歴史の神様が宿る焼き物「赤膚焼」
昨年の10月に奈良に旅行に出かけた私。天武天皇が発願し建設した薬師寺に行ってきました。
薬師寺はその伽藍配置がただただ、整然として美しく、
白鳳時代の建築美術の最高傑作だと私は思います。
薬師寺を見学した後、薬師寺の側にある喫茶店 西ノ京珈琲さんに寄ったのです。
そこで「赤膚焼き」という焼き物を初めて目にしました。
赤膚焼きは明るい灰色に発色する釉薬がかかっていて
素朴な感じのする焼き物です。
そこでコーヒーを飲んだ後に、
「赤膚焼き」に興味を持った私は、
薬師寺の近くにある赤膚焼きの窯元を訪れてみたくなり、行ってきました。
赤膚焼きの窯元は何軒かあって
そのうちの一軒にお邪魔したのですが、
伝統的な登り窯を使って焼成していることに私は感動してしまいました。
お話を伺ったところ
ここの窯が壊れてしまった際に、奈良県立橿原考古学研究所に相談して再建したそうで、大切に受け継がれてきた登り窯だと感じました。
さすが、奈良県だけあって歴史的な文化財を守る意識が高い地域だと感じます。
登り窯を使って焼成している、という窯元はだんだんと数が減っていて、率直に表現すれば絶滅してもおかしくないくらいです。
それくらい電気窯と比較して維持管理と焼成の手間がかかります。
現役の登り窯を見学できたことに感動しました。
ところで、
この窯元の焼き物で私の目が釘付けになったものがありました。
それはこちらの「馬上杯」。
盃なのですが、
どう見ても、
これはあれに似ている・・・・・。
いや、
あれに違いない!
まさか・・・・
あれが
このように形を変えて
現代に受け継がれているとは・・・・・。
本当かな・・・・?
考えた末に質問をしたところ
「これは伝統的に作られてきた形です。」
とのお話でした。
実は私の頭に思い浮かんでいたのは、5世紀に作られ始めた古墳時代の須恵器の高坏。実際の写真がこちらになります。
まさか、古墳時代の意匠が受け継がれた杯があるとは・・・・。
高坏の足の部分に空ける透かしが長方形と三角の形をしているところがとっても怪しいです。
類似性があります。
・・・・さっそく買い求めました。
この馬上杯には歴史の神様が宿っているに違いない、と感じます。
とても良い奈良・薬師寺への旅でした。