何でもかんでもVUCAのせいにしてんじゃねーよ!と思った話
㈱ヒューマンリソースマネジメント研究所
なつカウンセリングルーム 代表
土肥なつみです。
「人生を彩る居場所をつくる」を企業理念とし、
企業研修・カウンセリング・人材育成コンサルティング等を行っています。
私の自己紹介はこちらのマガジンをご覧ください。
これは先日、ライブ配信の中でもお話したことなのですが、改めて文章にして冷静に(?)残しておこうと思いまして、本日は“業務の引き継ぎ”について、私のボヤキも交えながら記事にしていきたいと思います。
とあるプロジェクトで起こった、こんな出来事
先日、とあるプロジェクトの定例会議に参加していた時のこと。
その企画の中で、数名と講座の運営をすることになりました。
その講座は数年前から定期開催しているもので、コロナ禍でしばらくお休みしていたものの、コロナが開けて昨年からまた再開することになりました。
再開後、昨年の秋に1度開催しており、今回も場所・内容ともに全く同じものです。
私は前回から参加していたのですが、参加者の誘導や遅刻者対応のためほぼ会場外に出っぱなしの状況。内容は全く分かっていません。
今回の講座の日も、ギリギリまで別の仕事をしているので当日の事前準備の時間には間に合いません。
そんな中、コロナ前から運営に携わっていたメンバーからひとこと…
「私は当日行けませんので、今回は土肥さんを中心に運営をお願いします。分からないことは聞いてもらえればお答えするので。」
…は?
すみません、そもそも分からないことが分からないのですが。
そもそも当日、開催時間のギリギリにしか到着できないんですが!!
ということで、フルで参加できるメンバーに統括してもらえないかお願いしたものの、
「サポートするから」「大丈夫だから」「過去のファイルもちゃんとあるから」
の一点張りで結局私が統括をすることに。
しぶしぶクラウドで前回の使用データを確認しに行くと…
当日のタイムスケジュールが1つ入ってるのみ。
これでどうしろと?
結局、打合せなるものが開催されて、当日来れるメンバーがワラワラ集まったものの
こちらが何を聞いても
「えーと…前回どうだったかなー…」
「忘れちゃったなー…会場に確認しておいてもらえる?」
「多分そうだったと思うんだけど…」
「うーん、分からないから出たとこ勝負で!」
の空中戦で全く話にならず。
最後は私も頭に血が上っちゃって…
資料作りながら、大切なパソコンのエンターキーを思いっきり叩いてしまいました。。。
私が飲食店時代、徹底的に教えられてきたことの一つに
「標準化」があります。
これは、作業や業務を属人化させず、誰がやっても同じ状態になるようにすることをさします。
その最たるものが「業務をマニュアル化する」ことです。
例えば飲食店で席案内をするとき、
Aさんの接客はハキハキとしていて対応もスピーディ、お客様にとって最適な席に案内してくれます。
しかし、Bさんは散々お客様を待たせた挙句声も小さく
「あ、どうぞ〜」と適当に席の方を示すだけ。
その店にはいつもAさんがいるわけではないので、お客様にとっては行く日によって接客がバラつくことになり、安心してお店を利用することができません。
それを防ぐために、業務マニュアルを作ります。
このようにすることで
お店側は「誰がやっても一定のクオリティのサービスを提供することができる」し、
お客様側は「いつ行っても同じサービスが受けられる」ことが可能になります。
これが、標準化です。
属人化することで起こること
飲食店に限った話ではありません。
今回のような講座運営の統括の場合も、過去のファイルがないということは運営ノウハウは過去の運営者の頭の中にしかありません。
分かる人だけでやっていた、という属人化された状態です。
組織やチームで仕事をする以上、作業が属人化した状態は非常に危険だと言えます。
属人化するとどのようなことが起こるのか、いくつかここに挙げてみます。
①膨大なコストがかかる
何よりも問題なのはコスト面です。
会社組織の場合は1日で出来ることを1週間(5日間)かけて行うとしたら、単純計算で5倍の人件費をかけることになります。
お金だけではありません。
過去の資料を探し回ったり、延々とミーティングをしたりと、時間というコストも湯水のように使うことになります。
成果に対して報酬が支払われる業務委託やフリーランスの働き方でこんな時間の使い方をしていると…
報酬を作業時間で割ってみてください。ゾッとしますよ。
②一人でもメンバーが欠けると継続が困難になる
二つ目は、誰か一人でもメンバーが欠けるとその仕事の継続が困難になるということです。
今回のプロジェクトの場合も、前任の統括が急に抜けることになったので現場は大パニックです。
その仕事が今後も継続して行うことが決まっているのであれば、
仮にメンバーが全員入れ替わったとしても同じことができるような体制を作っておくべきです。
どんな組織でも、誰一人入れ替わることなく何十年も居続けるということはできませんよね。
近年は雇用も流動化しているので特にその動きが顕著です。
③リーダーの負担、誰もリーダーをやりたがらない
3つめは、そもそも何も引き継ぎのない仕事の統括を誰が進んでやりたいと思うでしょうか?ということです。
イチから新しい仕事を作る“立ち上げ”とはわけが違います。
これは比較的、前に進んでいる感や開拓していくことのやりがいを感じられますが、
前回はどのように仕事を進めたか、そのアウトラインは誰が知っているのかを探し回るところから、過去にどのようなファイルを使ったのか、そのファイルはどこにあるのか、それがないと次に進むことができないわけですから、焦りやプレッシャーは計り知れないものだと思っています。
私は日々「楽しく仕事をする」ことが大事だと考えていますが、一口に楽しいといってもその中身は様々です。
コミュニケーションが活発だとか心理的安全性が高いとか、色々ありますが
私は「何をすべきかが明確に分かっていること」もまた楽しさであると考えています。
自分は前に進んでいるのだろうか?
