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群馬イノベーションアワード2021・トップ座談会(5)将来見据えチャレンジ

座談会の5回目は、座長の岩井雅之ファームドゥグループ代表ら10人が、「Withコロナ・Afterコロナにおける、わが社のイノベーション」をテーマに、5年先、10年先を見据えた新たなビジネスの可能性や取り組みなどについて意見を交わした。

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2021年11月26日 上毛新聞掲載

再エネで農業推進 岩井氏

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岩井 雅之・ファームドゥグループ代表
 いわい・まさゆき 1954年、富岡市生まれ。94年に脱サラし独立。農業資材販売のファームランド設立。グループ企業3社を経営し、農産物生産販売、太陽光発電などを手掛ける。

岩井 農産物直売所、農業生産、再生可能エネルギー事業を展開している。国連の持続可能な開発目標(SDGs)に沿い、未利用資源を活用する環境配慮型有機農業に力を入れている。
 畜糞(ふん)や竹を肥料や飼料に活用し、野菜で昆虫を飼育して次世代のタンパク源とする計画。約200カ所の耕作放棄地等に太陽光発電所を作り、CO2の削減に努めている。
 途上国の温室効果ガス排出削減に向け、環境省が資金支援する二国間クレジット制度(JCM)により、モンゴルとチリで4基のメガソーラーを稼働している。需要が高まる環境配慮型ビジネスを推進している。

他社より一歩前へ 相川氏

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相川 宇三郎・相川管理社長
 あいかわ・うさぶろう 1951年、安中市生まれ。78年、管路総合エンジニアリングの相川管理を現会長と共に設立。公共設備や鉄道等の管理事業で規模を拡大し、2016年から現職。

相川 相川管理は、上下水道や農業用水路といった地下の埋設管のメンテナンス、改修が主な事業。特に首都圏の配管の多くが更新時期を迎え、青森から大阪までJR各線路下にある排水設備を改修しているため、新型コロナの影響は大きく受けずに済んでいる。
 工事の70%以上は首都圏のため、感染対策で、社員は自宅に帰らず安中市内の宿泊施設に泊まり、感染者は出ていない。
 上下水道が発達している海外の工法などを取り入れ、将来的にロボットで作業ができるように、メーカーとの共同開発も必要だと考えている。他社より一歩前を信念に、5年先を見据えた事業に取り組んでいきたい。

多様な学びが評価 大森氏

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大森 昭生 共愛学園前橋国際大学
 おおもり・あきお 1968年、仙台市生まれ。96年に共愛学園に入職。2016年から現職。21年から運営する同大短期大学部の学長を兼務。全国の学長が注目する学長ランキング4位(大学ランキング2022)。

大森 今年は明和学園短期大が共愛学園に移管され、共愛学園前橋国際大短期大学部が開学。こども園から大学までそろう県内唯一の総合学園に、3200人が学んでいる。少子化の中でも本学は、過去最高の学生が入学し、受験者も年々増えている。
 国が推進するデジタルを活用した教育プランに、AIで個別に最適な学びを分析する取り組みが採択された。しかし、根底にあるのは、デジタルに頼る教育ではなく、この地で学ぶこと。学びを教室の中に閉じ込めず、キャンパスの外に出て地域の人と顔を合わせて活動していく。学生の積極的で多様な学び方が、今評価され始めている。

新たな挑戦続ける 松本氏

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松本 健 グルメフレッシュ・フーズ 社長
 まつもと・たけし 1971年、前橋市生まれ。大学卒業後、98年にグルメフレッシュ・フーズを設立。「安心とおいしさをまごころこめて」を理念としている。2017年、グロービス経営大学院にて経営学修士を取得。

松本 グルメフレッシュ・フーズは、国産豚のもつ煮やホルモン焼きの製造・販売を手掛ける。7割がスーパー、3割が都内を中心とした飲食店に卸していたが、コロナ禍で飲食店の売り上げはほとんどなくなった。経営する前橋市の焼き肉店「ファミリー太閤」も厳しい状況が続いているが、感染対策を徹底して通常営業を再開している。
 昨年、工場を新設して商品開発に力を入れ、今年は直売店をオープン。焼き肉店で働く高崎経済大生の発案で、学食の密を避けるため、キッチンカーで大学に出向き、弁当販売を始めた。挑戦を続けながら、食の安全性を保ち、生産性を上げる対策を考えている。

経験を感染対策に 千吉良氏

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千吉良 康仁 コーエィEC事業部本部長
 ちぎら・やすひと 1975年、藤岡市生まれ。98年コーエィE・C事業部に入社。県内を中心にさまざまなイベントをプロデュースしている。

千吉良 コーエィは、建設機械レンタルをはじめ、イベントプロデュース、環境機器の設備工事などの事業を手掛ける。
 コロナ禍でイベントが中止や延期になり、大打撃を受けたが、これまでの経験と知識を感染対策に生かし、発熱外来やPCR検査会場の設営、Gメッセ群馬を会場としたワクチン接種会場の運営業務も県から受託した。さらにAIサーモカメラや空気清浄機、高性能マスクやフェースシールドの販売も展開している。
 今年から、前橋市の「粕川温泉元気ランド」と「あいのやまの湯」の指定管理者になった。イベントでのノウハウを活用して新たな取り組みにチャレンジしていきたい。

