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いつになったら上手に生きれるのか【エッセイ】

今日は映画を見ようと思ってた。
数日前から席の予約も取っている。予約開始とともに取ったので中央の1番いい席である。
特に強い思い入れがある映画というわけではないが、自分の中では映画が大流行中だ。これから1〜2ヶ月の間、毎週のように映画館に通うだろう。
それくらいお熱だ。
正直今日はテンション上がりっぱなしだった。

この時点で気づくべきだった。
自分はこういう時に限って上手くいかない。

映画の開始時間から逆算して準備を始める時間は決めてあった。カレンダーもアラームも設定してる。だから問題はないはずだった。
だが、ふと目に入ったPCの時計はその時間から10分過ぎてた。
血の気が引いた。状況が読み込めなかった。慌ててスマホを確認しようとする。だが近くにない。
探してる時間もないので一目散で準備を開始した。

この時点でもう終わっている。だが諦めるわけにはいかない。だって既にお金は払っているのだから。
2000円は高い!諦められる額じゃない!

最速で準備した。頑張ったので10分の遅れを取り返した。これなら間に合う。
そんな希望も束の間。
思い出す。スマホがない。
ネット予約なのでスマホがないと映画館に入れない。
焦りは頂点に達する。

こうなると視野が狭まる。よってスマホは見つからない。
とりあえず近くを探したがない。居間にも寝室にもキッチンにもない。どこにもない。
時計を確認する。
さっきの10分の頑張りは無に帰したことがわかった。
心が折れかけた、そうするとふと気がつく。
トイレだ!

無事スマホを回収して家を出る。
歩きでは最寄り駅まで時間がかかる。10分の遅れを取り戻すにはもう自転車しかない。
幸い家の近くにレンタル自転車がある。
これを使えばギリギリ間に合う。また希望が見えた。
爆速で最寄り駅へ向かう。
イケる!これなら間に合う!
冷静さを取り戻して気がつく。返却先が空いていない可能性がある。信号待ちの間で確認する。予想通り全部埋まっている。またもや絶望に落ちる。

調べると最寄り駅からもう1つ先の駅には空いてるようだ。駅と駅の間は自転車で7〜8分程度。
さて、どうする選択肢は2つある。
諦めるか、少し遅れて映画館に入るか。
選択するのは早かった。
周りの皆さんごめんなさい、遅れて行きます。
まさか中央の席を選んだことを後悔することになるとは思いもしなかった。

もう1つ先の駅までまた爆速で自転車を漕ぐ。
すると突然雨が降ってきた。
次第に強くなり、もう服はビチャビチャである。
しかも知らない道だから迷った。
ここで心が折れた。
もうどうでも良くなった。
自分が何をしたというのか。天に恨まれるような行いはしていないはずなのに。

駅のホームまではきた。
しかしもう映画館に行く気がない。
本来乗るはずの方向とは逆の電車に乗ろうかとも考えた。
一応、映画の開始時間からどれくらい遅れるのかを調べる。
その時間によってどうするかを決めるために。
すると今日一の驚きが待っていた。
開始時間に余裕で間に合うのである。

あぁ、思い出した。
どうせスケジュール通り行かないから一本早い電車に乗るつもりだったのだ。

自分は本当にだらしがない人間である。
毎日のように嫌になる。
しかも改善される見込みもない。
もうずっとこの有り様である。
本当に絶望しかない。

しかし。しかしだ。
治ることがなくても対策することはできる。
成長することもできる。
前ならもっと焦っていただろう。
スマホを見つけるのにもっと時間がかかっただろう。
すぐに選択肢を用意できなかっただろう。
そもそもカレンダーとアラームを設定するなんてこと数年前なら考えもしなかった。

ダメな人間としての生き方を少しずつ身につけている。
これは喜ばしいことだ。自分を褒めたい。
でもこんな生き方がしたいわけではない。
もっと普通にちゃんとした人間として生きたかった。

映画が終わる頃には雨は小雨になっていた。

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