「違う自分」になりきること
北海道の地震以来、ぷっつり糸が切れて、日常を生きていないような感覚がしばらく続いた。
人に会うとハイになり、一人になると何も手につかないほど虚無になる、という状態を度々繰り返している。
人といれば「機嫌のいい自分」になるのは容易い。東京には雰囲気がよくて気楽に入れるお店がたくさんあって、だから私は気分がよくなりすぎてしまう。
ちょっとずつ非日常の要素を加えながら、私はそれを楽しむ。だけど、毎回駅の改札口で別れて、一人の自分に戻っていくとき、胸がつぶれそうになる。
別れた相手に対する恋しさではない。
合格点の付いた「機嫌のいい自分」がしゅるしゅると小さくなって、「無力で退屈きわまりない自分」に戻ってしまうからだ。
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