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〈読みもの〉灯火

cafe gのマガジン「読みもの」には、店にまつわる話あれこれや、全く関係のない話や、店内で読めるcafe g発行の季刊誌「季節のお便り」過去号の記事を再編集したものなどを掲載しています。

下記は、cafe g の「季節のお便り」過去号に掲載していた記事を再編集したものです。


灯火

 ある一定の期間、気がつくと同じ色のものばかり手にとってしまう、あるいは身につけているものがほとんどその色になっている、ということがよくある。その対象の色は、歳を重ねるごとに、環境が変わるごとに、行きつ戻りつしながら変わっていった。好んでいた色の遍歴を振り返ると、物心ついた頃から小学生くらいまでは、確か水色だった気がする。中高生になってからは、水色というほど淡くはないが、青というほど濃くもないみたいな、ちょっと白の入った青。大学に入ってからは、紺。三年生くらいからはまた青に戻った。同じ青でも、中高生までに好んでいたよりもっとパキッとした、鮮やかな青。卒業直近のあたりは黒だった気がする。社会人になってからも、しばらくは同じように黒を選ぶことが多かった。その後いつからか黒からは離れ、なぜか今身の回りに集まっているのはターコイズブルーだ。ターコイズブルーの始まりは、スマホカバーだったと思う。いや、時計だったかもしれない。と、ここでこの色が本当にターコイズブルーで合っているか不安になってきたので、色見本を見てみた。ターコイズブルーというより、藍色の中の「納戸」とか「花浅葱」という名前の色が近いかもしれない。

 とにかく、遍歴を見てわかるのは、寒色系、特に青から黒にかけてのあたりを好む自分がいるということだ。しかし、この店をやるとなった時にテーマカラーとして選んだのは「オレンジ色」だった。これは自分の中でとても大きなことだった。いつか店をやる時にはアイコンにしようと考えていた、グアテマラのフクロウの置き物「テコローテ」のオレンジ。飛び抜けた明るさが素敵な、ある芸人さんの衣装の色のオレンジ。よく晴れた日の昼下がり、太陽から降り注ぐあたたかい光のオレンジ。この店ができる前、下見に行った際に仮置きされていたスツールのオレンジ。これらのイメージが頭の中でぎゅん、と繋がって、よし、オレンジだ、と思った。さらにそこに、コーヒーやほうじ茶のブラウンや、少し明るめの木材のようなベージュを合わせよう、と、あっという間に取り合わせる色たちが組み上がった。

 その後、店を始めてからも日常的に身につけるものの色の好みは変わっていないけれど、オレンジ、ブラウン、ベージュなどあたたかみのある色で構成された店にいるおかげか、いや、店に足を運んでくださる方々があたたかなおかげか、いつも心の中に橙色のろうそくのあかりが灯っているような、そんな感覚がある。このあかりを、消さないようにしたいと思う。

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