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第2話:居待ち月

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連載2話目についての感想と補足。
章題の由来、今作にいたる経緯、そして大正時代の窓硝子と眼鏡についてお話しします。


2話目の章題 居待ち月

各章のタイトルは、そのエピソードで特にポイントとなる登場人物をイメージして付けています。前回で言えば小倉袴=帝大の狐(仮)ですね。
そもそも居待ち月/居待月とは何なのでしょうか。端的に言えば『満月を過ぎてやや掛けた月』のことです。満月が月齢約15に対し居待ち月は約18、新月が30。満月を境に月の出は遅くなりますので、月が出るのをそこに居て待つ──というわけです。

水銀先生は後述の理由により小夜が無事婿を迎える日を、或いは小夜父の後継者が現れる日を待っています。その『待つ』という姿勢、そして何事も他者に完璧を求めず寛容に徹する人となりを表したく、あえて満月ではない居待ち月を選びました。

水銀先生という男

今回新たに登場した水銀みずかね先生についてお話ししたいと思います。
年齢は小夜より一回りくらい年上の大人の男性で、奇しくも小夜兄と同い年。あまり記憶にない兄のことを考える時、無意識に先生を基準にしています。
また父性的であり母性的なので、家族と縁の薄い小夜にとってある意味最も親しみのある人物といえるかもしれません。

外見的には端正な顔立ちをしておりスタイルもけして悪くないのですが、うらなりで姿勢が悪いというちょっと勿体ないタイプです。(お医者さんポジションなのに一番不健康そう…)
小夜父にとっては秘書の一人であり、専属医師でもあるというまさになくてはならない存在。
そして恭が都司くん以外に長尺で会話する数少ない人間です。聞き上手なんですね、先生…!

ロマンあふれる大正硝子

冒頭、小夜が月を見たくて窓を開けるシーン「月を歪ませたくないから窓を開けるってどういうこと?」とお感じになった方はいらっしゃいますでしょうか。…きっとサラッと読み飛ばされた方が殆どですよね。
これは比喩でなく、本当に歪んで見えてしまう当時の窓硝子についての描写でした。明治後期〜大正時代の建物を見に行くと、私は必ず窓硝子を見てしまいます。大正硝子のあの水でぬらぬらしたような、ぐにゃ〜っと窓外の景色が歪む感じが大好きなものですから。

19世紀の眼鏡事情

ところで水銀先生の眼鏡、読まれていてどんな形をイメージされましたか?明治〜大正といえば偉人の写真等のイメージから丸眼鏡を連想された方が多いかなと思います。いわゆるロイド眼鏡ですね。セルロイド製であったことや、アメリカの喜劇俳優ハロルド・ロイドに因むと言われており、日本では大正9年頃から流行しました。

当初は私もこのイメージが強く「水銀先生はロイド眼鏡」と限定し書き進めていたのですが、今日日創作における眼鏡キャラは多様化していますし、何より『浸れる時代小説』という隠れコンセプトにおいてロイド眼鏡だ丸眼鏡だとわざわざ触れるのは野暮に感じて控えました。
ただこういった小物を細かく描写することで時代感を出せるという利点もありますので、先生の眼鏡の形状については今後要検討だなと思います。
時代的にはナシだけど、個人的にはスクエアタイプを掛けていてほしい…!想像は自由です。

兄が残していったもの

幼い妹を置いてゆくというだけでもなかなかですが、この時代に長男が家を出るということは稼業の危機を意味しました。
自由を求め消えてしまった小夜の兄、夢を捨て屋敷に残る決断をした先生。同じ年頃の青年が正反対の道を選んだ訳ですが、この事件によって方々に影響が生まれました。

まずは小夜の父。まだ小夜のモノローグでしか登場していませんが、彼の書生たちへの親愛はどこか歪んだ執着を感じさせます。少なくとも娘は違和感を持っている状態ですから、あまり健全な感情ではないようです。
特に恭については自分を慕い、反抗せずに付いてきてくれるため目を掛けている節があり心配です。

次に水銀先生。彼はこの件で一番割を食ってしまった人物でしょうね。小夜兄と同じ年頃なだけに「普通そんなことする⁉︎」というショックは相当なものでしたし、お世話になった下宿先のピンチを見て見ぬ振りはできなかった。
小夜が立派なお婿さんを迎えるか、小夜父の後継者が現れるまで支えたいと志願します。もちろん小夜父は諸手を挙げて彼を受け入れました。

今回は推し宣言頂いたうれしさで、分かりやすく水銀先生マシマシでお届けしました。笑
3話目も引き続きよろしくお願い致します。
ご精読ありがとうございました!


▼過去のまとめはコチラ

https://note.com/fybys1_ayu/n/n952e20315ea7

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