨の降りしきる不忍通りのようすを眺めつつ珈琲を点てていると、店内に流れるピアノの音と、外の雨の音が溶けあって、なんだか時間が止まったような気分になる時がある。客足は鈍れど、雨の日、嫌いではないです。
しかし暑すぎるのにはもう飽き飽きで、まだ7月なのかと思う。でも、ズッキーニ、茄子にトマトにきゅうりに枝豆、そしてとうもろこし、と夏野菜がたくさん並んでいるのは嬉しい。野菜といえば(?)、店を始めて、茗荷谷駅を利用するようになってから、なんだか茗荷を買う機会が増えたと思う。これはもしかして、茗荷という文字を目にする機会が増えたから?嘘みたいだけど、本当にそんなような気がする。無意識に目に触れている情報にむやみに支配されたくないし、支配したくないな、と思う。茗荷を頻繁に買ってしまう、くらいのことならいいけれど。