こんな大人バレエ教室に入りたい
大人リーナ、はじめました
思い立ってバレエを習い始めた。60代にして生まれて初めてのバレエ。
我ながら「やるなぁ」と思う。いや、ホントに。
大人になって初めてバレエを習う人、子供の頃に習っていたのを再開する人、これらをまとめて大人リーナと呼ぶそうだ。
コロナ禍のon-lineレッスンを契機に大人リーナが増え、今や注目のマーケット。特に、大人になって初めてバレエをする人は、今後の伸びしろとなるはず。渦中の一人として思うことを書く。
なぜバレエ?
大人になって初めてバレエを習う人たちの動機は、
小さい頃からの憧れのバレエに勇気をもってトライした人
身体を鍛えようとサーチしてバレエにたどり着いた人
に分かれる。
私は2番。スイミングやピラティスが好きで途切れ途切れではあるが、続けている。両方に共通しているのは、身体をしなやかに伸ばす動きをすること。そして、外側の筋肉ではなく内側の筋肉を使おうとすること。この志向の延長でバレエをやってみようと思いついた。
このような考え方をする人は意外と多く、同じ教室にいる人もピラティスからバレエに転換している。また、これから始めようと思うのだけどと私に相談してきた知人は、バレエの目的を「しなやかな動きができるように」と言っている。
ゴールは?
動機がちがえばゴールも異なる
動機1の人は、ポワントがはけるように→発表会に出たいと展開していく。動機2の人は、ストレッチやバーレッスンを通して、自分の身体の動きが変わっていくことに喜びを感じる。
私は、子供の頃にバレエに憧れたことはないが、大人になってバレエを観るのが好きになった。音楽と身体表現の融合がなんとも贅沢で美しいと思う。コンテンポラリーダンスの抽象度の高い表現も美しいと思う。バレエは好きだし、表現者としてのダンサーへのリスペクトはあるが、自分がダンサーになりたいわけではない(ここ、ポイントです)
ストレッチもバーレッスンも、自分の身体の動きを感じながら美しい動きができると、とてもうれしい。しなやかな動きができた日には、レッスンが終わって家に帰って鏡の前で再現したくなるほど(先生の指導がないので、レッスンでできたほどにはできないのだけれど)
最大の関心事は身体を傷めない事
そんな私の最大の関心事は身体を傷めないこと(ここ、ポイントです)
運動をやっていると、必ずどこかを傷めることになる。私も20歳の時から左ひざに故障を抱えている。また、これまでの生活習慣の結果として骨盤の外旋はとても苦手だ。長く生きていると自分の弱いところや、苦手を理解する。弱点をわかったうえで運動をするというのは、大人の運動の1つの特長だと思う。「鍛えればできるようになる」は通じない世界だと理解している(ここも、ポイントです)
また、誰かと比較することもあまりない(全くないわけではないけれど)。誰もがいろんな生活を経て今に至っているのだから、比べることに意味はあまり感じない。あくまでも自分が感じることが、満足度を測る指標となる。「○○ができるようになること」ではなく、「身体が伸びて気持ち良い」「日常の所作がしなやかになっているかも」を求めている。
そしてずっとバレエを好きでいられること
大人リーナの一人に、矢野顕子さんがいる。
彼女はコロナ時に64歳でバレエを始め、プライベートレッスンでいまもバレエを続けている。そんな彼女がレッスンに思うことは「ずっとバレエを好きでいられること」なのだそうだ。
わかる気がする。
怪我をしたり、誰かと比べて伸び悩んだりすれば、いずれバレエが嫌になってしまうだろう。せっかく始めたバレエ、身体を気持ちよく動かすこの時間が長く続くと良いなと思うのは私も同じ。
技術の上達は、結果としてあればよいが、なくてもかまわない。
この気持ちの良い時間が長く続くこと、バレエっていいなと思う気持ちが長く続くこと、これがとても大切だ。
だから、こんな教室がいい
私のような生徒にとって望ましい教室は、入会者にこんなアプローチをしてくれる教室だ
<入会時>
・バレエを習おうと思った理由を聞き、それぞれの目的を把握する
・身体の中で過去に痛めた部位の有無を確認
・その人のゴールの確認(何ができるようになるとうれしいのか)
*身体を傷めないバレエレッスンというアプローチはどんどん増えてきているように感じる
<レッスン時>
・弱い部位に負担がかからないような姿勢のアドバイス
(正しい動きをしていると負担はかからない。誤った重心の置き方をすると身体を傷めることになるので、その点を的確にアドバイスしてほしい)
<レッスン終了時>
・家で寝る前にできるレッスンのレクチャー
・センターレッスンの流れを書いたペーパーの配布(サイトでもOK)
・レッスン終了後に家でやった方がよいクールダウン方法の説明
大人バレエの先生へのお願い
大人バレエの先生たちは、小さなころからバレエを習い、プロとして舞台に立っていた方が多い。
そんな先生たちに最初に理解いただきたいことは、生徒たちにとってのバレエは、先生にとってのバレエと位置づけが大きく異なるということ。
バレエを習おうと思う人たちの目的やゴールを知ったうえで、ぜひ、生徒たちが「バレエをずっと好きでいられるように」伴走していただけるとうれしい。
バレエを習っていれば、バレエを観たいと思う人も増えるだろう。また、年齢上限のあるバレエダンサーの次のキャリアとしてもバレエ教室は増えていくとよいと思う。広義のバレエファン層が増えることが、バレエ全体にとってプラスだろうと思う。
私はスポーツジムのバレエレッスンと、バレエ教室のレッスンを受けている。ありがたいことに、両方のレッスンともに不満はないが、私の周囲にいる「バレエ習ってみようかな」と言っている人たちと、世にたくさんある大人バレエ教室の広報を見ていると、マッチングが成立するところばかりでもないように思う。
今はバレエにとって1つの転換期だ。
大人リーナを理解し、彼らの意図に沿ったレッスンプログラムを組んでくれる良い先生・良い教室が増え、
バレエが、”子供のお稽古事”から、大人が身体を鍛え・整える際の”選択肢の1つ”として広く認知されていくことを、バレエファンの一人として強く願っている。
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