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ベルばら考①新作感想

劇場版アニメ新作の『ベルサイユのばら』を観て来た。
前にも書いたが私は原作リアルタイマーで、他媒体は受け付けない、ゴリゴリの原作至上主義者である。
だから今回の作品にも多少懐疑的で迷いもあったけど、一応観ておいた方がと思った。

これを機会に少し、ベルばらについて書きたいことを記しておこうと思う。
先ずは映画の感想。

結果的には原作にかなり寄せた作品になっていて、その点はすごい頑張ったんだなぁって評価したい(何様だ)

そもそもあの長く波乱に満ちた物語を2時間程度に収めること自体が難しいのでそこがどうなるのかが一番の懸案事項だったが、様々なエピソードをミュージカルタッチで軽く流す事で補うという手法を取っていた。

これは個人的にはあまり感心しなかった。単にプロモーションビデオ的な物を挟まれてたようにしか見えないのだ。
いわゆるトレーラーと言うんですか、YouTube等で予告編のように流れていた物がそのまんま本編で流れたのには驚いた。
え、これ宣伝用じゃなかったんですか。もしくは円盤化した時に入れる特典映像では。てか、こーゆーのを入れてファンサービスしましたよ的な?

うーん、それに時間を割いた分、短くとも他のエピソードをドラマ部分に入れ込めたのでは。尺の問題で仕方ないんでしょうか。
確かに、何かと台詞で説明するのではなく視覚に訴える作りにするのは映画としてはとても良いことである。
だが、こちらは原作読み込んでいるから理解出来ても初見の人には疑問符が浮かんだところも多いのでは。よくわからない英語も入ってるので余計にPVぽくなったような。音楽に感動したという人には訴えるものがあったのかもしれないけれど。

絵柄も原作に寄せたんだろうけど、人物造形に関しては多少違和感が。寄せようとした為のキラキラ感が過剰に見えた。
目の星とか、そんなところに力入れなくてもいいよね。アニメならではの表現の仕方だってあるのに、そう思った。

ただ、それ以外の背景などはとても美しいし、パリの平民の貧しさとのコントラストはカラーならではの効果があった(ここらへんはモノクロの原作基準で考えるので)

今回のアニメ化は、昔のTVアニメ化されたものと実写映画化されたものに対してのアンチテーゼがあったように思う。

何と言っても、オスカルの持つヒロイズムにかなり焦点を当てていたところ、原作ファンにとってこんなに嬉しいことはない(少なくともTVアニメと実写はその辺りかなり変えられていて愕然とした。なんじゃこりゃああ、と松田優作になったもん私)

作者の池田理代子先生がオスカルに託したものをきちんと描かれてたってこと。
オスカルはジェンダーの壁を超えて、ひとりの人間として信念を貫いて生きた。かつてのTVアニメと実写映画には明らかに欠けていた、改変をされたその部分が、今回はしっかりと描かれていた。
ある意味、ベルばらにとって一番大事なところなのだ。
だから白旗の場面はグッと胸に迫るものがあった。そこら辺はとても良かった。

ところで私はアンドレが好きだ。
今回のアンドレは残念ながらあまり魅力的に感じられなかった。あくまで私には、であるが。
じっさい、オスカルが最終的に彼に身も心も委ねるまでの経緯が薄っすらとしていて、結ばれるシーンなど、とってつけたように見えてしまった(胸板とかもファンサービスですか)

原作においては、アンドレの存在感がオスカルの中で徐々に大きくなるところは読者もそれを追体験するような形になってたから、いつ結ばれるんだろう、とワクワクしたものだ。だからこそ得られたカタルシスがあった。リアルタイマーゆえか。
それとも劇場版にそれを求めるのは無理なことだったのでしょうか?

と、惜しいところが目に付いてしまうのだが、この作品に初めて触れた、特に若い人には、是非とも原作漫画を読んで貰いたい。TVアニメよりも先ずは原作を。
そういう入門編としては良かったのかなと思う。

なるほど、原作へのインビテーションとしてのプロモーションだったとしたら大成功と言えるかもしれない。




#ベルサイユのばら
#ベルばら





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