仕事の修得度は“個人の問題”ではないって話
こんにちは。
㈱ヒューマンリソースマネジメント研究所
なつカウンセリングルーム 代表
土肥なつみです。
「人生を彩る居場所をつくる」を理念とし、
企業研修・カウンセリング・人材育成コンサルティング等を行っています。
私の自己紹介はこちらのマガジンをご覧ください。
以前、製造業のマネジャーとしてお勤めの受講者さんからこんな相談を頂きました。
「私の入っているラインで一人だけ手が遅かったり何度もミスをするパートさんがいるんです。
毎回その人のところで仕事がたまるのでみんな黙ってフォローするんですけど、納期が迫るとさすがに職場の雰囲気がピリピリしてきて…
パートさんも最近は“私なんて辞めた方がいいですよね?”とか言ってくるし...どうしていいか困っています」
皆さんの職場でもこんなことはないでしょうか?
それ以外にも、部下指導の現場で
・言うべきことが多すぎて何から教えて良いか分からない
・なかなか教えた通りに動いてくれない
こんなお悩みを持つ方にも是非読んでいただきたい内容です。
仕事覚えにムラがあるのは個人の問題?
冒頭の事例ですが、この職場ではパートさん同士の能力に差が開いてしまい、職場の雰囲気が悪くなってしまっています。
修得度は個人の能力によってある程度差が出てしまうものですが、必ずしもそれだけが問題ではありません。
もうひとつあるとすれば、それは
能力に差がある個々人に対して同じように教えてしまっているということです。
教え方の基本については、以前書いた記事を是非ご覧いただければ幸いです。
ただ、1言って10を理解する人もいれば、
同じように言って0.01までは理解できる、という人もいます。
また、パートさんやアルバイトスタッフの場合は勤務時間・日数にも差があります。
作業の修得のためには
「分かりやすく教える」だけでなく「頭で理解したことを何度も反復させる」ことも重要になってきます。
話を聞いてみると冒頭のパートさんは、他のパートさんと比べて1日あたりの労働時間も少ないようでした。
図にするとこんな感じです。
この時、労働時間の違うAさんとBさんを同じように教えて、全部の作業をさせようとすると以下のようになります。
Aさんに比べてBさんは1作業あたりの反復回数が少なくなるので、仕事を覚えるのが遅くなる場合があります。
ここに個人の要因が加わると、さらに仕事を覚えるのが遅くなります。
確実に仕事を覚えてもらうには、相手に合わせて作業を分解し反復作業をさせることが大切です。
行動を分解して反復させる
行動科学マネジメントでは、自分のやり方を客観的に見つめ直す方法として、「行動分解」という方法を重要視しています。
“一連の行動”を一つひとつ分解して、どこに問題があるのかを探るそうです。
例えば、「ペットボトルの水を飲む」ことを一つの行動だと思っていますが、行動分解してみると、以下のように、小さな行動の積み重ねによってペットボトルの水を飲んでいることが分かります。
↑この一連の仕事は分解すると3工程に分かれているのが分かります。
時間の短いBさんはまず工程1だけを何度も反復させ、確実に覚えてから徐々にできることを増やしていくことが大切です。
余談ですが、私は中学生の時に吹奏楽部に所属していて、チューバを担当していました。
10キロ以上ある楽器で、音を出すだけでも大変なのですがコンクールの楽譜はこんな感じです。
さらに50人の部員に対してチューバは私1人。コントラバスもいません。
まずは最低限、楽器を鳴らせるようにならないといけないし
50人の音を支えられる大きさまで鳴らせるようにならないといけないし、
この楽譜にある音域まで鳴らせるようにならないといけない。
(写真にあるようにボタンは4つしかありません)
肝心の楽曲の練習もしないといけない。
そこで私がまずやったことは、マウスピース練習(基礎練)の強化です。
1年生は担当楽器が決まったら最初の1ヶ月間はこのマウスピースを鳴らす基礎練習をひたすらやります。
この基礎練をおろそかにしていると、楽器はスカスカの小さい音しか出ません。
この状態で楽曲の練習や音域を広げる練習をしても、結局スカスカなわけです。
楽曲の練習もしないといけなかったけど、あえて基礎練に全振りしたことで50人を余裕で支えられるだけの力強い大きな音が出せるようになりました。(当時身長155センチ、体重も40キロくらいの小柄体型でしたので相当驚かれました)
その後に音階練習、そのあと楽曲練習という流れでコンクールに間に合わせることができました。
あれもこれも、やらないといけないことは山のようにあったとしても、まず最初の一歩(基礎や第一工程)を確実にこなすことが大事なんだと学んだ出来事でした。
その人に合わせた目標設定も大切
人によって修得度に差が有ったり、労働時間にも差があるスタッフがいる場合は目標設定の方法も大切です。
みんなを四番バッターにしようとすると、教える方も教わる方も、フォローする周りも辛くなってしまいます。
この人はどこまでできればOKなのか?
個々に設定し、リーダーとメンバーで最初にしっかりと認識を合わせることで
「私はこんなに頑張ってるのにあの人が足を引っ張ってくる!」
「私のせいでみんなに迷惑をかけて申し訳ない...」
といったギスギス感はなくなるのではないかと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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