これでいいのだろうか?
と思いながら、まるで暗闇を手探りで進んでいく仕事は、それ自体にやりがいもありますが、誰しもがそうとは限りません。
家庭の都合など、メンバーによって仕事に使える時間も様々です。
“誰がやっても”同じ状態になるように仕事を標準化させることで、統括を任された人は安心して仕事に取り組むことができるのです。
私はこの標準化の基準を
“道を歩いていて、たまたま目の前の人にいる人にいきなり仕事を頼んでもできるレベル”と考えていて、トコトン作業を標準化・単純化していきます。
「誰もリーダーをやりたがらない」
「メンバーの積極性に欠ける」
という課題がチームにある場合、自分たちの仕事が属人化してしまっていないか?
一度業務の棚卸を行ってみるのもよいかもしれません。
ここからは仕事を標準化する方法について解説していきます。
標準化するための仕事の進め方
①使ったファイルはすべて残しておく
これは基本中の基本、その仕事で使ったファイル、作ったファイルなどは共有のクラウドなどに必ず整理して保存します。
ちょっとしたメモや議事録など、ひとつ残らずです。
自分にとってはあまり重要でないと感じるようなファイルでも、後任にとっては非常にためになった、ということもよくあります。
要か不要かは、後任が決めれば良いのです。
ついでに言うと、ファイルはひな形があるのがベストです。
案内状やチラシデータ、イベントによっては司会進行原稿などがあると思いますが
同じイベントである以上、大まかなアウトラインに変更はないはずです。
ここに必要情報を入れればすぐにファイルが完成するよ、というひな形があるだけでも、作業負担が大幅に減少します。
クラウドに保存する場合は、
「ひな形フォルダ」と「前回使用したファイルが全部入っているフォルダ」の2種類があると良いです。
②ひとつの仕事(イベント)が終了したら必ず振り返りを行う
その次に振り返りです。
とっても大事なことなんですが、意外とやっていないチームや組織が多いです。
イベントや仕事の区切りが一つついたら、必ず振り返りを行うようにしてください。
振り返りの方法は色々ありますが、私が一番シンプルで簡単だと思っているのがKPT法です。
このTを、次回の運営に役立てていくことで、イベントや仕事の中身がどんどん精度の高いものになっていきます。
毎回毎回同じことで失敗している組織やチームは、この振り返りを行っていないのでいつまでたっても実績が積みあがっていきません。
言わば「やりっぱなし」の状態です。
振り返りは出来ればその日中、どうしても時間が取れない場合でも一週間以内には行うようにしてみてください。
まとめ~令和だって“準備が9割”
今回は“引継ぎ”をテーマに記事を書かせていただきました。ここまでの話をまとめます。
最近ではVUCAの時代と言われるようになり、とにかくスピード感を持って取り組むこと、細かいことは走りながら考えれば良い、まずはやってみる、という考えが主流になってきました。
しかし、この「とりあえずやってみる」というのは
「ノー準備で突っ込んで良い」という意味ではありません。
過去の記録はキチンと残す。誰がやっても同じ状態になるように標準化した状態で次の担当に引き継ぐ。
昭和だろうが令和だろうが、根本は変わらず仕事は準備が9割だと、私は思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
弊社ではコミュニケーションを中心とした企業研修、人材育成コンサルティング、社内相談窓口代行を行っております。
詳細・お申込みは弊社HPからお問い合わせください。