第6話:鯨幕
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連載6話目についての感想と補足。
都司くんの抱える事情、小夜・恭と都司くんの関係、吉原遊郭の世界について語ります。
吉原遊郭の世界
恭に連れられた小夜が訪れた吉原遊郭。いくら旦那様ご贔屓の恭であっても、お嬢様を連れて行ったのがばれたらさすがに滅茶苦茶叱られる──そういう大人の歓楽街。
こういった花街は東京以外にも存在しましたが、最上位の太夫=花魁は東京(江戸)でのみ使われる呼称だったようです。よく遊郭物の作品で上方の太夫が花魁と呼ばれて嫌がるシーンがこれですね。「私ん(とこの店の太夫、姐さん)」→「おいらん」→花魁となったそうです。江戸弁のてやんでえの成り立ちにちょっぴり似ている気がします。
浅草のオペラ歌手をキムタク方式で呼んでいた記憶もあり、略称は短気な江戸っ子の気質が出た文化…というのは穿ち過ぎですが、想像が広がって楽しいですよね。
また吉原といえば『見返り柳』や『お歯黒溝』、『衣紋坂』など趣のある地名がありますが、世間知らずなご令嬢の一人称視点で展開する本作においてはあえてその名前を使用していません。
字数の関係で少し淡白な表現になってしまったのですが、今回の課題『視点の主に合わせて固有名詞の表現を変える』という書き方は今後も試していきたいと思っています。
可愛い後輩 都司くん
恭は栗色の髪やヘーゼルアイ、足が長くスタイル抜群など混血を連想させる目立つ外見をしていますが、口が悪く融通が利かないので友達が少ないというのが10年前の初期プロットで決まっていました。
またそこに名前は決まっておらず何となく書き添えてあった『後輩』これが都司くんです。
実際に第一話では人当たりがよく、ほっそり背の高い狐顔ということくらいしか言及していませんでした。
ただそんなチョイ役都司くんを好きだと仰る感想が届きまして、やっぱりしっかり書きたいと思ったのが6話になりました。優しくてどこかちょっと色っぽい青年というイメージ。愛煙家。
小夜とはお別れする結末となってしまいましたが、また本編のどこかで出番を用意したいと思っています。番外編は間違いなく書きます。
恭さんと都司くん
前項でお話しした通り友達の少ない恭。なぜ一歳年下の都司くんと仲良くなったのか。これはぜひ番外編を書きたいテーマのひとつなので仔細は割愛しますが、声を掛けたのは都司くんからです。
都司くんは人当たりが良く機微に敏いので、相手の望むことを察して先回りするのが得意なんですね。
そのため恭のマイペースや寂しがりな一面に寄り添うのが上手く、『あくまで後輩の自分がさそって恭さんが付き合ってくれている』風に色んな所へ連れて行ってくれるコミュ強なのです。
最初は飄々と恭を構っていた都司くんですが、いつも黙って話を聞いてくれたり都司くんが街で絡まれた際に先に手を出してしまう恭の側が居心地よくなってきます。
その結果唯一他の学友に内緒にしていた稼業の秘密を打ち明けたのでした。
星になった兄や
都司くんは日露戦争で大好きなお兄さんを亡くしています。都司くんの兄は実は慈兵衛さんが陸軍軍曹時代に可愛がっていた部下。
同郷かつ軍人に不向きな優男だったので色々と気にかけていたのですが、二〇三高地で慈兵衛さんが突撃を命じ死なせてしまいました。
慈兵衛さんは未だにそのことを引きずっています。(番外編『赤紙』)
慈兵衛さんは除隊後すぐに都司家を訪ねていますが、父親に門前払いされてしまい以降は吉原にすら立ち入らなくなりました。
それがまさかいつも一緒にお酒を飲んでいる恭が部下の弟と仲良くしているとは夢にも思わなかったことでしょう。
番外編『赤紙』では慈兵衛さんが酔っ払って水銀先生を都司と呼んだ際、たまたま恭が離席していたためギリギリ見聞きせず──というニアミスもありました。運命のいたずら。
都司さんと小夜ちゃん
都司くんは作中で唯一小夜のことを「小夜ちゃん」と呼びます。常に令嬢というレッテルが付きまとう小夜にとって、これは新鮮で嬉しいことでした。また都司くんにとっても普通の女の子が当たり前に楽しむ物事に童女のように感動する小夜は面白く、もっと色んな世界を教えてあげたい存在でした。
ですが時代柄やっぱり家柄というのはついて回るもので、都司くんは小夜との決別を選択します。身分差の友情や愛情は稼業にコンプレックスを持つ彼にとっては耐え難いものだったのです。初めての経験に小夜も大変塞ぎ込みました。
ちなみに恭との友情は続いており、小夜も「私の居ないところで恭と都司さんの友情が続いているのかと思うと、正直何とも言えない気持ちになる」と言っています。(第7話:軍服)
しかも結構な頻度で遊んでいて、小夜にも大概ばれています。「また都司さんに会ったの?」と訊かれると「そうだよ」と平然と言ってしまう恭にギリギリしています。笑
さて最新話8話目が2/6(月)公開予定ですが、その前に7話目覚書を…!
次回はついに小夜の父で烏丸家当主・夕作が登場。一波乱の予感です。
ご精読ありがとうございました!
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