10年先考えた開発 平国氏

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平国 正一郎 太陽誘電開発研究所長
 ひらくに・しょういちろう 1965年、鹿児島県鹿児島市生まれ。大学卒業後、88年太陽誘電入社。主に研究所にて研究開発に従事。2017年から現職。

平国 太陽誘電は、電子部品の開発・製造・販売を手掛けている。スマートフォンや自動車で使用する積層セラミックコンデンサのシェアは、世界3位を誇る。新型コロナの影響によるリモートワークなどによって電子機器の需要が伸び、売上高、純利益ともに過去最高を更新する見通しだ。
 5~10年先を考えて開発に当たる。生産性改善を目的に、IoTで工場や設備をつないでモニタリングを行っている。将来的には無人工場やCO2排出削減の可能性も。ものづくり、研究開発はリモートにそぐわないが、コロナ禍で培った新たな働き方を推進し、イノベーションを生み出すことも一つの挑戦だ。

新たな市場で回復 小林氏

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小林 新一・花助社長
 こばやし・しんいち 1972年、前橋市生まれ。米国、オランダに留学して花作りを学び、帰国後に花き農家などを経験。2005年に生花店開業。独自に構築した生花店ネットワークで花を届けている。

小林 花助は、前橋市内で生花店を営み、全国に花を届けるサービスを展開している。全国約120店の生花店と「フラワーネットワーク」を築き、注文を受けると近くの提携店が対応して花を届けるワンストップサービスを提供している。
 届け先の9割が県外、そのうち7割が首都圏。コロナ禍で、コンサートや舞台、握手会などの各種イベントが軒並み中止となり、売り上げは半分以下になった。
 人の行き来がないなら、花を動かそうと考え、3万~4万円の冠婚葬祭用の生花の商品開発に着手した。高額な商品をまとめて購入してもらう新たな市場をつくり、売り上げの回復につなげた。

外食の価値を追求 坂入氏  

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坂入 勝・美喜仁社長
 さかいり・まさる 1959年、桐生市生まれ。先代が開業した美喜仁寿司に82年入社。2007年から現職。桐生、太田、高崎で「海鮮ダイニング美喜仁館」などを経営する。

坂入 美喜仁は桐生市内に3店舗、太田市と高崎市に各1店舗、すしや日本料理を中心に外食産業を展開している。今年、桐生市市民文化会館の愛称命名権を取得した。 昨年は新型コロナの感染拡大で、売り上げの7割を占める宴会やケータリングが全てキャンセルになった。テークアウトを導入し、デリバリーを強化。新規ステーキ店開店や「デパ地下」の惣菜店出店、法人向けの弁当販売、ECサイトでお中元やお歳暮販売などに取り組んだ。その中で気付いたことは、足を運びたくなる店作りの大切さ。今年度5年で4倍の成長戦略を策定し、原点に立ち返り、外食の根源的な価値を追求していきたい。

日報活用し改善へ 守田氏

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守田 達郎 プリマベーラリユース 事業部長
 もりた・たつろう 1985年、富山県氷見市生まれ。古着や貴金属、骨董品などのリサイクル事業を中心に県内外で展開するプリマベーラに2008年入社。

守田 プリマベーラは、「もったいない」をビジネスに、古着や貴金属のリユースショップ、書店や整骨院など本県を中心に42店舗、4事業部20業態で運営する。コロナ禍の外出自粛による部屋の片付けなどから、古着買い取りは好調だった。
 自社開発したオンライン日報を活用し、スタッフから年間10万件のお客さまの声や改善提案が出されている。
 経営会議で上がる議題の6割は、日報からの情報。良い意見や提案はすぐに採用する。社の方針に関わるため、アルバイトであっても経営への参画意識を持てる環境となっている。全員が実行力の高い組織を目指し、日々取り組んでいる。

新時代に向け変革 高橋氏

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高橋 秀実・メモリード専務
 たかはし・ひでみ 1957年、太田市生まれ。81年、群馬銀行入行。33年勤務後、2013年メモリードに入社し、16年から現職。

高橋 メモリードは、冠婚葬祭を中心にホテル、レストランを展開。県内初の民間葬祭場の建設や葬祭料金の明確化など葬儀革命を進めた。約10年前から家族葬や式を挙げない「ナシ婚」などニーズや価値観が変化し始め、コロナ禍でライフスタイルも大きく変わった。
 今年のスローガンは「新時代への変革と挑戦」。参列できない人に向けた冠婚葬祭のウェブ配信、祝儀や香典のクレジット決済、式前焼香、2部制の結婚式などを実施。今後は要望の高いハワイ、沖縄、軽井沢のリゾートウエディングも手掛ける。女性責任者の活躍の場を増やし、さらなる地元密着とサービスの質の向上にも努めていく。

【12月5日にファイナル】
◎18組がプレゼン
 「群馬イノベーションアワード(GIA)2021」(上毛新聞社主催、田中仁財団共催)のファイナルステージが12月5日、前橋市のヤマダグリーンドーム前橋で公開で開かれる。2次審査を通過した18組がプレゼンテーションする。
 午後1時開幕。公開審査のほか、デザインコンサルティングを国内外で展開するロフトワーク(東京都)の林千晶会長が特別講演する。また、オープニングでのライブコーディングパフォーマンスやインターバルコンテンツとして高校生らのパフォーマンスを予定。
 入場無料。一般観覧の申し込みも受け付けている。問い合わせは事務局(☎027・254・9955)または専用サイトへ。