超年下男子に恋をする⑰(超年上女が聞き上手な理由は年がバレたくないから)
彼と会話をするときは、ほとんど彼にしゃべらせていた。
「なんでそんなに僕の話ばかり聞いてくれるんですか?」
と彼は言うけど、別に私は聞き上手というわけでもないし、それを狙ってたわけでもない。
恋をしているとみんな自分の話をしたがる。もっと自分を知ってほしいと。そして相手のことも聞きたがる。
なのに彼に恋する私が自分の話をしない理由。
答えは簡単。
年がバレるから!
年代がちがうのだから、興味も話題もちがって当然。正直、向こうが言っていることなんてほとんどわからない。
向こうだってわかるわけがない。
そんな私たちが唯一話ができるのが漫画やアニメの話ぐらい。
ただ、彼はそれほど漫画好きでもないのでほとんど昔の名作など知らない。好きなのは今の流行りもの。その当時でいうなら「鬼滅の刃」。
全巻持っているというので「貸して」と言ったら貸してくれた。
重いので車で受け取るって話で、バイト帰りに送って受け取った。
でもこれかなり短い期限だった。
週末に会う友達に貸すからその前に返せという。
その友達に貸した後だといつ返ってくるかわからないという理由。
数日で全巻読破しなければならないので睡眠時間削ってまで読んだ。
汚さないように手袋までして。
やっとできた共通の話題が鬼滅の刃。
彼は友だちと映画も見に行ったらしい、ダメもとで私とも一緒に行ってと頼んだらあっさりOK。まあでもそのあとコロナ理由もあって行けなくなったけど、漫画借りて話題共有してからの映画はいまだに王道なんだと思った。
でもやっぱり彼は無神経で、私が彼と二人で映画に行きたいという想いはわかってくれなくて、夕夏と行けばと言ってくるので、みかねた夕夏が
「山田さんはあんたと行きたいんだよ!」
と言ってくれたけど
「え? そうなんですか?」
ととぼけてるのか嫌なのかよくわからない反応。
だんだん私は傷つくことも増えてきた。
もうこの頃は一緒に帰るのは当たり前で、彼は私が着替え終わるまで必ず待っていた。周りからも付き合ってるのかと言われた。
そして帰りの車内で色々な話をする。
彼が私に質問してくることはないけれど、突然何気ない会話の中でいきなり言われた言葉に傷ついた。
「山田さん、彼氏とかいないんですか?」
探ってるとかそういった感じではない。
本当に何気ない会話で、「朝何時に起きました?」ぐらいな質問。
そう聞いたところで、こちらがどう答えようが、「へー」ですむぐらいのこと。
そんなふうに、会話のつなぎみたいな感じで、どうでもいい質問としてそんなこと聞いてほしくなかった。
私が好きなのは彼なのに、なんでそんなに他人事なのか。
彼をいつもの場所、マンションの裏で降ろした後、信じられないことに涙がこみあげてきて泣いた。泣きながら運転した。
あー本当に私は彼にとっては恋愛対象外で、どうでもいいんだなぁと強く思った。
そしてそれと同時に、私は本気で彼のことが好きなんだと思った。
深く傷つけられるほど。