007 ビジネスはけっきょく「言葉の組み立て」である
もしかしたらビジネスとは言葉で出来ているのかも知れない、そう思った時からビジネスの組み立て方が、スッと理解できた。
数多くの経験により蓄えられた「暗黙知」を何とか言語化し、その言葉をつなぎ合わせて新しい知識を生み出し、仕組みにしていく。
まさに野中郁次郎氏のSECIモデルそのまんまだけど、これがイノベーションのみならず、マーケティングや組織にも当てはまると感じている。
イノベーションは言葉で出来ている
イノベーションとは「人類が新しい概念を生み出すプロセス」である。
それは創造性や発見のプロセスとも関連している。
創造性や発見は、①問題意識、②情報収集、③結びつけ、④創造的思考、⑤実証と評価、⑥共有と発展、のプロセスを経て現れる。
①問題意識
新しい概念を生み出す最初のステップは、問題や課題に対する意識を持つことである。
問題意識を持つことで、既存の方法やアイデアでは解決できない課題に対して新しい概念を模索する動機が生まれる。
留意点は、同じ現象を見ても問題意識を持つ人とそうでない人がいる点だ。
ここに興味・関心、価値観、知識や能力、目標など、人の資質が現れる。
②情報収集
問題意識が芽生えると、関連する情報や知識を収集したくなる。
インターネットの検索、書籍の調査、専門家へのインタビューなど。
既存の知識やアイデアに基づいて新しい概念を形成するための材料が揃う。
問題意識同様、調査する者の興味・関心、価値観、知識や能力、目標などにより、調査方法、調査範囲、調査の深さなどは大きく変わる。
③結びつけ
収集した情報や知識を結びつけることで新しいアイデアや概念が生まれる。
異なる分野や概念を組み合わせることで新たな視点やアプローチが生まれることもある。
注意してもらいたいのは、イノベーションは「情報や知識を結びつけ」である点ことだ。
スマホも、ドローンも、EVも、過去の知識の積み重ねとその結びつけによって生まれている。
じゃあ何と何を結びつけるのか?
それを決めるのは、問題意識を持った個人である。
④創造的な思考
創造的な思考とは、アイデアの発散と収束のプロセスである。
アイデアの発散は、多くのアイデアを自由に出し、多角的な視点を持つこと。
アイデアの収束は、出たアイデアを評価し、絞り込んで具体化すること。
これらは一人でやろうとしてもなかなかできるものではない。
同じ問題意識を持つ者たちとブレインストーミングなどをしたら良い。
④実証と評価
新しい概念を実際の状況や実験に適用し、その効果や有効性を評価する。
例えば、試作品を作って誰かの感想を聞くとか、もしくはテストマーケティングをするなどである。
実証と評価によって概念の改善や修正が行われる。
本当に素晴らしいものだったら、この時点で評判になるはずだろう。
⑤共有と発展
もし、その試作品がそこそこ高い評価だったら、さらに賛同者を広げる努力が必要になる。
この時点で市場展開することになる。
そうすれば、今まで以上に他の人の視点やアイデアが集まり、新たな洞察を得ることもできる。
それは顧客やユーザーだけでなく、マスコミ、研究機関、様々な専門家なども含む。
そして、そこから次なるイノベーションへと発展させることも可能になる。
マーケティングを言語化する
思う以上にビジネスは「言葉」で出来ている。
例えば、マーケティングを分解すれば、次のようになる。
【市場理解】市場というはっきりしないものを言語化する
【戦略立案】その市場に適応するための方法を言語化する
【訴求行動】潜在顧客にこちらの存在を言語化してもらう
さて、どうだろう。
もちろん言語化していなくても購買行動につながることはある。
五感で感じたままに購買行動に移る人は少なくない。
でも、それは子供や直感の鋭い人などに限られているだろう。
市場規模の大きな商品のほとんどは、言語的に作られており、言語的に訴求されている。
思い出してもらいたい。
スマホを選んだ時、直感で選んだか、それとも言語で理解して買ったか。
たぶんみな言語的理解の末、選んだと思う。
組織も言葉で出来ている
マーケティングやイノベーションだけでなく、組織だって言葉で出来ている。
たとえば、まったく言葉をしゃべらない人が100人集まったとしよう。
手話やパントマイム(これらも言語の一種)もせず、本当に一切言葉を交わさなかったらどうだろう。
たぶん何も始まらないはず。
言葉が無いと始まらないってこと。
もちろん動物の群れのように、言葉は無くても集団化することはある。
でも、それを組織と呼ぶことができるだろうか?
じつは組織には3つの要素があると言われており、この3つが伴っていなければ、組織とは言えない。
このうち最初に必要なのは「共通目的」だけど、これこそ言葉でできている。
組織もけっきょく言葉なんだよね。