『今夜、宇宙の片隅で』にアンドレを見た
現在TVerにて再見している。
当時、三谷幸喜が、シナリオ集をこの作品だけは出す、と知った時に、これは絶版になるかもしれないと思い買っておいた。このドラマが大ヒットには至らず一般受けしなかったのはわかる。私のような映画ヲタが見てる分には面白いけど、そうでもない人にしてみれば大して響かなかったかもしれない。
実は私の中でも、他の作品に比べて「大好き」とまではいかないんだけど、シチュエーションが私の好きな映画を踏襲してる部分など心くすぐられる。主人公を演じるのが西村雅彦というのも良い。更に拾い物だった梅野泰靖(ベテランに対して失礼な物言いだが)がいい味を出している。
ただ、これは個人的な好みの範疇なのだがあとのふたりがもうちょっと違う人なら、という気持ちがあるので「大好き」に至らなかったのかも。
とはいえ再見してみるとやはり面白い。
恋する女性に対して、その気持が純粋な故に、どうしたら振り向いてもらえるのかと、つい変な小細工をしてことごとく裏目に出てしまう、その可笑しくも哀しい主人公が愛しい。一般受けしなかったとはいえ、そこら辺に共感した人は一定数いると思う。
ともかく主人公が口にする数々の映画のエッセンスが散りばめられているのが本当にツボである。『あなただけ今晩は』『お熱いのがお好き』『七年目の浮気』『ニノチカ』等々。殆どビリー・ワイルダーだな。
そして一番土台にあるのは『アパートの鍵貸します』なのだから、この作品は自分の中でも特別感があるのだ。
ある時、小細工がバレて主人公は
彼女を怒らせる。「そういうことは面と向かって言ってよ」と言われ、彼は意を決して告白する。
そこで「僕はあなたを幸せにする自信がある」って言うのだ。
そこまで言うんだ、やったね!とは思った。でも。
彼女は不倫して傷ついて立ち直ろうとしてるところだし、しかもどうやら主人公の友人の方に惹かれてるようで、その友人も女にだらしない男。
彼らと比べても、確かに彼女だけを見つめている男性を選ぶ方が幸せになると思える。
とはいえ、そこは、彼女が彼をちゃんと恋愛対象として見なければどうにもならない。いい友達の関係というだけでは先に進まない。
と、この辺りを見てて、またアンドレの存在がチラついてきた(アンドレとは、ベルばらの登場人物である)
アンドレはオスカルの幼なじみで従者で親友としても信頼されているが、それ以上の関係になりようがない。そもそも2人の間には身分差というものが横たわっているし、オスカルは他の男に心をとらわれている。
彼は彼女にとっておよそ恋愛対象ではないのである。
しかしアンドレは、自分に貴族の身分さえあれば堂々とプロポーズして、それが叶うとすら思っている。控えめなようでいてなかなかの自信家ではないか。
長年側にいて誰よりも彼女のことを理解しているのは自分だという自負があるのだ。
そして最終的にオスカルの言葉として、武力に長けるよりも心優しくあたたかい男性こそが真に男らしいのだと語られる。
本作の主人公も「心優しくあたたかい」ことでは引けを取らない。間抜けだけど。そして彼女を愛することに対しては自信がある。
話がかなり逸れたが、私のツボは主人公がそんな男だからという部分もあるんだな、と改めて思った。
さて、7話時点で告白して少しいいムードになったとはいえ、このあとひと波乱あるのだが、それはまた別の話。。。
#今夜宇宙の片隅で
#三谷幸喜
#アンドレグランディエ
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