猫の僕らが紡ぐ、おっとり父さんとあわてんぼう母さんの話 4
♡かあさんのバイオリン♡
さて、今日は僕、ゆきの番だよ~。始めるよ!みんなよろしくね。
かあさんが、大きくなってお勤めしていたところでは、「きっちりお仕事&上司の喜ぶ自己主張」っていうのが必要で、この自己主張がかあさんは苦手だった。
で、ある日なんやかんやで「脳みそバーン」になって、はあ、はあ、って言いながら寝てるだけの生活になったけど、少しずつ良くなったのは知ってるよね?
かあさんは会社はもういいや、って思ったんだって。今まで〇〇年働いたけど、まともに報われた気がしない、これからは自分で自分に報いてあげよう、と思ったんだね。好きなことがしたいって。
そして、何故かかあさんは持ったこともなかった「バイオリン」っていう怪物をある日持って帰ってきた。とうさんのお姉さんが持っていたバイオリンを少し修理したやつで、これからこれを練習するんだって、嬉しそうだった。
かあさんはこれからの長い毎日を考えて、何かやろう。何がいいかな?小さい頃ピアノを弾いてたから楽譜も読めるし、アウトドア系の人じゃないから、音楽がいいと思ったんだって。
先生ももう決めてた。いろんな先生のHPや照会ページを何度も何度も見て、この先生にしようって、今の先生にメールして体験レッスンに行った。
それからだよ!僕らの地獄が始まったのは!
かあさんがバイオリンを抱えてへんな長い棒を引っ張ったら、僕らにとってものすごく嫌な音がした。「キキィ-ギギィー」
ぎゃー!僕らは一目散に逃げた。な、なんだ今の!まるで怪獣の鳴き声だよ!
かあさんは我が家に恐ろしい化け物を持ち込んできた。かあさんがそいつに触るたびに「ぎーぎーがーがーしゅーしゅー」と聞くに堪えない音がした。
僕らは、音のしている間中隠れていた。うー、怖いよう!
それから今の家に引っ越して、かあさんは仮面ライダーみたいにバイオリンを背負って、毎日近くのカラオケに行って練習するようになった。万歳!猫神様、ありがとう!!
なのに、なのにコロナってやつでそのカラオケが閉まっちゃったんだって。かあさんは音が小さくなる弱器を買って、家の片隅でひっそり練習するようになった。
音は相変わらずひどかった。かあさんも実のところ最初の2週間くらいは頭を抱えていたらしい。こんなにわからないものだとは思わなかったって。でもとうさんに「1年は続けるから!」と大見えを切っていたので、辞めなかった。もう助けてー!(ちなみにとうさんは少しバイオリンをやったことがあったので、1年も持たずに辞めるだろうと思っていたらしい。とうさんのかんがえることはいつも甘い。)
かあさんは、かあさんなりに工夫してた。大きな鏡を買ってもらってそれで自分の姿勢を見ながら、毎日そんなに長い時間じゃないけど、せっせと練習してた。でも相変わらず音はひどかった。練習のたびに僕らは逃げる。そして、仕事をしているとうさんもパソコンを持って逃げてくる。
そんなこんなで2年くらいが過ぎた。
さすがのかあさんもいささかがっかりしてた。でもさ、おかしなもので、バイオリンの先生の紹介してもらった整体が体に合ったみたいで、肩甲骨とかが自由に動くようになって、かあさんも知らないうちに少しずつ変化はしてたんだね。かあさんはやっと少しだけまともな音を出せるようになった。
もともと神経の図太いまるは、5分くらいならかあさんのバイオリンを聴けるようになった。僕?僕は無理だよ。ぜーったい無理!僕は繊細なんだから。
かあさんは先生のところで1,2を争う下手な大人だけど、たまに上手に弾けるととても嬉しいんだって。先生は厳しいひとだけど、こんなおばちゃんでもあきらめずに(いや、もうあきらめてると思うんだけど)教えてくれるって言って感謝している(たまにぶちぶちとうさんに何かこぼしてるけど、かあさんの名誉にかけてそれは絶対内緒)。
あ、今日もかあさんの練習が始まる!恐怖恐怖!隠れなくちゃ!
それじゃあまたね。次はまるの番だよ。また見てね~(=^・^=)
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