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【北大阪環状モノレール】第2回 構想の中心地、茨木市の概要と駅が計画されている地域の状況(その1)
第2回では、 北大阪環状モノレール構想の中心地、茨木市の概要と、構想の
中で駅が計画されている地域のうち、南茨木駅から忍頂寺駅までの状況について見ていきたいと思います。
1:茨木市の概要
市街地化が著しい南部と里山が広がる北部
茨木市は大阪府北部の北摂地域に位置しています。大阪平野の北端から北摂山地にかけて市域が広がり、面積は76.49平方㎞、東西10.07㎞、南北17.05㎞と南北に長い形をしています。
大阪平野の北端に当たる市の南部は、大阪と京都を結ぶ幹線交通路上に位置していることもあり市街地化が著しく、JR茨木駅から阪急茨木市にかけての地域が市の中心部となっています。
一方、北摂山地に入る北部地域は、里山の風景が広がる自然豊かな場所です。
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茨木市の人口は増加傾向にある
茨木市の人口は、29万223人です。これは、府内人口の3.31%にあたります。大阪府下では8番目の人口規模です。ちなみに、7位は高槻市、9位は八尾市です(下の図・表を参照)。
人口減少社会と言われていますが、茨木市の人口は増加傾向にあります。令和に入ってからで見てみると、2019(令和元)年に285,866人だったものが、2023(令和5)年には290,074人と約1.5%増加してます。そして、直近の2024(令和6)年4月の時点で290,223人となっています。
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2:構想の中で駅の開設が予定されている地域の状況(その1)
「北大阪環状モノレール構想」の中では8つの駅が示されています。駅ができるとされる地域はどのような場所なのか、今回は南茨木駅から忍頂寺駅までの状況を見ていきたいと思います。
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茨木市と隣接市町との境をなぞる環状線といえる
<出典>北阪環状モノレール準備室ホームページ
南茨木駅
「北大阪環状モノレール」の起点は、阪急京都線と大阪モノレールが交差する南茨木駅です。既にある阪急と大阪モノレールの南茨木駅に近接する形で駅が作られるものと思われます。
阪急と大阪モノレールの南茨木駅の1日平均乗降客数は、阪急が約34,000人、大阪モノレールが約27,000人、合計で約61,000人です。
1970年に大阪万博の会場へのアクセス駅として阪急南茨木駅が開業しました。その後、1990年に大阪モノレール南茨木駅が開業しています。
駅前には阪急電鉄が1970年代半ばごろに開発したマンションが立ち並んでいます。
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茨木シティー駅
南茨木駅から右回りに進むと、JR茨木駅と阪急茨木駅のちょうど中間にあたる場所に茨木シティー駅が作られるものと思われます。
ここには茨木市役所があります。また市役所の向かいには2023年に「茨木市文化・子育て複合施設 おにクル」がオープンしました。
「おにクル」は市民と行政が対話を重ね、未来の茨木を育てるというコンセプトのもと建設されました。ホール、図書館、こども支援センター、屋内こども広場、市民活動センター、プラネタリウムが入っています。
茨木シティー駅が計画されている場所は、茨木市の政治、行政、文化の中心です。また、周辺には茨木神社や古くからの商店街もあり、茨木市の歴史と活気を感じられる町のメインストリートでもあります。
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茨木城の搦手門(からめてもん)を移築したものと言われる
茨木城築城の経緯はよくわかっておらず、
南北朝時代の建武年間に楠正成によて築城されたと言われている
茨木城は1616年に江戸幕府の一国一条例により取り壊された
<出典>Wikipediaより
Saigen Jiro - 投稿者自身による著作物, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=67219064による
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<写真提供>茨木市観光協会(ホームページより)
西河原駅
西河原は安威川と茨木川が合流する付近にあります。この付近に西河原駅が作られるものと思われます。
西河原には、元々あった樹木や竹藪を活かした大規模な西河原公園があります。公園には野鳥が集まり、春には桜、夏にはホタルと、四季を楽しめる自然が残されています。
付近を京都市と西宮市とをかつての西国街道をなぞるように結ぶ、国道171号線が通っています。
2018年には、地区の南端を通るJR京都線上にJR総持寺駅が開業しています。JR総持寺駅の1日平均乗降客数は約17,000人です。
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山手台サニータウン駅
山手台サニータウン駅は、山手台(茨木)サニータウン内に作られるものと思われます。山手台は、1970年代に関西電力系の企業により開発が始められました。現在、地域の人口は約8,500人です。
山手台は茨木市中心部から約7㎞。JR茨木までバスで約40分です。バスは朝ラッシュ時にはおおむね10分間隔で運転されていますが、日中は30分間隔となります。
