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外に出た女【サウナのサチコ『裸の粘土サウナー』第25回】

サウナ支配人や熱波師をかたどった粘土造形を手がけるクリエイターにしてサウナー・サウナのサチコのサウナ訪問記。「ととのった」と感じるまで半年かかったという不器用サウナーならではの独自目線で、サウナ施設とそこに働く人々の魅力を切り取ります。

「妹に会いたい」母がそう思っているのは知っていた。でも一緒についていくのが面倒で、なんだかんだと理由をつけてはぐらかしてきた。しかしそうしているうちに母は年を取り、足が悪くなり、体力がなくなってしまった。やがて母自身もその言葉を口にしなくなった。

母には妹が3人いる。母だけが東京に出てきて、残りの姉妹は生まれ育った町に今でも住んでいる。母はもう10年以上、妹たちに会っていない。妹たちも年をとって体調が思わしくないと聞く。これ以上月日が経てば、母は二度と妹たちに会えなくなるだろう。そこで私はとうとう、母を連れて母の故郷に一緒に行くことにした。

故郷と言っても新幹線で1時間と少しのところ。昔と違って駅にはエレベーターがあるし、足の悪い母でもなんとかなるだろう。そう母に言い聞かせると、初めは躊躇っていた母も妹たちに電話をかけ始めた。
思い立って二日後、私と母の日帰り旅行は決行された。

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