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美味いバターは美味い。
ずっと前から気になっていたものがある。
それは、成城石井の「白トリュフバター」。
なんでも、口にした瞬間におフランスの高級フルコースが目に受かぶのだとか…。
私の家の近くにはそんな小洒落たスーパーなんてないので、諦めてカップヌードルのトリュフオイルをとっておいてパサパサの食パンにつけて食べていた。なんとな〜…く香る恐らくトリュフっぽいのであろう油をそれはそれはありがたくいただいていた。
ま、本物のトリュフなんて結婚式の時の試食会でしか食べたことないから分かんないけど。
ある日、徒歩3分のスーパーの成城石井やコストコなどのフェアをしている棚の中に「それ」は並んでいた。恭しく並んでいるそれに手を伸ばしかけた時、目に入った値札には「1280円(税込 1382円)」と書かれていた。
80gで1280円!!(裏声)
200gのバターが399円で並んでいた時ですら「1g2円か…」と思い躊躇している私に、1g16円のバターは高嶺の花。
泣く泣くその日は見送り、それ以降もそのスーパーに行くたびにトリュフバターの有無を確認する日々を送っていた。
そして昨日。
息子の遠足のお弁当の材料をスーパーに買いに来た。子どものお弁当に入ってそうな食べ物を探して店内を彷徨っていると、ふといつもなら目に留まらないはずの見切り品コーナーがなんとなく気になった。
値引き商品は全然買う方だけど、こういうとこに入ってるのはだいたい変色が始まったバナナだとかりんごだとかそんなんなんだよなーーー。
そう思いながら、ちらっと見やると
「半額」のシールが貼られた成城石井のトリュフバター…。
え?え?いいんですかいいんですか?
こんなに安くなっちゃっていいんですか?
突然己の心から出てきたRADWIMPSがそう私に問いかける。
あんなにバズって一時は入手困難だった超ブルジョワなバターだよ??
世界三大珍味はいっちゃってこだわりの牛乳使っちゃったりしてるんでしょ??
半額になったとて、640円(税抜)。
1gで8円。うーん。
でももうこんな機会はきっとない。二度とない。多分これより安くなることはまずない。
己の脳がそう結論づける前に、手はガシッとそれを掴み、息子のおやつやウィンナーやうずら卵の水煮が入ったカゴの中に勢いよくダンクシュート。マイケルジョーダンもびっくり。
帰宅してから、夫と息子の夕飯を準備する。
2人の茶碗にご飯をついだら、自分は先週末パン屋さんで買って冷凍しておいたバケットをトースターに入れる。
トリュフバターにナイフを入れようとすると、「賞味期限:2024年10月24日」の文字が目に飛び込んできた。
購入当日やないかーい。
まぁ、元からあんまり賞味期限を気にするタチでもないし、冷凍すればいいでしょ。冷凍庫に入れれば何でもかんでも賞味期限は無限大。
トースターが軽やかな音をあげるかあげないかの瞬間に、扉を開けてサックサクに焼けたバゲットを皿に乗せる。
恐る恐るトリュフバターを掬い取ったバターナイフをバゲットの上に滑らせると、みるみる溶け出し、カリカリの表面にじわーっと染み込んでいく。
こういうのは口が火傷するくらい熱いうちに食べるのがいいんだって井之頭五郎も言ってた。知らんけど。
火傷しないよう、出来るだけバゲットの端の方を持ち、一気にかぶりつく。
な ん だ こ れ は 。
バターがストレートで顔面に殴りかかってきたかと思えば、次にトリュフの香りが脳天に突き刺さる。
まさにバターとトリュフの圧倒的暴力。
舌が美味しい。鼻に抜ける空気も美味しい。
味蕾と嗅上皮の嗅細胞ひとつひとつがパーリナイしてる。
これご飯に乗せても美味しいんじゃないか。
ステーキにのせてバターソースにしても。
いやいや、あたしならバターそのまんまかじれる。
多分どう食べても美味い。
…でも、多分パンに塗って食べるという最もシンプルな食べ方が一番美味しいんだろうな。
あっという間に食べ終え、残りのバターを計りに乗せる。
74g。
食べたのが6g、1gあたり8円だとして48円。
この幸せが48円…??
実質タダじゃん…。
そう思いながら、ジップロックにバターを入れ、大事に大事に冷凍庫に仕舞い込んだ。
これは早起きした時、優雅な朝を迎えたい時、ちょっといいパンを買った時なんかに少しずつ少しずつ食べるんだ。
とりあえずここ1ヶ月で4キロ増量してしまったので、大事に大事に食べよ…。