超年下男子に恋をする⑪(年上女は「夫婦みたい」と言われてすっかり有頂天)
バイト前カフェデートはおなかがすくみたいで、ごはんがっつり食べたいのリクエストにお応えして、デザートも食事もメニュー豊富な喫茶店にした。
この日は私はバイトじゃない。だから着物で行った。
私は普段着で着物を着る。洋服よりも着物の方があるぐらいで、洋服よりも悩まない。
何より着物は女っぷりを上げると思うし、自分の好きな服装を見てもらいたかった。
着物でも車を運転、迎えに行ったのだけど、車に乗り込んだ彼は、着物を見てとくに感想もなく、相変わらずの失礼発言。
「おばあちゃんちのにおいがする」
たぶん樟脳の匂いだろう。さすがにちょっとショックでひどいと言ったけど、特に謝る風もなく、
「ぼくおばあちゃんちのにおい好きですよ」
と笑顔。
「好きですよ」って言葉より「おばあちゃん」に反応してしまう私は、やっぱり自虐が強いんだろう。
今回の店は前回の古民家カフェのすぐ近く。私は本当はこっちの店の方が好きだった。以前その付近でバイトしていて、よくランチに通った店だった。
本当に久しぶりに行ったのに、ママは私のことを覚えていてくれた。
アットホームな雰囲気の店で、コロナ対策も万全、仕切りもあるし、混んでない。
隣前後に誰もいないし、奥まった席が落ち着くようで、彼は前回の店よりも好きだと言った。そして生姜焼き定食を頼んだ。私はオムライス。
私は昭和世代だからか、どうしても年下にはおごらなきゃという意識が働いてしまうので、当然この日もおごるつもりでいたし、彼にもそう伝えてあった。だからデザートも頼んでいいよと言ったけど、そこは少し遠慮気味。
ママは彼を見て言ったのが「ご夫婦ですか?」の一言。
え、カップル通り越して夫婦? 付き合ってるのかと言われたりはするけれど、夫婦はないだろうと思った。年の差が……。
でも単純にうれしかった。
「夫婦だって!」とうれしさがにじみ出た。
なのにまた無神経な彼の言葉。
「あーそういえば、僕の友達も母親と夫婦に間違われたって言ってました」
「私はお母さんじゃないよ!」
「え、知ってますけど」
ほんと何も考えないで話してる。相手がどう受け止めるかとか考えてない。まあ、私も「お母さんって呼んでごらん」なんて初めは言ってたくせに「お母さんじゃない!」なんて、意味不明もいいところ。
今回は、トイレもちゃんと大便使用。
食べたらすぐトイレに行く彼なので、私は場所もちゃんと教えた。
確かに夫婦って言われるのもわからなくもない。
向こうは私のことなんて彼女対象でもないせいか、リラックスできるみたいだし、私も一緒にいるのが楽。
それでも食べる時に少しは緊張したりはしてたけど、トイレに行くタイミングもわかるぐらい、なんだかもうよく知っている。
こんな風に自然にいっしょにいるのが当たり前になっていけるかなぁなんて思っていたけれど、この後私はとんでもないことをしでかし、やらかしてしまう。今思い返しても、黒歴史となるぐらいとんでもない事件。
それは彼にとっても「一生忘れられない」と言わせてしまうぐらいのトラウマ経験となった……。