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【金井球さんと出会った日のこと】

名前のついていないものが好きだ。
ジャンルレスな人、もの、こと、態度、などなど。

例えば。
「名前のついていない」人で言えば、金井球さんという人が好きだ。
彼女は「ミスiD」という講談社が主催しているミスコンに応募し、2022年のグランプリに輝いた人だ。

金井さんのことを知ったのは受賞からしばらくたった夏の終わり。中野ブロードウェイにある変な雑貨屋、「中野ロープウェイ」のインスタグラムで見かけた。

なんてかわいいんだ。

その人は自分の好みにぴったりの「女の子」だった。

そのころ、金井球さんは会社で働いたり会社を休んだり会社を辞めたりして過ごしながら、チェキ会などのイベントを開いていた。
そのころは東京に住んでいた時期なので、イベントに行こうとすれば行けたのだが、東京特有の「イベントに行こうとすれば行ける」という感覚を、地方出身者である自分はまだ知らなかった。

そんな秋ごろ、おそらく当時の金井さんとしては大規模なイベント、原宿のギャラリーの一室で行う「おもしろくなりたい」という写真展が開催されるお知らせがSNSでされた。
金井さんが「おもしろくなりたい」というテーマで、インターネットミームとなった有名な写真を金井さん(と、周囲の人)で再現するという内容だった。

行ってみよう。原宿に向かった。

その日、映画をみる予定があったので、お昼ごろの早い時間に向かった。
竹下通りには黒人男性が大量に立っており、Tシャツを押し売りしてくる
その中の一人から「どこ行くのー?」とたずねられた。
ここに行きたいんだけど…。初めて行くそのギャラリーに、赤いピンを立てたgoogleマップを見せると、ここをまっすぐだ、と教えてくれた。押し売りTシャツは断った。

ギャラリーはピンク色の建物で、かわいいデザインだった。いくつか部屋が設けられており、その中の一つをレンタルして「おもしろくなりたい」は開催されていた。

正直、緊張した。ギャラリーなど入ったことがない。バーミヤンに入るのとはわけが違うのである。
部屋の中は金井さんの写真でいっぱいだった。係員として、カメラマンを務めた平手ユウさんがいた。「暑くないですかー、自分ずっとここにいるので気温わからなくて」とか、優しく話しかけてくれた。そして、大げさに言えば人生を変える決定的な一言を言われた。

「まさか金井さんがいない時間に来てくれるとは…。」

実は会期中、何日間かは金井さんが在郎している日があり、その日の午後はまさに金井さんが来てくれる日だったのだ。しかし、前述の「イベントに行こうとすれば行ける」という感覚、あるいは「好きな人に会いに行ける」感覚が欠けていたので、普通に映画を観に行こうとしていたのだった。
映画を見ていたら金井さんの来る時間には間に合わない。しかし、暇をつぶすには時間が長すぎる。

迷った末、近くのケバブ屋さんでご飯を食べたことをすごく鮮明に覚えている。そのあとはどうやって時間をつぶしたのか覚えていない。覚えてないけど、太陽の沈んだ時間、雨が降っていたと思う、金井さんに会いに行った。

金井さんは僕がギャラリーについた30秒後くらいに来てくれた。じつは、ギャラリーへの階段を上るとき、後ろからほかの人が上がってくる音がしていたので、金井さんではないか、と内心ドキドキしていた。
ただ、振り向く勇気が出ず、ギャラリーで初めて出会った。

その日、僕は以前に作っていた金井球さん応援アカウントで、金井さんに会いに行く旨をつぶやいていた。
金井さんはエゴサして、そのツイート(当時はポストじゃなかった!)を見てくれていたのだ。

僕は緊張しながらも、このアカウントは金井さん応援のために作ったので、金井さんが一番最初にフォローした人なんです、と伝えた。すると金井さんは隣に来てくれて、一緒にフォロー欄を見てくれた。
「あ、私が岡奈ななこと並んでるー」
そういってニコニコしてくれた。

グッズも売っていたので、写真集とシールを買った。そして、チェキである。
撮ってくれたのが平手さんだったので、さすがプロ、人生でたくさん撮ることとなる金井さんとの写真の中で一番映りが良かった。

その後もたくさんお客さんが来ていて、盛況だった。
僕は一人、原宿から当時住んでいた八王子の高尾まで一時間かけて帰った。
金井さんは記憶力がすごく、2回目に会いに行った時、すでに顔を覚えてくれていた。けどそれはまた別の話しである。

名前のついていないものが好きだ。
僕にとって金井球さんは、アイドルでもない、役者でもない、インフルエンサーでもない。名前を付けるとしたら「金井球さん」と呼ぶしかない存在だった。
金井さんはこの後、バーの一日店長をやったり、舞台に出たり、ラジオを始めたりいろいろやってくれた。

いけそうなものにはなるべく足を運んだ。金井さんのお父様とお話ししたり、ラジオのリスナーに電話をかけるコーナーで電話をかけてもらったりした。どれも忘れられない思い出だ。

金井球さん、素晴らしい人だ。今後も幸あれ。



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