満月
とある夜
そこに一つの影があった、いや、実は宵闇に隠れてもうひとつ、ぽつんと影があったのかもしれない。
それは動物なのかそれとも………
俺はただただの散歩してふと路地裏をみてその人影を見た。
たったそれだけなのだがそれがどうしても気になった。
とりあえず寝る準備を終わらし、ベッドに横たわり、私は先程の路地裏で見つけた影をもとにひとつの妄想を膨らませる。
一般人によるただの連想ゲームだ、ひとりでもできるしベッドに横たわりながらでも出来る、これは昔からこういうのを寝る前に何故だか、やっていた。
それはさておき、路地裏で一人の人間がいたその後の展開をちょっとファンタジーっぽく妄想を膨らませてみる。
大体こういうときは幾つかパターンがあるのだが、今回は主人公目線な気がする。
私は週末にいつも同じ時間に散歩をする、夏には夕方がおちる方向に一番星を探しに向かう、この地域は海と山が見え、マニアックな観光客なら一度は行きたいくらいの小さな町、住むにもストレスがなく、散歩には適切だと思う。
なんとなく今日は憂鬱な気分だった、周期的に来るもので、これが浪人の宿命なのかはたまた、自分の本質に関わるものなのかはわからない。
思い返せば学生の頃は入院生活の記憶しかない上、唯一の友人といってもほぼ仕事上の(といってもネット関係のものだけど)相方位の関係、ある意味友人がいなかった、十数年の人生、日常経験は正直薄い、気が付いたら終わってたの連続でやる機会がなかったかったしなにも疑問にも思わなかった。
そんなことを思い自分の心の傷を抉るこれを思うもはじめてではない上、物理的な痛みがないから何も感じない。いや、ちょっとは辛い。
ふと見上げる、そこには金星らしきものがあるそういえば、金星はルシファーにも例えられているだとか、ルシファーは確か、大天使から堕天使に堕とされたとかそんな気がする………
どちらにせよ、まだアイデンティティがあるだけいいような気がするな、私は個性がないままそのまま堕ちた身だから。
…………
なんか鬱々しいな、我ながら酷いものが出来そう。
とりあえず見てみようと目を閉じながら妄想を続ける。
するとまた映像が映る、さっきの場面からすこし時間がたったみたいだ………
私は気が付くと家にいて、今回は主人公目線で実際に主人公を動かせるようだ、生かすも、殺すも俺次第だな、これ。
俗にいう、明晰夢の部類だ。
それでも頭に響くネガティブな思想はバッドエンドに誘わんとする、声が数多に聞こえる、まるで、という言葉をつかわずとも悪夢なのは明確。
さて、どうしろというものか、因みに今は包丁が目の前にある、状況的に考えると他殺か自決のどちらかだろう。
まずはここから離れるのが先決だ。
ドアを開け、空を見上げる
そこは何もなかった、他に何者にも例えられたない空っぽである、空って何故空っぽともいうのか、それは何時から生まれたのだろう?
そんなことを思うも本体は綺麗な満月が見えるとのこと。
そうか、俺の夢だから人によってそらの見えかたが違うのか
全ての状況を操れはしないかな?
ためしに空に適当な雲を想像してみる
すると雲がぽっと現れた。
なるほど、雲は操れるのね、どこまで行けるか色々ためしてみた。
食べ物などを無から産み出してみたり、天気をつかったりした
だけど全ては操れないらしい、主に地形や自分のタイミングで物を瞬間移動させることは出来ないらしい。
突然、カラスが目の前を通り見えた景色は枯れた大地だった。
草だった物が全て枯れような景色が無限に続く………。
また、一瞬にして景色が元に戻り、次に見えたのは人が倒れ、自分の首にナイフを刺しかけていた。
その光景と手の感触は目の前によこたわっている、この体を刺したという状況がひしひしと伝わる、空気が揺れたような気がする、根拠などの理屈からくるものではい、全うな本能から来る恐怖をのみこみ、恐る恐る、膝の上から床にわたって倒れている、体をひっくり返しすと、そこは、自分がよく知る人の遺体だった。
誰とは言いたくはないが、どちらにせよ、これは嫌な夢だ。
これはどう考えても自分が操れない状況なのだが、取り敢えず生前の姿を必死に想像した。
来るのは悲しみだけ
それ以外には何も起こらなかった
当然だ!と言われたらそこまでだが、これは夢だと言うことも分かっている。
少しは抗わせて頂きたい。
それでも、この鼻に待とう死肉特有の匂いはまるでここが現実であることを主張させるようだった。
ここは夢とはいえ、例え俺の妄想半分の世界とはいえ、そこに生きているのは事実なのか?
ふと、疑問がよぎる
正直、そんなことを思うのは初めてだった。
これにたいしての思考をすすめていると。
体は勝手に動き始め、立ち上がり、歩きだした、右手にナイフを握りしめながら。
ふらつきながらも外を目指して歩き続け、音沙汰もない沈黙を足音がかき消す。
ガチャ、ぎぃぃーー
カタ……カタ……カタ………カタ………タ………
静寂な森を連想させる風景、そこにたっている一人の○○、頬を吊り上げ笑ったような声をあげ、寝転がってナイフを右目からゆっくりと押し込めば押し込まれるほど尋常じゃない痛みが更に来る、まるで俺に向かって刺しているようだった。
刃物を通り越すくらい差し込んだあと、今度はゆっくりと引き上げ、今度は左に刺し込む心臓も両目を刺され続けような感覚には同様を感じる暇もなかった、逃げ出そうにも思うように動けない。
「またおいで………」
そんな言葉を最後に耳を貫いた後、生々しく目蓋を開けた感覚が生まれ、いつもの光景がみえ、窓際には光がさす。
どうやら朝になったようだ、視線を掛け時計に反らす。
針は7時30分台を刺していた。
俺は仕方なく、あくびをしながらベッドを降りた。
外は至って平和で小鳥やカラス、そして無邪気に言葉を交わしながら通学をする、小学生らしき声が微かながら耳に届いていた。