初期に開発されたエリアを中心に住民の高齢化が進んでいます。
2022年秋に地区内唯一のスーパーが突然閉店し、買い物難民の問題が発生しましたが、その後、新たなスーパーが進出し、買い物難民問題は解消しました。
山手台ニュータウンは2004年にまちびらきした彩都(国際文化公園都市)の産業、業務を主体とした東部地区に隣接しています。山手台1丁目に隣接する彩都もえぎには、資生堂の高級スキンケア製品などを製造する同社の大阪茨木工場、西日本物流センターがあります。
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安威川ダム駅
安威川ダム駅は、安威川ダム周辺に作られるものと思われます。
安威川ダムはロックフィルダムで、安威川下流域に広がる流域各市を洪水被害から守ることを主な目的として建設されました(下記の【コラム1】をご覧ください)。その他、上水の確保、小規模発電なども検討されています。
安威川ダム周辺では、ダム湖と周辺の自然環境を活かした「ダムパークいばきた」が2024年4月に一部オープンしています。2024年12月には、日本最長となる長さ420mの歩行者専用吊り橋が開通する予定で、北摂の新たな観光スポットになりつつあります。
このあたりも彩都東部地区に隣接しており、彩都はなだには新名神高速道路へのアクセスの良さを活かし、マルチテナント型の大規模な物流倉庫が立地しています。物流倉庫の中には、ユニクロの国内2番目となる大規模なEC専用の自動倉庫「ユニクロ 西日本EC倉庫」もあります。
ダムパークを訪れる観光客や、物流施設関係者の利用が期待できる駅です。
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中央コア型ロックフィルと呼ばれる構造。堤高76.5m 堤頂長337.5m
<写真提供>大阪府(府ホームページより)
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【コラム1】安威川ダム建設のきっかけとなった北摂豪雨災害
安威川にダムを建設するきっかけとなったのは、1967(昭和42)年の北摂豪雨災害です。
安威川流域は、同年7月9日の一日間で255mmの集中豪雨に見舞われました。そのため安威川が氾濫し、市街地では内水氾濫も発生しました。この豪雨による被害は、死傷者61名、全半壊した住宅41戸、浸水した家屋約25,000戸、冠水した田畑約1,500ha、河川の堤防決壊12箇所、橋の被害13橋と大規模なものになりました。
この豪雨を契機に流域関係5市より、ダムによる洪水調整の要望が出され、安威川ダム計画が始まりました。しかし、ダム建設には反対運動もあり、計画への理解を得るのに時間を要しました。
豪雨災害から47年を経た2014年に本格的なダム建設工事に着手し、2023年9月にダムの供用が開始されました。
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写真は茨木市沢良宜付近の状況
<写真提供>大阪府(府ホームページより)
忍頂寺駅
安威川ダムから、さらに北摂山地の中に入ると忍頂寺駅です。
忍頂寺は茨木市の北端に当たる地域です。地域の住民は100名ほどですが、茨木市の忍頂寺スポーツ公園や青少年野外活動センターがあり、茨木市民の憩いや、野外教育・研修の場所となっています。
地名となっている忍頂寺は真言宗の寺院で、平安時代前期の創建と伝えられます。北摂のハイキングスポットとして有名な竜王山の入り口でもあります。
南西へ3kmほど離れた千提寺は隠れキリシタンの里として知られ、教科書でおなじみのフランシスコザビエルの肖像画が発見された場所です。同地には茨木市立 キリシタン遺物史料館があり、発見された遺物など歴史的資料を展示しています。
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<出典>Wikipediaより
Kansai explorer - 投稿者自身による著作物, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6060325による
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現在、この肖像画は神戸市立博物館に所蔵されている
千提寺周辺はかつてかつてキリシタン大名として有名な高山右近の領地だった
1926年には、千提寺をローマ教皇使節一行が訪問している
<出典>Wikipediaより・パブリックドメイン
【コラム2】忍頂寺周辺の限界ニュータウン
茨木市ではありませんが、忍頂寺付近には茨木台ニュータウンや北大阪ネオポリスなど、都心回帰、地価下落、高齢化といった流れの中で過疎化が進行し、限界ニュータウンと呼ばれるようになった住宅地があります。
茨木台ニュータウンでは、近年、低廉な地価を逆手にとり、セカンドハウスやリモートワークなど、静かな環境を活かし楽しめる場所としてPRし、新しい人を呼び込もうとする動きがあります。
バブル期の負の遺産と見なされがちな限界ニュータウンですが、歴史を踏まえつつ、時代を捉え、空き家、空き地、そして「限界ニュータウン」に新しい価値を見出そとする動きに注目が集まっています。
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茨木台ニュータウン、北摂ローズタウン、北摂バードタウンは京都府亀岡市に位置する
北大阪ネオポリスは大阪府豊能町に位置する
次回は、 構想の中で駅が計画されている地域の続き、彩都西駅からJR茨木駅までの状況について見ていきたいと思います。
参考情報
北大阪環状モノレール準備室ホームページ