超年下男子に恋をする㊿(より多く好きになったほうが負け)
翌日は、マウント女子高生カリン企画の彼のお別れ会。
本当は焼肉が食べたかったと彼が私に言っていたので、ミワに頼んで焼肉屋に変更してもらった。
私はその日バイト。
昨日の今日だし内心おもしろくはない。
すると事情を知った私の舎弟のような女子大生が
「山田さん、今日の飲みってこれっすか?」
とカリンのインスタを見せてきた。
楽しそうな彼とカラオケで隣に座るカリン。
それを見ると昨日私と二人の時より楽しそうに見えて腹が立った。
むしゃくしゃするので、バイト後コンビニでお酒を買って帰ろうかと思ったけど、いつでも運転ができるようにと思ってやめた。
私は二次会に参加してくださいよと言っていた彼の言葉を覚えていて、せめてミワから連絡が来ないかなんて待っていた。
でも連絡なんてこないし、カリンにも彼にも腹が立って眠れないし、悔し泣きするぐらいで友達に笑われるし、本当に情緒不安定だった。
しかもミワから後から聞いた話でさらに腹が立った。
その日、彼は酔いつぶれ、帰ったのは夜中の3時だという。
カリンのインスタでは楽しそうに見えたけど、案の定彼はカリンを警戒してて、最初の焼肉屋はお通夜みたいだったらしいし、二次会のカラオケもカリンには背中を向けていたという。
そしてカリンと高校生のカイが帰ったあと、残った彼とミワとリョウで飲み続けていたらしい。
ミワ曰く、彼は最初から早く帰ると言っていたし、せめて終電では帰ると言ったらしい。でもミワが彼にどんどん酒を飲ませて潰した。
鍋パの時もそうだったけど、「それ飲めるよね?じゃこっち。はいはいはい!」みたいな感じで、ここで飲まずにしらけさせるのは許さないという圧がすごい。
彼は基本的に断れない性格だし、ミワのような気の強いタイプには逆らえない。はっきり言って彼が言いたい放題言えるのは私だけで、私に言いたい放題言えるのも彼だけ。本来私はミワと大して変わらないというか、少なくとも私は相手に言われっぱなしで我慢するタイプではない。でも彼のことは惚れた弱みで何でも許してしまっていた。
その結果がこれかと思うと本当に悔しかった。
結局終電なんて間に合わず、彼とリョウはそろってミワの家まで歩いて送ったらしい。3人ともヘロヘロで、寒いので身を寄せ合って歩いたという。
「だったら呼べばよかったじゃん。迎えに行ったよ?」
私はミワに言ったけど、私のことなど思い出しもしなかったようだ。
結局彼とリョウはそれぞれ別々のタクシーでミワの家の前から帰ったという。
呼べばいいのに…
私とミワの家は車で5分もしない距離だ。
むしろ私から連絡すればよかった。
私はただただ彼が好きで、最初は彼のために何かできるということがうれしかった。でもいつのまにか、自分ばかりのこの想いがつらくなって、彼にもそれなりの想いを求めてしまった。
彼みたいなのには、有無を言わさないやり方が1番効果的。考えさせようとすると彼は途端にめんどくさがる。とにかく押して押して引くことをしなければ、思い通りにできたんだろうか。
彼の意志を尊重した結果がこれだ。
結局、多く好きになった方が負けなのだ。
こんなことなら二次会から来てという彼の言葉に応えればよかった。結局二次会に行かないということで、彼は二人きりの時間を作ってくれたけど、二人きりじゃない方が、もっと彼に近づけたかもしれないのに。あんなふうにわがままをぶつけたり彼を困らせたりしなかったかもしれないのに。
『今の僕が与えられるものはすべて与えてる! それでもあなたは絶対に満足しない!』
そう言わせてしまった。あの時の彼の顔が忘れられない。
つまらない意地をはってばかりだった。
そしてこの後も私はまたつまらない意地で激しく後悔することになる。