ICT を活用した学習者中心の授業デザイン ~社会科における Google for Education™活用法~ / 2024.9.7(土)講座参加レポート
こんにちは!
G-Apps.jp 公式note担当の伊藤です!
本日は、2024年 9月 7日(土)に開催された「ICT を活用した学習者中心の授業デザイン ~社会科における Google for Education™活用法~」の講座参加レポートをお届けします!
講師は、東京成徳大学中学校・高等学校 教諭(社会)の中川 琢雄(なかがわ たくお)先生です。
Google for Education 認定教育者レベル 1, 2 を取得し、Apple Distinguished Educator でもある中川先生による、Google ツールを活用した社会科授業の実践例や、生徒主体で「深い学び」を実現するための考え方について解説された講座です。
なぜ、社会科授業に ICT 導入? そのメリットとは?
中川先生がまず提示されていたのは、「従来の社会科授業は、生徒が受け身になりがちだった」という課題です。
"教師がひたすら知識を伝え、生徒は黙ってノートをとる"、このような学習スタイルだと、「社会科=暗記科目」という固定観念を生徒が抱きやすくなります。
しかし、中川先生によれば、ICT を活用することで「生徒主体の学び」、「学習者中心の授業が実現できる」とのことでした。
「教える」から「学ぶ」への転換している様子を見せていただきました!
その大きなメリットは次のようにまとめられるかなと思います。
生徒が膨大な情報にアクセスできる
Google 検索や YouTube 、デジタル資料などを活用すれば、生徒が興味をもった情報を必要に応じてどんどん収集し、学習に取り込める。
生徒同士の活発な意見交換や情報共有
Google ドキュメントや Google スライド、Google Jamboard などのツール上で同時編集・書き込みができるため、学習者同士がリアルタイムにやり取りし、学び合う空間をつくりやすくなる。
可視化と表現方法の多様化
Google Earth を用いた歴史の解釈、Google Jamboard での概念整理、デジタルポスター作成や動画制作による自己表現など、社会科の内容を「自分事」として引き寄せ、多角的な方法で発信できるようになる。
こうした取り組みが広がれば、「社会科=答えが1つ」ではなく、"自ら思考し、他者の意見から学び合う学習"へと変わっていくのではないかと期待が高まりました!
先生は「正解」を知っている? 生徒主体型の授業スタイルで「学びの主人公」は生徒自身に!
私が最も印象的だったのは、教師を「答えを教える人」としてではなく、「学びを共に見つける仲間」と位置づけるという考え方です。
中川先生いわく、"社会科の内容は必ずしも“唯一絶対の正解”があるわけではない。特に複雑な歴史や国際問題などは、情報を精査しながら自分の意見を組み立てるプロセスが大事になる。そこにこそ学びがある"とのこと。
「先生対生徒」ではなく「生徒同士」を面で繋ぐ
加えて、「生徒同士で学び合う」意義がとても大きいとおっしゃっていました。
教師が正解を提供するのではなく、“問い”を投げかける役に徹し、生徒はグループワークやディスカッションによって、考えを深め合います。
実際、中川先生の授業では「政治改革はどの程度必要か?」「国際紛争はなぜ起こるのか?」といった問題について、生徒が互いに議論し合う場面を数多く設定しているそうです。
私も講座を通じて、「教える→聞く」だけでは生徒が受動的になりがちですが、「学びをどう構築するか」を生徒自身に任せることで、能動的に学びに向かう空気が生まれるのだと強く実感しました。
学びの段階によって、子どもたちの成長を認めていくことが大事にされていることがとても印象深かったです!
豊富な実践例から学ぶ! Google ツールの活用術
講座内では、具体的な授業実践例も多数紹介されました。いくつかピックアップしてみます。
1. Google Jamboard を活用した概念整理と理解の促進
歴史分野や文明ごとなど、複雑な背景知識を必要とするテーマでは、Google Jamboard 等のホワイトボードツールでキーワードや概念をマッピングします。
メリット: 付箋や画像などを使い、視覚的に整理することで、生徒たちが「何と何がどう繋がっているのか」を把握しやすくなる。
参加目線の気づき: 生徒同士のコラボレーションによって、新たな発想を得られるなど、「個々人の理解」が「集団の知」へと発展していく様子が想像できる。
2. Padlet を活用した情報共有と発信
プラスチック汚染などの環境問題を題材に、学校や海岸で見つけたプラスチックごみを写真に撮り、Padlet に投稿。その結果を海外の生徒とも共有するという取り組みです。
メリット: 実際の社会問題を自分たちの身近な場所で「発見」し、そこから学習を始められる。さらに国際的な視野も得やすい。
参加目線の気づき: 自分の体験をデジタル上で世界へ発信できるのは、モチベーション向上にも直結する。
いずれの授業でも、"「先生対生徒」ではなく「生徒同士」を面で繋ぐ"ということが実践されていました。
あくまでも、そのためのツールとしてICTを活用されていました。
詳しい実践は、ぜひ動画をご覧ください!
学びを「見える化」する! 振り返りの重要性
授業後の振り返りでは、ORID というフレームワークが役立つと中川先生は強調されていました!
Objective question(客観的事実の問い)
Reflective question(感情・反応の問い)
Interpretive question(解釈・意味づけの問い)
Decisional question(次の行動・決意の問い)
この段階的な問いかけを行うことで、生徒は「自分が集めた情報」「自分が感じたこと」「それをどう解釈し、次にどう活かすか」までを体系的に言語化できます。
私も、自分の学習を省みるときにもこの ORID は非常に有効だと感じました!
単純に「面白かった」「よく分からなかった」で終わるのではなく、「じゃあ次のステップは?」と行動に繋げることができますね!
ORID の解説はこちらから。
まとめ
今回の講座を通じて感じたのは、ICT の導入は、あくまで「生徒を学びの主人公にする」ための手段であるということです。
生徒が主体的に学ぶ
多様な情報を取り込み、深い学びにつなげる
互いの考えをぶつけ合い、学習コミュニティとして成長していく
社会科という科目を、ただの暗記や受け身学習ではなく、「自分なりの視点で世界を捉える」探究の場に変えられる可能性を強く感じました。
Google のツールは多くの機能を提供してくれますが、最終的には「生徒にどんな力を身につけてほしいか」を、授業者(先生)が明確に持ち続けることがカギになると思いました。
「社会科で何を学び、社会科を通じて生徒が何を実現するのか」
この問いを先生と生徒が共有しながら、ICT のメリットを最大限に活かしていけば、「教わる」から「学び取る」へ、学習者中心の授業デザインが実現するのではないでしょうか。
私自身も、今回学んだことを自分の授業や学習環境づくりに活かし、生徒の「学びたい!」を引き出す工夫を続けていきたいと思います。
さらに詳しい内容や活用事例は、教員限定の Facebook グループで公開していますので、ぜひ G-Apps.jp Community ~ 教育現場での Google for Education 活用コミュニティ~ にご参加ください!