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2023.8.31 一杯になり損ねた珈琲たちの変身

先週、雨が降ったあとに少しだけ涼しくなった日があって、店に向かうまでの道のりを久しぶりに空を見上げて気持ちよく歩きました。このままどんどん涼しくなってくれるといいのだけど、そういうわけにもいかないんだろうなあ、とちょっとうらめしく思ったりしています。これだけ暑いとどの最寄り駅からも店までしばらく歩かねばならないのが大変に申し訳なく、どんどん来てください、と言う気にはとてもなれず、週4日営業になったはずなのだけど、いつにもまして静かに営業をしていた8月でした。それでも遠くからお越しいただいた方やご近所の方々が毎週ちらほらといらっしゃり、ありがたい限りです。今日はcafe gに行こう、と思って足を運んでくださった方々にはとびきりいいことがありますように、と願って、いつも店を出る背中を見送っています。

珈琲豆を焙煎する量もじわじわと増えてきて、なんとかおいしさのピークを過ぎる前に売り切って次のロットに切り替えることができているのでいい感じになりつつあるなあと思っています。これから涼しくなって、ホットコーヒーや豆売りが増えてくるともっと焙煎できる、と思うとわくわくします。涼しくなったら焼きたいと抱えている豆がたくさんあります。
その一方、焙煎量が増えて困っていることもありました。それは飲用に適さないため選り分けた生豆・焙煎豆や、焙煎時に出てくるチャフと呼ばれる皮の処理です。cafe gでも弾いた焙煎豆に関しては挽いて袋に入れて匂い袋として配っていましたが、それ以外の部分は活用の場を見出せずにいました。選り分けた豆も、チャフも、ほとんどの珈琲屋さんではたいてい特に使われずに捨てられている(またはハンドピックをしないから発生しない)と思われます。農学部出身の店主は、せっかく地球の裏側からわざわざ運ばれてここまできたのに捨てられるなんてあんまりだ、農作物はできるだけ端っこまで捨てずに使い切りたい、という気持ちがあり、どうしたもんかなあ、ととりあえず弾いた豆やらチャフやらをためておいていました。調べてみたところによると、一部の大企業などではチャフや抽出かすなどを堆肥に混ぜ込んで再利用したり、紙ナプキンに再生したり、はたまたペレット化して代用プラスチックにしているところもあるようですが、cafe gでは業者にお願いして堆肥化・製品化して採算が取れるほどの量が発生するわけではないし、現実的ではありませんでした。しかし、8月に入って、店にいる時間が増えたからかこの頃いろいろとひらめいて、小さいからこそできることをちまちまとやろうと思い、これらの貯めておいた豆やチャフたちをいろんなものに生まれ変わらせて使ってもらえるように仕立てたり、抽出方法を工夫してアレンジドリンクやお菓子の材料として使えるようにしたり、ということを試み始めました。

まず、焙煎前に弾いた生豆たち。こちらは店内に「コーヒー豆でマラカスを作ろう」というコーナーを作って、楽器の材料として使ってもらうようにしました。マラカスというか正確にはシェイカーですが(元打楽器担当による丁寧な注釈)、透明なケースに好きなビーズなどと一緒に生豆を詰めるだけの、小さくて簡単な楽器です。こちらはちびっこ、特に乳幼児に人気。けっこういい音がします。店主もあまりに暇で誰もお客さんがいないとき、ちゃっちゃっちゃ……と振ってみたりして気を紛らわしています。

もうひとつ、このマラカスの他にも、珈琲豆のお手玉を作りたいと思っています。こちらはフリーコーナーだけでなく、気に入ったら買って家で遊ぶこともできるように、せっせと布を切ったり縫ったりしているところです。これまた中身が小豆やペレットのお手玉に負けない、いい音がします。

次に、焙煎後のハンドピックではじいた豆たち。こちらはお茶パックに挽いた豆を詰めて紙袋に入れた簡易的な匂い袋として配るのは続けつつ、そのほか目づまりして交換したネル布を使って、もう少し長く香る匂い袋を作りたいなと考えています。そろそろネル交換のタイミングなので、近いうちに珈琲豆とクッキーが並んでいる棚にいくつか現れる予定です。試作品はこんな感じ。餃子みたいでかわいいと思うのですがどうでしょうか。

最後は、チャフと呼ばれる、焙煎時に大量にでる皮の使い道。

チャフはシルバースキンとも呼ばれる珈琲豆にくっついている薄皮で、焙煎時に自然に剥がれたり、焙煎後に風で飛ばして珈琲豆と分離させたりします。銘柄にもよりますが、一回の焙煎で結構な量のチャフが出ます。抽出時にチャフ部分が混じると、えぐみや渋みのもととなると言われていますが、飛ばされて分離されたチャフをこのまま口に入れるとナッツのような香ばしさがあります。もしゃもしゃした食感をどうにかすればお菓子のアクセントの一つとして使えたり、珈琲抽出の温度だと美味しくないかもしれないけど、設定条件を変えればおいしく飲めたりもしそうだなあとポテンシャルを感じつつも、上手な使い道に辿り着けずにいました。まず10度ごとに温度を下げたお湯で、浸す時間も色々試しましたが、どれも不味くはないけど特段おいしくもない、微妙な風味の液体になるのです。捨ててしまう部分の再利用とはいえ、おいしくして出したいのでこれはなんか違うなと思いました。水やお湯ではどうにもなりそうにないので、次に牛乳に浸してみることにしました。シリアルを食べた後の牛乳がおいしい、というような感じで、この香ばしさや甘みだけが抽出されたらいいなあと考えました。

結果としては、これが大正解でした。心配していたえぐみや渋みはほとんど感じられず、ミルクコールドブリューのカフェオレと、ロイヤルミルクティーの中間のような、面白い味がします。これをそのまま出すのか、スパイスを加えてチャイのようにするか、またはパンナコッタやプリンなどのミルクを使うおやつに変身させるか、どうやってお出しするのがたのしいかなと目下試行錯誤中です。直近で、9月末の中秋の名月のあたりにお月見セットをお出しする計画があり、そこに盛り込まれる可能性が大きいです。たぶん、チャフミルク(たったいま命名)を出している店は無いと思います。どうぞおたのしみに!

また、珈琲豆のロット切り替え回転率をより上げ、常にベストな状態の珈琲をお出しできるようにするために、これまで以上に積極的におやつにも珈琲を材料として使っていこうということで、今日から「コーヒーゼリーのパフェ」が始まりました。

自家焙煎ネルドリップの珈琲を使っているのはもちろん、cafe gの定番おやつ(カステラ、グァテマラのクッキー、バニラアイス)を一度に味わえるという、いいとこ取りのパフェです。
コーヒーゼリーのパフェは、涼しくなって珈琲がよく出るようになったらおしまい、ということでひとまず9月いっぱいのつもりです。こちらもぜひお楽しみいただければ嬉しいです。

それでは9月も、cafe gで会いましょう。

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