トップ座談会「コロナ禍の戦略」VOL.2
<上毛新聞 2020年10月30日掲載>
座談会の2回目は、コシダカホールディングスの腰高博社長ら11人が「コロナ禍の戦略」をテーマに、価値観の変化やオンライン利用の促進などについて意見を交わした。(敬称略)
心意気と信念が大切
腰高 カラオケ店は、まさにコロナの直撃業種。国内全店舗を休業した影響で4、5、6月の売り上げは大幅に減少した。今も厳しい状況が続いている。こうした経営危機の時は、経営者の心意気と信念、モチベーションが全てで、社長の心が折れた瞬間が倒産だ。
今はとにかく、「耐えて耐えて乗り切るんだ」と自らを奮い立たせている。やる気がうせている従業員も散見され、これは間接的な2次被害だ。「大丈夫だ。やり抜くんだ」と従業員を鼓舞している。ポジティブな気持ちを保つことに続き、大事なのは資金を集めること。銀行から借り入れて、この嵐が何とか収まるのを待つしかない。
将来見据え対策期間
大竹 建設業界でコロナ禍の影響が数字に表れてくるのは来年、再来年と予測している。テレワークの推進でオフィス需要が減ると、受注が減少する可能性がある。コロナ禍前から長期的に人口減少による建設需要の落ち込みが見込まれており、将来起こりうることが今、起きていると捉えている。
バブル崩壊やリーマン・ショックが起きた後に、建設業界内に何が起きたか知らない若手もいる。全国で会員企業が半減したのだ。同じ轍(てつ)を踏まないよう当時の情報を業界各社で共有し、教訓を生かしたい。コロナ禍は外部要因だと泣き言を言うのではなく、将来に備える予行演習、チャンスだと考えている。
持続可能な社会支援
岩井 世の中いろいろ、人生いろいろ。長い目で見れば、コロナ禍で大変だったな、という感じで振り返る時がきっと来る。逆境は次の進歩につながる。困難な状況に打ち勝ってきた人こそが、これからの社会をつくると信じている。
農産物直売所や農業生産、再生エネルギーを手掛ける当社の業績は好調だ。将来を見据えると、持続可能な社会に役立つ仕事を一生懸命しないと駄目。食料やエネルギーに関わる仕事は世の中に必要で、社員には今後も大丈夫だと伝えている。10年後、さらに伸びている企業になるよう、農業投資を進める。未来に向け、若手農業者の育成にも力を入れていく。
きめ細かな対応必要
柴崎 学習塾を県内と埼玉で営んでいる。生徒が入ってくる春先の書き入れ時とコロナ禍が重なり、生徒募集でかなり苦戦した。学校休校で塾も対面授業は厳しくなり、オンラインでの授業に切り替えた。生徒の目の前で授業をするのと違って、生徒の状況が見えづらく、指導上の弱点がある一方、送迎の必要がないため支持を得られる部分もある。
今後の塾経営は授業のほか、カウンセリングや勉強時間の管理で、よりきめ細かい対応が必要となる。保護者と連携を密にしながら子どもとの接し方を助言したり、どんな勉強をするか1週間ごとに計画を立てる指導をしたい。こうした対応はオンラインの活用で統一化できそうだ。
地域社会貢献に誇り
江黒 当社のドラッグストアには2、3、4月、非常に多くのお客さまの来店があった。しかし、求めているマスクや消毒用アルコールの在庫がなく、お客さまに本当にご迷惑をおかけしてしまい、スタッフは日々応対に追われてしまった。
身体的、精神的にも負担が大きく、スタッフを激励するため各店を回り、「これだけ地域の方から頼りにされているのだから、地域のために使命を果たそう」と声を掛けた。従業員の働く環境を整え、地域社会に貢献することの誇りを伝えるのが経営者としての一番の仕事だと、コロナ禍を通して改めて感じた。今後も地域社会から頼られる企業を目指す。
前橋をICTの聖地 金井
金井 当社のIT業務受注量は、9割が東京。テレワークを推進することで、東京の仕事を群馬でもできるようになった。こうした新たなビジネスモデルがコロナ禍をきっかけにスムーズに進んでいる。
