高い理想と駄目な自分
勤労感謝の日でお休みなんですが、ある人のために残しておきたいことを書いておきます。
◆できない人間だからこそ見えること
以前にも書きましたが、こう見えて私は本当に怠け者でダメ人間です。
プラモデル作りはある意味仕事の一部ですが、その仕事ですら、モチベーションや体調のせいにしてちゃんとできなかったりするクズです。
例えばプラモデル作成一つとっても、どうやったらうまく、かっこよく作れるんだろうからはじまって、とりあえず切り刻んで、貼り付けて、盛って、そして最後は放り出す。
なぜ上手く作れないんだ。コンスタントに作れないんだ。
社会人になった当時も、同じように周りと比べて自分はなんでこんなに仕事ができないのか、本当に胃に穴が開くほど(正確には開く寸前まで)悩みました。
でもこんなクズだからこそ、のたうち回って苦しんでいる藪の中で、何かひかるものがチラリと見えたりする瞬間がありました。
それは、「難しそうなミッションは、細かく分割することで上手くこなせることがある」ということです。
◆大谷選手のマンダラチャート
大谷翔平選手が大リーグで大活躍しているのを、色んな気持ちで観ている方も多いと思います。・・・え、私ですか?
・・・私はめちゃくちゃ嫉妬してます。
様々な困難の中、あんな活躍ができるスーパーマンが本当にいるんだろうか、と思ってしまう。そして、どうやったらあんな風になれるのか、と思うわけです。
いい歳して、大人げなく息子のような年齢の彼にメラメラと嫉妬の炎を燃やしています。実に情けないし恥ずかしいですが、自分が彼と同じ年のころはあんな風に出来なかった。だれか彼の秘密を教えてくれ。
・・・でもご存知の方も多いと思いますが、意外に答えは簡単で、その秘密の一端は先述の「マンダラチャート」というものにありました。
このマンダラチャート、これはひとことで言語化すると「課題の細分化」です。
つまり大谷さんは、理想の自分に近づくため、今のダメな自分の課題を言葉で細分化して明らかにしようとしたんだと思います。
その結果、漠然とした将来の目標を「課題の細分化」を通してひとつひとつ可視化していき、順番にそれらを克服していったんですね。
◆模型の改造の細分化
もちろんマンダラチャート作ればだれでも大谷選手のようになれるのか?といったら実際はとても難しいんですが、理想の自分とは程遠い、ダメ人間の私の課題の解決くらいなら多少役立ちます。
例えば模型作りの基本は表面処理だ、とよく言われます。
これを文章で細分化してみましょう。まずは小見出し。
〇昔のキット「アオシマ 合体ロボット ザンボット3」の場合
(1)部位のサイズや形状、関節部分などを改造
(2)180番~400番のサンドペーパーで合わせ目や表面を均す処理
(3)600番~1200番のサンドペーパーで表面処理して塗装の下地を作成
(4)塗装
これが大体の小見出しです。
そしてこの小見出しの下に、より細かい課題が紐づいてきます。
具体的には「(1)部位のサイズや形状、関節部分などを改造」の下には、
(1-1)頭部のサイズと形状をジャンクパーツとパテを使って変更
(1-2)胸部の形状をプラ板で変更
(1-3)腕の関節を別の関節パーツを使って置き換え
・・・等というような感じです。
もっと細分化すると、部品ごとにそこで使用するツール等、当てはまるものを見つけることも課題の克服に繋がっていくので、道具探しも大事なわけです。
最適な道具がなければ買わなくてはならないし、使いこなせなければ練習しなければならない。
これは細かく課題を明らかにして、様々なアプローチから模型の完成に必要な課題をひとつひとつ克服しているわけで、ある意味大谷さんのマンダラチャートと全く同じです。
◆ダメな自分と向き合え
誰でも上手くできる人になりたい、と思います。仕事も、模型作りも。
じゃあどうやって?という疑問に答えるには、今自分に何ができているか、そして何ができていないか、を細かく知る必要がある。
これは、例えば模型の場合、他人が上手く作っている動画を何百本観ても、絶対に知ることはできません。
かっこいい模型をどれだけ見ても、うまく作るまでの動画をどれだけ観ても、上手くはなりません。
なぜなら、今の自分のスキル、課題の細分化がされていないからです。今の自分と真っすぐ向き合っていないからです。
高い理想を持つことは大切で、こうありたい、こんな風に作りたい、という気持ちが無ければ実現は難しい。だけど、多くの方が挫折してしまうのは、その途中で「ブレる」から。
具体的には、ちゃんとした道具やマテリアルが無いのに、模型誌を読んでキットをニッパーで切り刻んだ幼少期のように、改造に必要なツールが揃っていない状態で改造を行えば、当然失敗する。これが結果として「ブレる」理由、挫折する理由です。
もっというと、動画を作ってる方の道具と同じものを使っても、全く同じものは作れません。これはなぜか。
それは今の自分のスキルを把握しないまま、今の自分に合わないツールを使ってしまっているからです。
でも、これだけ分かっていながら、私は未だに上手くできない。
残念ながら今の私の年齢では、作品作りに置いて若い皆さんの目標意識に到底及びませんし、スキルアップも知れているでしょう。だから、若い皆さんには早く気が付いていてほしい。
高い理想を目指すには、まず今の自分を知ることから。そして漠然と高みを目指してはいけない。大谷選手のマンダラチャートはそう私たちに語っているんです。