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超年下男子に恋をする㉛(犬系年下男子の可愛さにいとしさが止まらない)

 犬系男子と猫系男子、どっちが好きかと言われれば、断然私は犬系男子! そもそも私は長年犬を飼ってたぐらい大の犬好き。

 でも私の元旦那は完全に猫タイプだった。いつも黙っていなくなるし、夜中は帰ってこないし、誰かが家に来ると消えるし、二人で一緒にご飯も食べてくれなかった。

 彼も自分のことは「気まぐれ」だと言うし、慣れきってしまった私に対しては勝手でワガママな面も見せるけど、気づいたらいないとかはまずない。

 そして彼が犬だと思う決定的な出来事があった。

 ある夜、私もミワもバイトが休みの日、仲良くしていたバイトの女子高生が最後に店にくる日だったので、3人で客として店に晩御飯を食べにきた。

……というのは表向きで、その女子高生は好きな社員に最後会いに来たし、ミワも羽田が目当て。そしてその日は彼も出勤だった。

 結局ラストの時間までそのまま店に残った。それぞれ目当てがいたからだ。

 でも私は、一応女子高生に「最後にご飯食べましょう」と言われたから来たわけで、付き合いで残ってはいたけれど、特に彼とは話そうともしていなかった。

 そして社員のそばで華やいでいる女子高生たちとは離れた場所に一人座り、解散の頃合いを見て帰ろうとしていた。

 すると仕事を終えた彼が、私のそばに駆け寄ってきて

「山田さん、お待たせしました!」

と言った。

 どこかはにかんだ笑顔で、照れ臭そうにしている。

 どうやら彼は私が彼を待っていると思ったらしい。

「え、私が車で迎えに来たと思ったの?」

そう聞くと、

「はい!」

と彼は満面の笑顔。

 そんな顔を見せられたら、もう送るしかない。

 そして私は彼と一緒に休憩室に上がった。

 この時私は床までつきそうな古着の長いスカートを履いていた。階段で何度か裾を踏んでしまい、両手でスカートをたくし上げていた。

すると彼が

「その服、ウェディングドレスみたいですね」

と言った。

 おそらく何も考えないで言っているんだろうけど、私はドキドキしてしまった。

 私は元旦那と結婚式はあげていない。特に望みも望まれもしなかった。だからこんなドキドキも味わったことがない。

 元旦那では想像もしなかったこと。一緒にドレスを選んだり、写真を撮ったりなんてこと……楽しいだろうなと思った。

 彼は無自覚に私の心にポッと明るい灯をともす。

 急な階段を降りる時はいつも私の先を降りてくれて、私が足をつった時は腕に捕まらせてくれる。

「盲導犬みたいだね」

と言ったけど、犬は靴まで履かせてはくれないだろう。
 彼は私の荷物をもって、靴も運んで、履かせることまでしてくれる。もちろんその時私は自分でそれができない状態だったからで、まあほとんど介護みたいなものだけど。

 私を車に乗せる時も、抱きかかえるようにして座らせて、片方ずつ足をもって、大切なものを扱うようにしてくれた。そんな彼の手が好きだった。

 一緒にいることが当たり前で、気づいたらそばにいてくれる。死んだ愛犬にそっくりだ。

 普段そっけなくしたりワガママ言ったり、私に気を遣わなくなっても、私が皿を割ったり、落ち込んだりした時には一番に気づいて駆け寄ってくる。その時も救助犬みたいだった。

 私にとって彼はゴールデンレトリバーみたいな温厚で優しい大型犬。若いから少しやんちゃでワガママなところはあるけれど、決して遠くへ逃げたりしない誠実な犬。

 でもそんな犬男子の彼にむしろ私が犬だと言われている。

 彼の無神経発言にまたまた私が傷ついて、ちょっとそっけなくした時、

「えー、どうしたんですか? いつもなら犬みたいにしっぽ振って僕のところにくるのに」

とニヤニヤ笑って言われた。

 私たちはお互い相手のことを犬みたいだと思っている。

 私と彼のいつもの言い合いも犬同士のじゃれあいみたいなもの。

「何その言い方!感じ悪っ!」

と私が言うと

「感じ悪っ!」

と私の物真似をして

「似てないよ!」

と私に軽くぶたれて

「似てないよ!」

とまた物真似してへへへと笑う。

 私たちは女子高生たちにまで「小学生」とよく言われていた。

 でも私は、彼女たちが夢中な遊び慣れてる社員と話すより、彼とのガキくさいたわいないおしゃべりが好きで、それはやはり私が彼より超年上だからなんだろうなと思ってしまう。

 若い女子はガキ臭い同級生男子には基本塩。
 でも女子高生から見れば大人な社員たちも大人ぶってるだけのただのガキ。年上女は「大人ぶったかっこつけ」よりも「無邪気な少年らしさ」に弱い。大人の仮面をつけた世界に少々疲れているからだ。

 社交辞令や処世術に長けていたとしても惹かれる要素は何もない。むしろ透けて見える考えと隠しきれない幼さに愛しさがあふれてくる。

 ただ寄り添ってくれる温かいぬくもりがほしい。

 わかりやすさが何よりだ。

 もうすぐ冬が来る季節。

 私は彼の温もりを求めていた。

 








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