政府のデジタル庁創設や中小企業のIT化推進で、中長期的にはIT投資が増えると想定している。腰高社長が取得に尽力したJR前橋駅前のアクエル前橋に入居する新たなオフィスに国内外の優秀なエンジニアを集め、日本中の仕事、世界中の仕事を集めることで前橋をICTの聖地にしたい。子どもたちがプログラミングの楽しさを体感する活動も行い、群馬で仕事ができる環境を整えたい。
商品や事業開発に力
沢浦 県内外で生産した農産物を加工、販売している。コロナ禍による巣ごもり需要で受注が多く、一時的にバブルのような状況だった。今年は、菅平(長野県)の農場の事業譲渡を受けた。レタスを例にすると、菅平のほか、群馬、青森、静岡、岡山の5カ所で生産し、年間を通しての提供が可能となる。産地の分散化で長雨など天候不順時に補完し合える。
機械開発も進めており、ミニトマトを計量してカップに詰める機械を既製の機械を活用して組み立て直し、大幅にコスト減を図った。商品開発や事業開発に力を入れるとともに、農業生産をより強固にすることが将来に向けた目標だ。
外飲みで感動体験を
有馬 アルコール飲料の製造販売をしている。飲食店休業による業務用ビールの影響が大きく、4月に激減した後、徐々に戻ってきてはいるが、いまだ家庭用ビールの挽回があってもカバーできていない状況だ。
コロナ禍で人の動き方や考え方、価値観が大きく変わった。この変化を捉える必要があり、デジタルを駆使して顧客の理解を深めたい。家飲みが広がる中、外飲みが「感動体験の場」であることがますます重要となってくる。健康を意識した商品開発にも力を入れたい。環境に優しく、社会に貢献していると消費者から信頼を得られるよう、「やってみなはれ」の創業精神で今後もチャレンジしていく。
地元貢献できる商品
永井 日本酒業界も大打撃を受けている。日本酒メーカーの6代目で、かつてない売り上げダウンに直面している。そんな中、SDGsの観点から尾瀬のミズバショウを守る環境保護のプロジェクトを立ち上げた。有名アーティストとコラボした新商品の開発と連動し、売り上げの5%をプロジェクト資金として寄付するなど、地元に根差した企業として前を向いて頑張っていきたい。
コロナ禍前は、海外の著名なシェフやソムリエに会うため海外出張が多かった。渡航が難しい今は事前に商品を送り、オンラインでテイスティングコメントを聞ける。これまでに培った人間関係が生きている。
「信頼の残高」増やす
田子 私ども税理士事務所の理念は、「中小企業の一番のパートナーになり、ともに成長していくこと」。コロナ禍の非常時こそ、業務を滞らせず、お客さまに合った情報を提供し、経営の役に立てるようにと努力した。結果として、お客さまも順調に借り入れや給付金申請ができ、私どもが大切にしている「信頼」の残高を増やすことができた。
今後も変化に迅速に対応し、お客さまと一緒に明るい未来をつくるための会計を提供し、パートナーとして長い目で見た適切な提案をし、ともに成長していきたい。ビジネスの場での女性活躍の支援も継続して行いたい。
平時に備え体力増強
守田 「もったいない」をビジネスにする会社で、リサイクルショップを中心に4事業部17業態で運営している。コロナ禍の影響を受け、大きく二つのことを社内で取り組んだ。ネット販売を全店で一気に加速したほか、スタッフに明るく元気に楽しく働いてもらうためオンライン日報を考案した。
日報はお客さまへの改善提案などを報告し、内容に応じて月単位で百点満点中、何点取れるかゲーム感覚で楽しめる方式。スタッフには、コロナ禍は高地トレーニングだと伝え、「平時に戻れば、鍛えた体力が売り上げを押し上げ、給料も上がる」とやる気を高め、自らも奮い立たせている。
■ファイナルステージ/12月5日(土) ヤマダグリーンドーム前橋 入場無料 事前申し込みが必要です 申し込みはこちらから