久しぶりの五感のフル活用
妊婦健診の帰り道。
ふと、残り少ない自由な時間を使って、久しぶりに出かけてみようと思い、近くのギャラリーに絵を見に行くことにした。
時計をみると、思っていたよりも検査に時間がかかってしまっていたのか、11時半をまわっていたので、ギャラリーの近くにできた新しいカフェで、先に腹ごしらえをすることに。
駐車場の側に公園があったので、公園の中を少しだけ歩いてからカフェに向かった。
思えば、お腹が重くて歩くのが大変になってからは、ほとんど家から出ることがなくなっていたので、久しぶりの外の空気はとってもおいしかった。
公園には立派な梅の木があり、既に開花が始まっていたもんだから、季節の移ろいを感じる瞬間に出会えてほっこり。
カフェに入ると、ランチタイムは一番乗りだったようで、どきどきしてしまった。
ランチは、ポタージュスープ付きのホットサンドプレートを頼み、サラダに添えられていた食用のパンジーがとても可愛らしかった。
妊婦になってからは、カフェインを避けていたのだけど、一杯くらいならと、これまた久しぶりにコーヒーを飲んだ。
コーヒーの香ばしい匂いに、ほろ苦い味が体に染み渡る〜。あぁ美味しい。
満腹ですぐには動けそうに無かったので、本を読みながらゆっくり過ごす。
区切りの良いところで、本を閉じて、パッと店の向かいにある駐車場を見ると、黄色いボールが転がっていた。
風に吹かれてゆらゆら動くボールは、なんだか道に迷った子供のようで目が離せない。
通りを歩く人は、ボールを一瞬見るけれど、そのまま通り過ぎてしまう。
あぁ危ないとか、どこから転がってきたのだろうかなどと考えているうちに、一台だけ唯一とまっていた車の持ち主が現れ、運転席に乗り込む。
車の持ち主はボールに気づいておらず、後部座席に連れの方が乗るのを待ってる様子。
そのとき、ボールが前輪タイヤの後ろに、すーっと入り込んだもんだから、一瞬、「行かないで」とボールが2人を引き止めている様に見えてしまった。
結局、その後すぐに通りがかった人がボールの存在を車の持ち主に伝え、車に巻き込まれることはなかった。
黄色いボールは、通りがかりの人の手によって、伊予柑の木の下にある鉢に置かれた。
まるで大きな伊予柑が木から落ちて、そこにあるかのようだった。
なんだか、物語の一部始終を見たようで、不思議な感覚。
お腹の具合もちょうど良くなったので、早速ギャラリーに向かうことにした。
ここのギャラリーは、昔からあるのだけど、私はギャラリーの存在自体を最近知った。
長年住んでいる街でも、知らないことがまだまだあるんだなぁ。
飾られている絵たちの多くは、武将や騎士など戦いに関わるものが多かったが、最後だけ空を飛ぶ馬に乗った人が描かれている神秘的な素晴らしい絵だった。
なんだかこの日は、現実と空想の世界を行ったりきたりしているようで、不思議な感覚。
久しぶりに歩いた割には、お腹が張ることもなく、充実した1日であった。
五感をフルに使うことが最近あまりなかったので、とても気持ちの良い1日でした。
できればまた、出産までの猶予があるうちに、近場を散策してみようか、と、何日か後に思っていたら、始まりました。
どうやら、私の自由時間は終わりを告げたようです。