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同じ窓から見てた空。

成人式ぶりの小さな小さな同窓会。



たまに子育てや近況報告で動く女子三人のグループLINE内の「ぷち同窓会開かん?10人くらいで」という軽い一言から決まった。


確かに、成人式を最後に同窓会らしい同窓会はない。おまけにちょうどあれから十年だ。開催するにはうってつけ。



そうと決まれば、話は早い。
あれよあれよという間に開催日が決まり、友達から友達へ伝言ゲームのように参加者を募り、集まったのは十二人。

ダメ元で今は遠方にいる同級生達にも連絡すると、「今 飛行機予約したわ」との返事。
いやいやまだ5ヶ月先だけど。

あとあと聞いて分かったが、このためだけに関東や関西から飛行機・新幹線で来た人がおよそ半数。バイタリティーえぐ。

そのうちの数人から、「先生も呼ぼうや」という声が上がり、当時の担任に連絡を取ってみるとすぐさまOKの返事。
おっ。本格的に「ぽく」なったきたぞ。



あっという間に当日。

ゲストの先生と友人を乗せ、あまり走り慣れていない道をナビしてもらいながら、なんとか駐車場に辿り着いた。

15分ほど前に会場入りしようと思っていたのに、途中 混んでいる道を選択して思ったよりも遅くなってしまった。到着したのは開始時間ジャスト。
うーん安定のクオリティ。
そうだそうだこんな感じだった。

中学を卒業した頃から、十年以上。
全然見た目が変わって分からない人がいたらどうしよう…。
話が盛り上がらなかったら?
めちゃくちゃにキャラ変してる人がいたら?

駐車場から会場までの短い距離の間に、ほんのり不安がよぎる。念の為に持ってきた、中高の卒業アルバムと写真が入った紙袋を握りなおし、店のドアを開ける。



だーれも変わっとらんやないか。

あ、一人だけめちゃくちゃ身長が伸びてて分からなかった男子がいたな。遅れてきた成長期。


全員の前にグラスが揃ったところで、乾杯の挨拶もそこそこに、あちらこちらで会話に花が咲く。

      何の仕事してるん?
  えっ!県内なの!近いじゃん!
        あいつ、今何してるんかなぁ。
 あー!あった!あったね!そんなこと!


二つのテーブルで、色んな会話が聞こえてくる。時折、ドッとテーブルが沸き、手拍子と笑い声が聞こえる。

毎日のように購買でリプトンのピーチティーやミルクティーを買い、昨日見た番組や恋バナをしていた中学生達が、今では思い思いの酒を酌み交わしながら、「あの頃」の答え合わせをしている。


恩師の先生も、昔と変わらない…むしろ昔よりも少しくだけた態度で生徒達に話しかけている。。


生徒達の中に先生一人だけ呼んで、気兼ねしないかな大丈夫かなとも当初は思っていたけれど、とんだ杞憂だった。



そうだ、先生はあの時も先生っぽくなくて、生徒と同じ目線で話してくれていたんだった。
だから懐かれていたんだった。



「今の自分たちよりも年下だったのに、よく面倒見てくれたよねオレたちみたいなの」と、大人になった教え子から尊敬と感謝の気持ちを受け取りつつ、「教え子は家族だと思って接しているからね」と、先生は朗らかに笑う。


時間はあっという間に過ぎ、ラストオーダーの時間。
もう一軒行きたいけれど、次の日も朝から仕事だからと、残念そうな先生の一本締めで、名残惜しくも一次会はおひらき。


まだまだ話し足りない元生徒達は、遅くまで開いている店を探して駅前を彷徨う。


二次会は、一次会と打って変わって、自然と仕事の話や子育ての話に。
昔とちっとも変わっていないと思っていたのに、こういうところで「あ、大人になったんだな」と時の流れをふと感じる。


あくびがそこらここらで出始める1時半過ぎ、「またね」「再来年あたりにはもっと大規模にやろうね」と、後ろ髪を引かれつつ手を振って別れた。


ノンアルコールだった自分は、隣町まで友人を車に乗せて走る。
飲み会後の狭い車内で、少し落ち着いたトーンの声で今日の余韻に浸る時間が好きだ。
お酒も飲み会も大好きだけど、この時間が過ごせるなら全然ハンドルキーパーでいい。

なんだか、少し素で話せる気がするから。


一人、また一人と車を降りてゆく。
最後の一人を降ろし、「またねーおやすみ」と窓を閉めた瞬間、車内の温度がグッと下がった気がした。

静かな車内にMr.Childrenが流れる。
点滅する赤が続く。
黄色に染まる道路。
深夜二時半。
少し遠回りして、母校の前を通り、数えきれないほどバスで通った道を、軽自動車で一人ひた走る。


今よりもずっと狭い社会の中、色んなことで悩んで。かと思えば、くだらないことで息ができなくなるほど笑い合ったりもした。


泣くほど辛いことも、死にたくなるほど恥ずかしい過去も、全部飲み込んで、消化して、今日もみんなは笑っていた。

あの頃と全然変わってない。


けれど、十五歳だった私たちは、あの頃よりも確かに大人になっている。



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